MVNOの価値はこれからどう変わっていくのだろうか(1/2 ページ)
3月5日に、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会主催の「モバイルフォーラム2021」に基調講演・パネリストとして参加した。
筆者(西田)は携帯電話業界のことも取材しているが、専門ではない。このイベントには、モデレーターとしてITmedia Mobileの田中聡編集長が、ジャーナリストの代表としては石川温氏が参加している。携帯電話業界の知見ならばお二人にお任せしていればいいのだが、今回はお二人から「携帯電話業界以外からの知見」を求められて出席した。イベントについてはITmedia Mobileで記事化される予定で、YouTubeでアーカイブ動画も公開されているので、そちらも参考にしていただきたい。
筆者としてもいろいろな事情や見方が分かって非常に勉強になった。
そこで今回は、MVNOが今後どうあるべきか、筆者なりに考えてみたい。
この記事について
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年3月8日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)も3月からスタート。
「安い」だけで人は動かない時代
多くの人はなぜMVNOと契約するのだろうか? 一般には通信・通話料金を安くするためだろう。
だが、本当に「携帯料金が安くなるから」というだけの理由で契約を変える人は本当に多いのだろうか? 現状、そこには疑問がある。
たしかに、携帯電話の契約切り替えは、やったことがなければ「分からない」し「めんどくさい」ものだ。各社はそれを解消するためにさまざまな努力をしてきた。MNPによって携帯電話事業者を移行する際の料金をなくしたり、手続きを簡素にしたりするような規制緩和が行われたのは、「めんどくさい」という問題の解決には必須のものだった。
それでもまだ問題が解決したわけではない。
既に安価なプランは多数あり、MVNOの存在を知らない人の方が少ない。大手にも、ワイモバイルやUQモバイルのような価格の低いブランドはある。なのになぜ切り替えないのか? 安くするだけなら「1年無料」だった楽天モバイルに、もっと移行しても良さそうなもの。多くの人がそうしたわけではない、ということは、「めんどくさい」を越えさせるには単に「安い」だけでは要素が足りない、ということなのだろう。
人は保守的だ。何かはっきりとしたきっかけがなければ、面倒なことは簡単であってもやりたくないものである。
そういう意味で、大手3社が料金体系を変えることは大きな機会ではある。だが、MVNOよりも先に大手がカードを切っていることは、大手にとっては非常に有利な状況と言っていい。同じ会社に留まったまま契約を維持する方が楽に思えるからだ。
ここからしばらく、大手は自社顧客に対して積極的な顧客引き止め攻勢を行うだろう。料金プランが変わっても自社顧客でいてくれれば事情はかなり変わってくるからだ。そうすると、これまでMVNOを使っていなかった顧客に「価格」だけで対抗するのは難しくなる。今の状況がMVNOにとって非常に厳しい状況であるのは疑いない。
だからこそ、MNPの手続き簡素化は最低限必須のタイミングであり、MVNOとしては「大手を超える価格」を打ち出して対抗せざるを得ない状況にある。価格算定にしても、ついて行けるのはある程度規模があり、経営的にも安定しているMVNOに限られる。参入の手軽さを生かしてやってきたような小規模MVNOは、価格以外の価値を見つけないとやっていけない。
おそらくこれからは、単純な価格だけでない差別化も必要になる。そこでは「サポート」「プラン切り替えの簡便さ」「内容のシンプルさ」なども重要になるだろう。結局、今の契約を引き継いで大手の中で料金移行をする場合には、「キャリアメールをどうするのか」「キャリア決済は必要なのか」「家族割引や回線割引は必要なのか」といった条件を勘案する必要が出てくる。MVNOに切り替えてもらうには、「そうした条件を一度リセットするメリット」を提示する必要がある。そのプロモーションとサービス構築は、なかなか難物だろう。
政府がMNOの値下げを優先するという「政策判断の順番を間違えた」結果とはいえ、しばらくMVNOには厳しい時代になる。
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