よくわかる人工知能の基礎知識
勝利の鍵はAI? スポーツとデータ分析の相性が良い理由(4/4 ページ)
「AI記者」が試合結果を届ける
スタジアムで試合を見られないファン向けの情報発信としては、試合結果などのデータを基に記事を自動生成する「AI記者」が登場している。
米オハイオ州マンスフィールドに拠点を置くRichland Sourceは、マンスフィールド市周辺のコミュニティーに関するニュースをネット上で配信している。同社は、マンスフィールド市に拠点を置くスタートアップ企業Abundatの協力を得て、「リードAI」というソフトウェアを開発した。
このAIは、さまざまなスポーツイベントの情報を共有するサイト「スコアストリーム」から高校スポーツに関するデータを取得し、記事を自動生成できる。18年に行われた実証実験では、6カ月間で1万8000本以上もの記事を書き上げたという。
これも以前の記事で紹介したが、イスラエル発のスタートアップPixellotが提供するAIカメラは、映像コンテンツを自動生成する。複数のレンズを搭載したカメラはAIで制御されており、競技場に設置しておくだけで、撮影したデータのクラウドへの転送、クローズアップすべきプレイの自動認識、シーンの切替、映像の加工・編集を行う。必要があれば試合の経過時間や両チームのスコアなど関連情報も付与してくれる。ダイジェスト映像の生成や、CMの挿入、完成した映像の配信も可能だ。
上記の映像は、米ジョージア州にあるロズウェル高校という学校の事例を紹介したもの。グラウンドとジムの2カ所にカメラを設置し、さまざまな種類の競技のストリーミング放送に役立てていると紹介している。最初の1カ月だけで75試合のストリーミングを行ったとしているが、学校のスタッフが行ったのはスケジュールの設定だけ。撮影と配信は、AIカメラおよびPixellotが提供するクラウドサービスで実現している。
文字であれ映像であれ、こうしたコンテンツの自動生成はスポーツの発展の大きな後押しになるだろう。これまで記者が取材することがなかったローカルスポーツなどの情報も発信でき、スポーツの情報に多様性が生まれる可能性があるからだ。
スポーツの発展と技術の関係
19年のNHK・大河ドラマ「いだてん」では、スポーツが「単なるお遊びではない、取り組む意義のある行為」として確立され、国家やビジネスを動かす存在にまで成長していく様子が描かれた。
前半の主人公だった金栗四三選手は、日本マラソン界の第一人者で、1912年の第5回オリンピック・ストックホルム大会に日本人初のオリンピアンの1人としてマラソンに参加した。金栗選手は「なぜそんなことをするのか」という周囲の無理解に苦しみながらも、スポーツの素晴らしさを世に広めていく。ほんの100年前まで、スポーツに対する認識がその程度だったことに、視聴者は驚かされたのではないだろうか(私もその一人だが)。
ドラマでは、最初は小さな動きだったスポーツの取り組みが、次第に賛同者を増やし、大きく発展していく様が描かれた。スポーツは技術と共に発展し、今はその輪の中にAIが加わろうとしている。その力を得て、スポーツはさらに面白く、私たちの生活を豊かにしてくれる存在になっていくだろう。
著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。
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よくわかる人工知能の基礎知識
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
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