iRobot研究(2)
すべては人を助けるため――iRobotのロボット哲学(2/2 ページ)
開発が進む3つの新ジャンル
ここまでは現在のiRobot製品を紹介してきたが、今後はどのような製品が登場してくるのだろうか。ヒントになるのは、同社が技術開発で力を入れている3つの分野。それは「navigation」(ナビゲーション)、「manipulation」(マニュピレーション)、そして「perception」(パーセプション)だ。
navigationは、各種のセンサーから取得した情報を基に、ロボットが自分の居場所を推定すると同時に、活動エリアのマップを作成する技術。ロボットがスムーズに移動し、目的を果たすためのカギとなる。前述の「エイバ」のように、「ルンバ」や「ブラーバ」よりも高精度なナビゲーションシステムを採用したロボットも登場している。エイバはオフィスや工場など、人が移動する空間で活躍するロボットだ。
マニュピレーションの分野では、多くの進化の余地が残されている。例えば家の中にある物――軽い物や繊細なものを壊すことなく持ち上げたり、機械を操作したりすることは難しい。そこでiRobotの研究室では、表面がメッシュ状になったバルーンのようなマニピュレーターを用い、バキューム(空気を吸い込む力)で多種多様なものをつかむ技術が開発されている。卵や水の入ったコップも割ることなく持ち上げ、人に飲ませることもできる優れもので、バーベルのような重いものも持ち上げられるという。もちろん、そのために持ち上げる対象物の大きさや重さなどの情報を検知し、バルーンで最もフィットする形状を作り出し、グリップする力や動き、その角度までを正確に割り出す能力を持っているのだ。
3つめのパーセプションとは、“物を認識する”ための技術。例えば、将来の家庭用掃除ロボットにとって、室内で“椅子”を認識できるとメリットが大きい。ロボットにとっては障害物だが、仮にアームとマニピュレーターを持っているロボットであれば、大きな家具と違い、移動してその下を掃除できる可能性が高いからだ。しかし、椅子にはさまざまな形状があり、現状でロボットが認識することは困難。足が4本あるだけで椅子と判断して良いのか、あるいは他の判断基準があるのか。iRobotでは、より効率的で確実な手法を研究をしている。
福島第一原発で活動した「510 PackBot」は180センチ以上に延びるカメラ付きアームを搭載し、原子炉建屋の中で情報を収集した。また最新の大型ロボット「710 Kobra」では、さらに大きくなったアームを使って建物内のドアを開けたり、重量物を持ち上げたりすることができる。これもマニュピレーション研究の成果だ。ただし、ロボットが見たものを認識(パーセプション)する部分は、今のところ人の目に任されている。技術開発を進める戸同時に、現状ではより現実的な回答を選ぶのもiRobot流だ。
「最小のヒューマノイドロボット」
こと日本国内では「人の居住空間で活動するロボットは、人間型(ヒューマノイド)が最適」という意見を持つ人が多い。もちろん、それも1つの真理だが、それは何でもこなせる“汎用型ロボット”が作れる段階になってからでも遅くはないだろう。
iRobotのように、あるミッションに特化したロボットは、人と同じ形状をしている必要はない。ミッションの幅が広がっても、必要な機能さえ持っていればいい。その証拠に、「710 Kobra」は可動式キャタピラーで階段を下り、大きな障害物を乗り越え、あるいはアームで取り除きながら人の代わりに危険な作業をこなせる。
iRobotのコリン・アングルCEOは、昨年明治大学で講演した際、「710 Kobra」を「最小のヒューマノイドロボット」と紹介した。形は異なっても“人と同じことができる”という自信の表れであり、ともすれば“人型”にこだわる日本人へのアドバイスだったのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
6
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR