Googleの決済サービスを振り返りながら、pring買収による“金融本格参入”のインパクトを分析する(4/5 ページ)
詳細は以前に同社代表取締役の荻原充彦氏にインタビューした記事をご覧いただくと分かるが、JCBのSmartCodeなどQRコード決済サービスはむしろオマケのようなもので、その主眼は「シンプルな送金サービス」にある。
個人的考察だが、QRコード決済への対応はマネタイズの方策として株主向けのアピール要素が多分にあること、そして本気でない理由としてはPayPayなどの競合と比較して資金力やリソースの問題から自ら加盟店開拓を行うのは得策ではないと考えているからではないかと予想する。
また、みずほ銀行を中心とした銀行連合が「J-Coin Pay」のアプリを提供しているが、この基本的な送金機能を含むアプリのフロントエンドはpringのソースコードを流用している。いずれにせよ、pringにおいて送金が大きなウェイトを占めることは理解いただけると思う。
そんな同社だが、送金に特化して「お金をスムーズにやりとりする仕組み」を提供しつつ、マネタイズ手法は「CtoCではお金を取らず、B2Cの部分で稼ぐ」ことを挙げている。近年、同社は「業務用プリン」の対応を強化しているが、これは法人が個人に送金する際に銀行口座振込などではなくpringアプリに送金することで「送金手数料の削減」と「事務作業の効率化」を実現することを目的としている。
同社は業務用プリンの利用例をサイトで紹介しているが、例えば各種キャンペーンでのキャッシュバックであったり、企業内の従業員に対する経費精算であったり、給与払いとは異なるタイミングでの個人向け送金を代替する手段としての提案だ。
経費精算についてはLINEが社内ですでにLINE Payを利用していたりするが、「LINE Payやpringなど送金相手が同一サービスであれば振込手数料がかからないので、都度精算など月に複数回支払いを行っても手数料負担がなく、“立て替えている”従業員にとってメリットが大きい」というもの。
また2021年内にもある程度方針がまとまるとされる「給与デジタル払い」とも関係は不可分だ。本来、従業員に対する給与は「毎月最低でも1回」「全額を」「現金で直接渡す」ことが労働基準法で定められている。
例外規則として現金の代わりに現在では「銀行口座振込」が利用可能になっているが、3つ目の支払い手段として「資金決済法で示される『資金移動業者』が提供する決済サービス」が間もなく含まれるようになる。
メリットは前述の通りだが、手数料負担が少なく、「給料の週払い」といった柔軟な支払い方法が選択できる。もともとは外国人労働者を想定した規制緩和となるが、特に即金がほしいアルバイトや日雇いなどの労働形態では、従業員側のメリットが大きい。また資金移動業者は「○○Pay」のようなサービスを提供していることも多く、入金された残高をすぐに各種の支払いに充てることが可能なため、利便性がより高まるという効果も期待できる。
pringの用途は「雇い主と従業員」といったB2Cの関係だけでなく、さまざまな支払い関係にも応用が可能だ。例えば2021年6月15日にJCBとpringが発表した「スマホアプリを通じてカード会社から加盟店へのカード売上金支払いを実施する」実証実験では、JCBの加盟店への入金を銀行口座ではなくpringにすることが可能になる。
いわゆるクレジットカードの世界では、「当月締めの翌月末払い」のような形で実際の利用者の支払いから加盟店への売上金への入金が最大で2カ月近く離れてしまうことも珍しくない。飲食店などでは仕入れのためにキャッシュフローを確保する必要があり、「できるだけ現金を手元に置いておきたい」というニーズが少なからずあることを聞いている。
今回の実証実験では、業務用プリンを使って加盟店のアカウントに即日売上金が振り込まれる。振込手数料がかからないという仕組みを活用したものだが、pringアカウントからの銀行口座への出金には(契約や回数にもよるが)手数料がかかるため、どちらかといえば「クレジットカード決済での売上金の現金化のタイミングを自ら決めることができる」という位置付けに近い。
JCBの本来の入金サイクルである「当月締めの翌月末払い」であればJCB自身が振込手数料を負担するため、このあたりは利用者が利便性を取るか、“損”がない方を選ぶのかの選択だ。このように、お金の出入金を巡るあらゆる場面でpringのサービスは活用され始めている。
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