ジブリ「もののけ姫」のコピーが「生きろ。」になるまで 鈴木敏夫と糸井重里の手紙のやりとり(1/12 ページ)

 「も、もう1回! お願いします。大体こういうのは、3度目がいいんだと、ダレか偉い人もいって……いませんでしたっけ!? ともあれ、お手をわずらわせますが、よしなにご検討のほどを。ところで、告白しますが、ぼくもこの映画の解説文を書こうと思い立ち、すぐにつまづき、いま思い悩んでいる処です。トホホ」

ジブリの大博覧会 「ジブリの大博覧会」

 7月7日から9月11日まで、六本木ヒルズ展望台「東京シティビュー」でスタジオジブリの資料を集めた「ジブリの大博覧会」が開催されている。その中で、ジブリのアニメプロデューサー・鈴木敏夫さんとコピーライターの糸井重里さんの手紙のやり取りが公開された。手紙には「もののけ姫」のコピーができるまでの苦難が描かれていた。

 最初の手紙は1996年3月21日、鈴木さんから糸井さんにあてたものだった。まだ作品が完成していない中、ストーリーの概要を8行で説明して書かれていたのは、「コピーの1日も早い完成を首を長くして待っています」という言葉。それから数カ月後の6月4日、糸井さんから最初のコピーが手紙と一緒に届けられた。

 最初のコピー案は、「おそろしいか。愛しいか。」「おまえには、オレがいる。」「惚れたぞ。」「ひたむきとけなげのスペクタクル。」の4つ。終わりに「。」が付くのは最終的に決まったコピーでも採用されているが、どの案もラブストーリー色が強いコピーとなっていることが見て取れる。

 コピー案に同封されていたのは堅い手紙かと思いきや、糸井さんのユーモア満載にあふれる手紙。「も牛わけないで酢。(やっぱり、難しかったんです)」「とに角、お届けしますので、みてやって管さい」などの文字が書かれ、最後に「※日本語フリーハンド・ワープロの調子が割るくて誤字が多くてすみません」と添えられている。なんとなくだが、この手紙から鈴木さんと糸井さんの関係性が垣間見えるような気がする。

 そのコピー案と手紙が送られてきた当日中に、鈴木さんが糸井さんへの返事を書いているという行動の早さにも驚く。返事には「前略糸井重里さま 再考を! 宮崎も『ちがう』というし、小生もちがうと思いました」との回答と、「混沌とした世界の広がりが欲しい」「答えが出てしまっているので、答えのないコピーはどうか?」「小生が気になっていた台詞はこれです。『そなたは、美しい……』」との提案・意見が書かれている。

 2回目のやり取りは6月18日。このころはだいぶ迷走していることが糸井さんの手紙の文面から読み取れる。手紙には、普段のジブリ作品と比べて「もののけ姫」の観客の顔が見えないことなどがつづられている。

 2回目のコピー案は、ラブストーリー色が薄まり、「だいじなものは、ありますか。」「昔々は、今の今。」の2案。そのほかのコピーは検討時の資料として添えられた。

 ――「も、もう1回! お願いします。大体こういうのは、3度目がいいんだと、ダレか偉い人もいって……いませんでしたっけ!? ともあれ、お手をわずらわせますが、よしなにご検討のほどを。ところで、告白しますが、ぼくもこの映画の解説文を書こうと思い立ち、すぐにつまづき、いま思い悩んでいる処です。トホホ」(鈴木さん)

 鈴木さんも糸井さんも「もののけノイローゼ」になりかけた3回目。このときは12案が提出された。そしてついに4回目のやり取りが行われた7月1日、あの「生きろ。」のコピーが提出された。

 これらの資料は、展示されているうちのほんの一部。ジブリの大博覧会では、当時のポスターやチラシ、制作資料、企画書など、未公開資料を含む多くのものが展示されている。

太田智美

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太田智美
太田智美

小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入し、小・中・高とピアノを専攻。大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業する。 その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し、「おところりん:ソーシャルネットワークにおける偶然性を用いた音楽生成(Otocororin: a chance music for social network systems) (http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/KO40001001-00002010-0075.pdf?file_id=44931) 」を修士論文として提出。同研究は、情報処理学会 第12回「Internet and Operation Technology(IOT)」研究会において学生奨励賞を受賞。 同大学院を修了後、2011年にアイティメディア株式会社に入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営、記事執筆などに携わる。2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属される。これまでの代表作は「世の中やっぱり金でした 71万円の大金を積んで誰よりも早く『iPhone 6 Plus』の使い勝手を検証してみた (http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1409/10/news139.html) 」「スケスケでまるみえじゃないですか! 人によっては透明に見えるドレスを作ってみた (http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1502/27/news152.html) 」「あの日、Twitterのくじらが出なかったもう1つの理由 (http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1401/08/news082.html) 」「ゆとり世代が問う『好きなことをやって何が悪い!』(シリーズ) (http://www.itmedia.co.jp/keywords/yutori_generation.html) 」「はじめてのAI(連載) (http://www.itmedia.co.jp/news/series/5264/) 」など。 Twitter:@tb_bot (https://twitter.com/tb_bot)

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