立ちどまるよふりむくよ
「ピアノToy-Con」に至る任天堂音楽ソフトの歴史(1/3 ページ)
我々の度肝を抜いたNintendo Laboの「ピアノToy-Con」。すぐにでも試してみたいのは山々なのだが、届くのは2カ月先なので、今回は段ボールピアノに至る歴史的な流れを振り返っていきたい。
Nintendo LaboのVariety Kitに含まれる「ピアノToy-Con」は、Nintendo Switchを組み合わせたトイピアノだと想像していたのだが、蓋を開けてみると波形メモリ、エンベロープジェネレーター、リバーブ/ディレイエフェクトを備えたソフトウェアシンセサイザー+ドラム音源はステップ形式という、ピアノロールに対応したミュージックシーケンサー。さらに、シミュレーションではなくて物理的にホーン系サウンドを振動で奏でるといったギミックも用意している。
それらを「段ボール」という素材を生かして組み上げた見事さに、「Nintendo Laboの開発者、天才すぎる」などと賞賛されている。
しかしちょっと考えてほしい。いくら任天堂開発陣といえどもゼロから一足飛びにここに到達したわけではない。電子楽器メーカーではないのだから。
ではなぜそれが可能になったのか。1984年、ファミコンから始まる任天堂の音楽ソフトを振り返ってみよう。任天堂の歴代ゲームマシンには、それぞれ代表的な音楽ソフトがあったのだ。
ファミコン「FAMILY BASIC」はシーケンサーだった
ファミリーコンピュータが発売された翌年の1984年に投入された「FAMILY BASIC」は、ROMカセットにBASICインタープリタが搭載され、拡張コネクターに接続するキーボードも付属する任天堂純正の周辺機器。これを使うことにより、ファミコンは本格的なパーソナルコンピュータになる、というものだった。
FAMILY BASICは内蔵BASICでゲームプログラミングをするだけでなく、「ミュージックボード」というモードが用意されていた。ファミコンの内蔵音源を3音まで重ねることができる簡易シーケンサーで、「ドラえもん」「サザエさん」「おもちゃのチャチャチャ」など8曲がデモ曲として用意されていた。テンポは6段階の切り替えで、音色は選べない。
1984年といえば、AppleがPCM音源を備えた最初のMacintoshを発売し、ヤマハは8音ポリフォニックのFM音源を搭載したMSXマシン、CX5Mをリリースしている。FAMILY BASICの音楽制作機能は音質や音数では到底かなわないが、同価格帯のファミコン本体と合わせても3万円でお釣りが来た。当時の最も安いパソコンの半額以下で、曲がりなりにも「作曲」ができたというのは特筆すべきことだろう。
スーファミ「マリオペイント」はマウス操作のシーケンサーだった
ファミコンの次はスーパーファミコン。1990年にスーファミの時代が始まった。高性能になったグラフィックス、サウンドを生かしたお絵かきツールとして1992年に発売された「マリオペイント」は、マウスとマウスパッドも同梱。FAMILY BASICがキーボードをバンドルしたのに対し、マウスを導入して、画面を自由に操作する楽しさを伝えるソフトだった。
スーパーマリオのサウンドやアニメーションを取り入れ、パーカッション、ベース、メロディーなどを組み合わせた、五線譜形式のミュージックシーケンサーだったのだ。
ゲームボーイ「ポケットカメラ」はシンセサイザーだった
携帯ゲーム機ゲームボーイにも音楽界に影響を与えたソフトがある。1998年発売の「ポケットカメラ」だ。ゲームボーイ発売から9年後に登場したこのタイトルは、ゲームボーイをデジカメに拡張するものであるが、その中には驚くほど緻密な音作りができるソフトウェアシンセサイザーが搭載されている。
1小節16ステップに、鍵盤で音高を割り当てていくスタイルは、ローランドのベースコンポーザーTB-303を思わせる。音源はSound 1が正弦波と矩形波で、矩形波はデューティー比を3段階に切り替え可能。Sound IIは波形メモリ的なものを3種類切り替えできる。ノイズモードも細かく調整可能。この操作を十字キーだけでやるのは大変だと思うが、この時点でここまでの機能を入れていたというのは驚きだ。
ゲームボーイでは同時期にnanoloopという優れた音楽制作ソフトが作られ、実際にカートリッジで販売もされていた。これはiOSでミニマルなチップチューンアプリとして売られているので、体験してみてほしい。
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過去を振り返りまくる連載。音楽、映像、コンピュータ、テクノロジーをタイムトラベルしながら新たな発見をしていく。
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