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» 2014年11月10日 10時33分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:癒しを倍増させるハイレゾ音源の作り方、そして容量半分で“生の音”に迫る新技術とは? (1/2)

10月に開催された日本オーディオ協会主催の「オーディオ&ホームシアター展2014」。期間中は多くの講演が行われたが、その中でAV評論家の麻倉怜士氏がひかれた2つのセッションを紹介していこう。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 10月17日から19日まで、日本オーディオ協会主催の「オーディオ&ホームシアター展2014」(音展)が開催された。今年のメインテーマは“ハイレゾ”。期間中は多くの講演が行われ、自らも講師として参加していたAV評論家の麻倉怜士氏だが、その中で2つの面白い発見があったという。

ts_bdaudio07.jpg 日本オーディオ協会主催の「オーディオ&ホームシアター展2014」

――今年もBDオーディオのセッションで講師をされていましたね

麻倉氏: 今回はカメラータトウキョウやキングインターナショナルのBDオーディオを紹介しました。例えば、以前この連載でも取り上げた「パニワグアの芸術 グレゴリオ・パニアグワ(指揮)、アトリウム・ムジケー古楽合奏団」。故・長岡鉄男先生が絶賛していたアナログレコードをBDオーディオ化したものです。

 もう1つは1977年に収録されたカラヤンの日本公演です。杉並区のホールでベルリンフィルが演奏し、FM東京が録音した原盤をもとにBDオーディオ化しました。当時の音楽のすさまじさが鮮烈に出ていますよ。マスタリングを担当したのは斉藤圭介さんで、復刻版の超高音質マスタリングに定評があります。鮮烈で切れ味が良く、すごくクリアー。魂を振るわせる音がします。その方がマスタリングすると、元のアナログテープに入っている情報量を100%出せるのです。BDオーディオを使って、価値ある音源にふさわしいオリジナルコンテンツを出していく、という方向性が見えましたね。

ts_bdaudio06.jpg BDオーディオコーナー

 オーディオ協会がBDオーディオに力を入れている背景には、ディスクという文化を重視していることと、オーディオファンには年配の方も多く、オンライン配信だけではなかなか対応できない人も多いからです。ところで、話は変わりますが、声優の花澤香菜さんって知ってますか?

――花澤香菜さんは子役出身の人気声優です。2004年に声優活動を開始し、アニメ・ゲームなど100を超える作品に出演。2012年4月にはソロデビューを果たし、その類まれな声質でも話題です。

麻倉氏: なるほど。実はアニプレックスの方が講演の中で、アニメ系音源をいくつか試聴楽曲として出してきたのですが、その中に花澤花菜さんの曲がありました。アニプレックスでは、花澤さんの声が“癒やし系”と言われる理由を探るため、日本音響研究所に頼んで分析してもらったところ、振幅揺らぎによる「リラックス効果が期待できる声」と判定されたそうです。

――振幅揺らぎというと、いわゆる1/f ゆらぎ(エフぶんのいち ゆらぎ)ですか

ts_kana02.jpg 花澤香菜さんの2ndアルバム「25」。3800円(税別)で販売中。ハイレゾ音源は「mora」で配信中

麻倉氏: そうです。そこでアニプレックスでは、ハイレゾ音源の情報量を使って振幅ゆらぎを最大限に出してみようと挑戦しました。mitoさん(クラムボン)という作曲家を起用し、アナログ録音で倍音をしっかり取り込むなど工夫しながら制作したところ、振幅ゆらぎが増えて、とても気持ちの良いボーカルになったそうですよ。「Make a Difference」という楽曲です。

――2ndアルバムの「25」に入っている曲ですね。なるほど、ハイレゾ版をヘッドフォンで聴いていると仕事中でもウトウトしてしまうのですが、そういう理由だったんですね

麻倉氏: それは別の理由かもしれませんが、ともあれ、これはハイビット、ワイドレンジのハイレゾだからこそできる、新しい表現手法と言えるでしょう。倍音成分の中にもゆらぎは出ますから、これまでのような単なるハイ・フィデリティーでなく、プロデュースの手段としてのハイレゾの使い方が提案されたということです。面白いですね。

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