立ちどまるよふりむくよ
Macintoshの起動音を作った人たち(2/2 ページ)
Power Macintoshの起動音はどう演奏されたか
今から22年ほど前、このようなビデオを作った。
これは、1994年ごろに、当時ぼくが編集長をやっていたMac専門誌MacUserに付属していたCD-ROM「MacBin」に収録したコンテンツの1つ。Power Macintoshの起動音をアコースティック・ギターで再現する、というものだった。当時、AppleはMotorolaの68040からIBMのPowerPCへCPUを載せ替えたPower Macintosh 6100/7100/8100という3モデルを発売し、これならIntelにパワーで勝てるぞと意気揚々だった。
このビデオでは、ギターのコードフォームと奏法(ハーモニクスを使う)、エフェクターの設定方法が、ミディー・ペイジにより解説されている。冒頭に不要とも思えるテルミンの演奏を入れているミディー・ペイジは、Mac業界のイベントであるMac'n Roll Nightというバンド合戦にMacUser誌から出場していたときのバンドCheap Purpleのメンバーだった(編集部員ではない)。
この当時は知らなかったのだが、このときのPower Macintoshの起動音は、ヤマハの12弦アコースティックギターを使い、スタンリー・ジョーダンが弾いたものだという。ジョーダンは1985年にデビューした、タッピングの名手として知られるジャズ・ギタリスト。6弦すべてを4度に設定する変則チューニング(1弦と2弦が半音高い)しているそうだ。Power Macintoshでもこのチューニングを使ったかどうかはわからないが、もしそうだとしたら、タッピングの使用を含め、その演奏方法は22年前に想定したものと違っているかもしれない。
消える音、うるさくなる音
Macの起動音は何度も変わっている。だが、一番長く使われたサウンドを作ったのは、ジム・リークスだ。Quadra 840AVという、Power Macintoshの直前である1993年に出たデスクトップマシン向けだ。このMacintoshはDSPを備え、アンプ、スピーカーもいいものを装備していたので、リークスはMacintosh II以降の起動音から変えたかった。単純な3重和音の音が濁っていて気に入らなかったのだ。
ちなみにそのサウンドを作ったマーク・レンズナーは現在Googleに勤務しているが、テスラコイルとロボットベーシストに演奏させるというおもしろい試みをしている。
新しい起動音を提案したものの、みんな「前のままでいいじゃないか」と動かない。だがリークスはあきらめず、起動用ROMの担当者に直談判し、自分で作ったサウンドを入れることに成功した。2.5秒の音をシステムエラーでやむを得ず再起動する人にも不快ではないものにしなくてはならず、いろいろ試行錯誤して、最終的にCメジャーコードにした。その後、前述の初代Power Macintosh起動音はスタンリー・ジョーダンだったが、これは不快ともとれるサウンドだったので、自分が作った840AVのサウンドに戻されたのだと説明している。
そしてスティーブ・ジョブズが復帰してからは、彼の起動音にすべてが統一されることになった。これはスティーブの判断だろうとリークスは考えている。そして、2012年には米国で音の登録商標に認定された。
ジョブズ不在時に作られたサウンドではあるが、ビートルズの「A Day In The Life」の最後の荘厳なピアノをイメージしたというサウンドを気に入ったのかもしれない。
しかし、その起動音も新しいMacBook Proからは取り去られてしまったようだ。
ネットではMacを象徴するサウンドが消えてしまうことを嘆くユーザーも多いが、彼が作ったサウンドで、特に日本ではその音量が増しているものもある。
iPhoneのカメラで使われているシャッター音だ。
これはもともとリークスがMacのスクリーンキャプチャ用に作成した音で、愛用のキヤノンAE-1のシャッター音をレコーディングしたものだという。
日本人がシャッター音をでかくしたがるのも当然かもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
立ちどまるよふりむくよ
過去を振り返りまくる連載。音楽、映像、コンピュータ、テクノロジーをタイムトラベルしながら新たな発見をしていく。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
3
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
4
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
8
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
9
有識者はGoogleやX、Meta、ドワンゴを名指しで批判……総務省、偽広告や誹謗中傷に発信・拡散前の対策求める
-
10
「痺れるほどにミスを繰り返す」Gemini 3.6 Flashは変わった? 公開から1週間、当初のおバカ回答を今検証する
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR