孤高のD.I.Y.

古代エジプトのパワーで過疎化を止める夏田さん(2/4 ページ)

 「なぜこう、こんなに引きつけられるっていったら、結局、自然の石だから」

 ――なるほど。自然の力を感じます。

 「ほらスフィンクスを見てごらん、首のところは削っているけれど、なるべくそのままの形で作ろうと思っていて。お尻の方とかそのままだろう。切ったりすることもできるけれど」

 「作るの大変だったよ、スフィンクス。例えばあ、幼稚園の子供にクマを作れっていうじゃない。そうしたらまずは胴体から作るのね。人間は想像しやすいところから作るんだろうね。おれもまずは足を作ってね、顔の部分になったらああでもない、こうでもないってね。おれきっとねえ、古代人と同じことをしたと思ってんだあ」

 夏田さんが使う石は、古いものだと古代エジプトの頃から存在しているかもしれない。自身で石を採ってきて胴体から積み上げていく作業も、考えてみれば古代エジプト時代と同じである。

 時代を超えて、夏田さんの手によって再び作られるピラミッドもスフィンクスも、本物とさほど変わらないかもな、なんて思えてくる。

 ――いやあ本当にすごいです、夏田さん。

 「みんなすごいねっていうけど、ある意味イミテーションなんですよ。これもほらエジプトの市場。家畜を使って耕すっていう場面の壁画が実際に存在している」

人間と家畜

 「資料の本を見ながら作った模倣品だから、本当は、すごくないのよ」

 ――いやいやいやいやいやすごいですよ。作ろうと思っても作れないですよ(笑)。何というか、これはもう、夏田さんの世界になっていると思います。

 「そうかねぇ。おれ歴史が好きだから、勉強してきたから。アイデアが絶えることがなかった。今も、どんどん湧いてきて作業が追いつかないんだ!」

日常と非日常

 ――夏田さんて、お仕事は何をされてるんですか?

 「昼は田んぼしてるよ。これがしたくって、毎日仕事をはやく終わらせてさあ」

 ――じゃあ、夜に作業をするんですか?

 「そんなばかなことはしない。ちゃんとした生活をしないと、変人扱いされちゃうからさあ」

 ――あはは。

 こんな風に一人で黙々と作り続けている無名のDIYアーティストたちに数多く出会ってきたが、彼らは普通の日常生活を送っていることも多い。ただそんな普通の毎日の中で湧いてくるアイデアや作品が、凡人には決して浮かばない天才のそれなのだ。

 ――じゃあ、あっちに見える田んぼって夏田さんのなんだ。

 「そうだよ」

 ――……ん? ちょっと夏田さん、田んぼの奥、何ですかあれ?!

 「あれはね、コロンブスの船だよ」

 ――コロンブス。

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孤高のD.I.Y.

世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、自作せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。

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この記事の著者

金原みわ
金原みわ

珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。

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