静止画ダウンロード違法化案「目的を見失っている」──情報法制研究所、懸念と改善案を提言
一般財団法人情報法制研究所(JILIS)は2月8日、「ダウンロード違法化」を音楽や映像に限らず、著作物一般に拡大する、いわゆる「静止画ダウンロード違法化」について審議している文化審議会著作権分科会小委員会に対し、「保護法益・利益に立ち戻った原理的な考察を欠く」「対象範囲を限定しないことによる副作用の指摘を無視している」と批判した。
その上で、刑事罰のみならず、民事規定についてもダウンロード違法化となる著作物を「原作のまま」のものに限り、「著作権者の利益が不当に害される場合に限る」ことを明記するよう提案した。
「保護法益・利益に立ち戻った原理的な考察欠いている」
JILISは、インターネット上の海賊版サイト対策の「ブロッキング」以外の候補の一つであった、「静止画ダウンロードの違法・処罰化」について成り行きを見守ってきたという。
現行の音楽・映像の違法ダウンロードについては、作品が丸ごと不正にデジタルコピーされることが著作権を侵害する主な行為だったが、静止画やその他の著作物一般の場合には、作品丸ごとに限らずさまざまな複製があることから、著作物一般に拡大するに際し、対象範囲が当然適切に限定されるだろう──。
JILISはそう信じて動向を静観していたが、小委員会の検討が「保護法益・利益に立ち戻った原理的な考察を欠いており、(中略)対象範囲を限定しないことによる副作用の指摘を無視するものとなっていることが判明」したことから、JILISの著作権と情報統制研究タスクフォースで研究者による法的な検討を行い、提言を取りまとめたとしている。
ダウンロード違法化の「副作用」──小委員会の想定は「能天気」
JILISは「ダウンロード違法化」案の“副作用”を、「ごく一部でも他の著作物の違法な転載を含むような著作物などのダウンロードも、違法化の対象となる」ものだと指摘する。
小委員会事務局は、パブリックコメントに対する事務局の考え方として、「著作権者と無関係の第三者が証拠保全を行う場合には、当然、ダウンロード違法化の対象となりうる」とコメントを出している。
この考えにのっとれば、第三者に著作権の帰属する写真や文章が違法に含まれるようなネット上の犯罪行為を、将来の法的措置に備えて保存することが不用意に行えないこととなる、とJILISは指摘する。
また「STAP細胞事件」を例に挙げ、研究不正の指摘も困難になると続ける。事件に関わる博士論文の冒頭約20ページが米国研究機関のWebサイトからの違法な転載(引用を満たさないコピー・アンド・ペースト)だったことから、事務局の考えを適用すると、他人の著作権を侵害するこの論文をダウンロードする行為も違法になってしまう。そうなれば研究不正の検証など一切行えない。
こうした副作用が考えられることから、「『事務局の考え方』は、『第三者の著作権を侵害する部分を外して保存することが可能な場合もあると考えられる』などと記載し、報告書も『違法にアップロードされた著作物を外してダウンロードすることによる対応が可能な事例もある』などとするが、『可能な場合もあると考えられる』『可能な事例もある』などの能天気な想定は、およそ机上の空論というほかはない」(JILIS)
さらに、「小委員会事務局は、つじつま合わせに終始するあまり、保護法益・利益の観点に立ち戻っての整理を怠っており、元々の法目的を見失っていたと評するほかはない」(同)と痛烈に批判した。
「原作のまま」「著作権者の利益が不当に害される場合」に限る解決案
JILISは、上述した副作用を生まないためにも、作品が丸ごと複製されることとなるような場合に限って対象とするのが適当であるとしている。
現行の音楽・映像著作物のダウンロードに関しても、趣旨としては本来このような限定が暗に係っていたと考えられることから、解釈の明確化するべきだという。
刑事罰については2月5日に同様の限定方針を示していることから、民法についてもこれらを要件として明確に立法するべきであるとした。
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