麻倉怜士のデジタル閻魔帳
ハイレゾの基礎知識――実はコストパフォーマンスは超高い(2/2 ページ)
――市販のリニアPCM音源(WAV、FLAC)には96kHz/24bitとか、192kHz/24bitと表記されています。これはどういう意味ですか?
麻倉氏: リニアPCMでは、サンプリング周波数とビット深度で情報量を示します。サンプリング周波数は、ある間隔で音を刻んでみたときの細かさを示していて、例えばCDの44.1kHzは、1秒間に4万4100回の細かさ。再生できる音の周波数に換算すると半分の22.1kHzまでとなります。人の可聴帯域が20Hzから2万Hzといわれているため、CDはそれを忠実に再生しようとしたのです。
一方の16bitは、再生できる大きな音から小さな音までのレンジ(範囲)が96dBあるということを示しています。これは5万階調くらいの表現力。現在のハイレゾ音源は24bitが主流ですが、するとCDより8bit増えて144dBという広い範囲が再生できます。より小さな音からより大きな音まで再生できるようになり、これまではノイズに隠されていたような微小な音も出てきます。
コンサート会場を想像してみてください。楽器の音や人の声といった直接音のほかに、ホールの響きのような間接音、観客のざわめきといった、ごくごく小さな音もあります。それらはレベルが小さいのでノイズに埋もれやすく、CDのようにダイナミックレンジが狭いとつぶれてしまいます。しかしハイレゾ音源では、そうした小さな音もちゃんと小さな音として感じられ、コンサート会場に行ったときの“生の雰囲気”に近づけるのです。
――では、人の可聴域を超えた音を出すことに意味はあるのでしょうか。
麻倉氏: よく聞かれることです。確かに1970年代の研究開発により、人の耳で聞き取れる音の範囲は20Hzから2万Hzといわれています。しかし実際問題として、2万Hzを超える超高周波領域も人は感じ取っています。意味のある情報として受け取ることはなくても、肌感覚として音の存在は判別できていて、それが脳に作用して“良い音”と受け取るのではないでしょうか。
以前、この連載でも芸能山城組の山城先生(作曲家・山城祥二氏)が提唱する「ハイパーソニック」を取り上げたことがあります。山城先生は1970年代にたくさんのLPレコードを制作して、不思議と「音が良い」と評判でした。当時、理屈はよく分かっていませんでしたが、山城先生は経験則から5万Hz以上の音があると良い印象になることを知っていて、レコードにも意図的に入れていたのです。
ところがCDの時代に入り、同じ音源をデジタル化したものを出そうとしたところ、音が良いとは感じられませんでした。調べてみると、2万Hzを上限に切られていて、せっかく入れた音が欠落していたのです。これは人が2万Hz以上の音を感じ取れることの実例といえるのではないでしょうか。最近、山城先生の当時の音源がハイレゾで再販されていますから、興味のある人は聞いてみてください。
麻倉氏: また放送大学の仁科先生は、超高周波が伴うと可聴域の音もよりクリアに聞こえる効果があるとして検証を進めています。イギリスのメリディアンが最近発表した「時間軸解像度とハイレゾの関係」も興味深いですね。このような研究が進めば、ハイレゾ音源が人に与える効果も遠からず解明できるでしょう。
――次回は実際にハイレゾ音源を聞くためのシステムと楽曲について聞いていきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
ベネフィット・ワンの委託先に不正アクセス セゾン会員向け優待サービスで約2.9万人分の個人情報漏えい
-
4
渦中のGMO、熊谷代表の発信は“火に油”か? 「経営トップが自ら広報」の功罪
-
5
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
6
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
7
Apple、初のタッチ対応「MacBook Pro」発表 新型OLED搭載、国内価格は49万9800円から
-
8
AIが人間に“闇バイト”を発注? AIが物理的労働を買う求人サイト「RentAHuman」の実態
-
9
Google、「Gemini 4 Carbon」発表 「Argon」公開から2週間、サイバー防御能力などを強化
-
10
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR