メルカリは機械学習に「AWS×Kubernetes」をどう使っている? CTOが仕組みを解説
日本国内での取引件数が累計5億件、月間アクティブユーザー数が1350万人を突破するなど、成長を続けるフリマアプリ「メルカリ」。人気の要因の1つが、出品物をスマートフォンのカメラで撮影すると、AIが商品名やカテゴリーなどを推測して自動入力する「AI出品」など、テクノロジーを活用した機能を多く備えていることだ。
「(各機能を実現するため)メルカリはAIと機械学習に力を入れ、随所で活用している。その理由は、個人間取引では、商品データにゆらぎがあり、データを画一的に扱えないことが多いためだ」。メルカリの名村卓CTO(最高技術責任者)は、アマゾン ウェブ サービス ジャパンがこのほど開いた技術説明会に登壇し、こう説明した。
例えば、メルカリで同じ機種の「iPhone」が売られている場合でも、液晶画面が割れているものから新品同様のものまで、状態はさまざまだ。それらを同じ機種だと判断できるレベルまで画像認識の精度を高めるために、メルカリは膨大なデータをAIに機械学習させているのだ。
AWSとKubernetesを活用
名村CTOによると、メルカリの機能の中でも、機械学習が特に効果を発揮しているものが「写真検索」だという。アイテムを撮影した写真をアプリで読み込むと、メルカリで売られている商品の中から、同じ商品や似ている商品を一覧で表示する仕組みで「(企業の)カタログに載っていないような、ユーザーが手づくりしたモノの写真からでも、似た商品を探せる」(名村CTO)という。
写真検索機能を構築する上でメルカリが活用しているのが、Amazon Web Services(AWS)とコンテナ技術だ。具体的には、クラウドストレージ「Amazon S3」に保存した億単位の画像を「Amazon EKS」のクラスタ上で学習させることで、高い分析精度を実現しているという。
Amazon S3には、ある特定の処理をキーにして、独自の操作を実行できる「イベントフック」機能がある。Amazon EKSは、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」をAWS上でフルマネージドで動かせるツールだ。
イベントフック機能などで機械学習を効率化
メルカリがKubernetesを使っている理由は、カスタムリソースをユーザーが定義できる機能「Custom Resource Definitions」(CRD)を搭載し、最小限の設定を行うだけで、シンプルなワークロードを自動で構成できるため。マネージド型サービスであるAmazon EKSを使うことで、Kubernetesを管理・運用する手間も省き、膨大な機械学習をスピーディーに進めているという。
「当社はもともと、Amazon S3に全ての商品画像を保存しているため、AWS上で連携できる相性の良さを考慮してAmazon EKSの利用を決めた。Amazon S3のイベントフック機能を活用し、ユーザーが新しい商品画像を追加したり、画像を更新したりすると、機械学習がスタートする仕様にしている」(名村CTO)
コンテナをフル活用する理由とは?
メルカリは写真検索機能の他、冒頭で触れたAI出品機能の構築や、スマートフォン決済サービス「メルペイ」の取引ログの不正検知などにも、コンテナをフル活用しているという。その理由について、名村CTOは次のように説明する。
「コンテナを導入する前は、1つのサーバ上で多くのソフトウェアを動かしており、セキュリティが脆弱(ぜいじゃく)になるリスクがあったが、コンテナを使ってシンプルな環境を構築することで、それを防げるようになったため。また、機能の開発段階において、ローカルで動かす環境と開発環境が大きく異なると不具合につながりやすかったが、コンテナを使うことで両者を全く同じにでき、本番環境にデプロイしても問題が起きなくなったためだ」
名村CTOはこの他、フルマネージド型のAmazon EKSの他、サーバやクラスタの管理をせずにコンテナを実行できるサーバレスの「AWS Fargate」といったツールと組み合わせることで、運用の手間を軽減できる点もコンテナの魅力だと語った。
同CTOは最後に、「(各ツールを使うと)『どんなサーバが何台必要』などと指示する必要はない。人が携わらなくてよく、面倒な部分を全部任せられる。これを人に頼むと、『最初からいたエンジニアだけが運用ノウハウを知っている』といった属人化が起きる可能性もあるが、コンテナを使うとそうしたリスクを減らせる」と有用性を強調し、技術説明会を締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
2
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
6
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
7
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
8
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
9
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
10
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR