孤高のD.I.Y.

古代エジプトのパワーで過疎化を止める夏田さん(4/4 ページ)

 「もう、どういうお城にするのか考えてるんだよ」

 そう言って夏田さんが出してきたのは、とある本だった。

 ――これは、教科書ですね。

 「そう、孫の教科書だよ。この中の、この話」

新しい国語(五)「世界でいちばんやかましい音」(東京書籍)より、ガヤガヤの都

 「こんな城下町みたいに、入り乱れているような感じにして、傾いていたりふざけている家もあるけれど」

 ――ガヤガヤの街、良い名前。こんな風に、がやがやと大勢の人が来るようになる日が、いつか来るかもしれませんね。

 「ほかにもアレクサンドリアの上に、笛を吹いている悪魔を作りたかったんだよ。あるいは指揮者を置いて、バイオリン奏者とかフルート奏者を置いて、オーケストラを作ったり。こっちにも、ピーターパンを作りたいとおもっていた。ワニとフック船長を置いたりして……あとは……」

 夏田さんの話す夢は止まらない。その目は少年のようにキラキラと輝いていてまぶしいくらいだ。きっとこれからも溢れてくるアイデアに身を任せながら、この地で多くの作品を生み出し続けるのだろう。

 「……もー、作りたいものがいっぱいあるっちゃあ!」

 そのとき、夏田さんの話を遮るように、足元に温かい何かがすり寄った。

かわいいネコ

 ――かわいい。これ、夏田さんのネコですか。

 「そうだよ。居着いちゃってねえ」

 ――名前なんていうんですか? やっぱり、スフィンクスとかアレクサンドリアみたいな名前なんですか?

 「ああ? いんや、タマっていう名前だよ!」

 ――タマ!

 夏田さんは今日も一人きりで、自身の理想郷を作り続けている(猫のタマと一緒に)。

 こんな夏田さんの作品に会いに、この宮崎県美郷町にがやがやと多くの人が集う日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。

 どちらにしたって、孤高に作品を生み出し続ける夏田さんの姿は、きっと幸せそうである。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

孤高のD.I.Y.

世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、自作せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

金原みわ
金原みわ

珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR