「どう考えても速いよね」 MUFGとAkamaiの“世界最速”ブロックチェーン誕生秘話(2/5 ページ)

決済システムをブロックチェーンで行うメリットは「安くて楽」

 では、なぜ「決済システムにブロックチェーン」だったのか。開発結果としては高速処理も実現できたが、もう1つのもくろみは「既存システムに比べて極端に安くできる」ということだった。

 「ブロックチェーンの天才的な発明の1つに、フラットなファイルでセキュリティと不変の安全性を提供しているというものがある。これをセントラルDBでやろうとすると大変なメカニズムが必要」と新村CTOはいう。

 「DBではトランザクション1つを書くのに、DBをロックして書き込んでロック解除、次のトランザクションでまたロック、書き込み、ロック解除……と、丁寧に処理する。スピードを上げるのにも限界がある。さらに2フェーズコミット(※)なんて入れた日には目も当てられない」(新村CTO)

(※2フェーズコミット:複数のサーバにある分散DBの更新処理を同期する仕組み)

 「一方で、ブロックチェーンは基本的にファイルにデータを付け足していくだけ。DBのようなボトルネックがないので、スピードが落ちず、ハードウェアの性能をダイレクトにシステムに反映できる」とブロックチェーンの革新性を語る。

 「ブロックチェーンはコンシューマー向けの安いハードウェアで動くよう、ものすごく工夫されている。ただ、さまざまな要因でビットコインなどではスピードが出ないので、皆さんそこで思考を停止されていると思うのだが、ファイルに書き込んでいく部分だけはものすごく速いはず」(同氏)と、本質的な速さと設備の簡便性を説く。

 MUFGの鳴川CTOも「僕らもやはり、値段の規模感を見た時に『(こんなに安くできるなんて)ウソだろう』と最初は思った。だからか、周りからもそのように見られがちだが、実際にできてしまった」と経緯を話す。

 「従来のペイメント向けDBではサブシステムはもちろん、ディザスタリカバリー(災害復旧体制)は必須。同じ場所に二重三重にサブを用意した上に遠隔地にも2つくらい持つことも。それらの同期しないといけないというとんでもなく大変な作業がいるのだが、ブロックチェーンにはそういった投資が一切要らない」(鳴川CTO)

 従来のDBでは専用のシステムをそのために用意する必要があったが、ブロックチェーンはAkamaiがCDNに利用しているような比較的安い市販のハードウェアで動く。Akamaiのサーバ群も既に分散しているので、それらのサーバでブロックチェーンを運用すれば分散性も十分確保できる。

 これが、金融決済システムにおけるブロックチェーンの技術的なブレークスルーだという。

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この記事の著者

井上輝一
井上輝一

2016年3月からITmediaにジョイン。ITmedia Mobile、PC USER、LifeStyle、ヘルスケアで編集・執筆を兼務。2017年4月からITmedia NEWSでの兼務も開始。2019年4月にNEWS専属となる。スマートフォンやPCといったガジェット系の他、理系(神経科学)のバックグラウンドを生かして科学系のネタや、量子コンピュータ、ブロックチェーン、AIなど多岐に渡って取材している。

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