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» 2021年05月14日 08時00分 公開

実現が近づく「給与デジタル払い」とは何か 得をするのは誰なのか(1/3 ページ)

給与を「○○Pay」などのキャッシュレス決済サービスで支払う「給与デジタル払い」。政府は2021年度の早期に給与デジタル払いを制度化する方針だが、事業者、雇用者、労働者にはどんな影響があるのか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 給与を「○○Pay」などのキャッシュレス決済サービスで支払う「給与デジタル払い」。これまで、現金か銀行口座などへの振り込みでしか認められていなかった給与の支払い方法を拡充する試みだ。内閣府が4月5日に実施した作業部会議事録によれば、政府は2021年度の早期に給与デジタル払いを制度化する方針という。

 もともと21年春のスタートが予定されていたといわれる「給与デジタル払い」。しかし、20年に不正出金が相次いだ「ドコモ口座」事件の影響などでセキュリティを巡る議論が停滞しており、実際に動き出すのはもう少し先になるとみられる。

photo 厚生労働省のWebページ

 では、そもそも給与のデジタル払いとはいったいどういう仕組みなのか。本記事ではその内容や、企業・労働者への影響を、厚生労働省が公開している議事録や資料を基に解説する。

現金、口座振り込みに続く“第3の支払い手段”

 まず前提として、労働の対価である給与の支払いは、本来現金のみに限定されている。この原則は労働者の保護を規定した労働基準法にまとめられており、第24条において賃金は(1)通貨で、(2)労働者に直接、(3)全額、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払う──といった要項が規定されている。

 ここでいう通貨とは現金を意味する。ただし、労働者の同意を得た場合のみ、例外として銀行口座か証券口座への振り込みが認められる。今日では多くの企業が労働者に報酬を支払う手段として「銀行口座への振り込み」を選択しているが、これは本来であれば例外というわけだ。

photo 労働基準法第24条の抜粋(出典:厚生労働省)

 仮に、現金での支払いを第1の手段、口座への振り込みを第2の手段とするのであれば、今回新たに追加される給与デジタル払いは、“第3の手段”ということになる。

 では、この第3の手段では、どういった仕組みで労働者に報酬を支払うのか。給与デジタル払いでは、○○Payやこれらのサービスを運営する、送金や決済に特化した登録制事業者「資金移動業者」が大きく関わってくる。

 次の図は、実際に資金移動業者のサービスを利用した「給与デジタル払い」の資金の流れだ。もし労働者が給与を〇〇Payで受け取ると選択した場合、まず労働者が振り込んでほしいサービスを選択。雇い主側が同じサービスのアカウントから送金する──という流れが想定されている。

photo 資金移動業者を介した「給与デジタル払い」での資金の流れ(出典:厚生労働省)

 現状、資金移動業者が提供するサービスのアカウントに対して、別サービスから直接送金する方法は存在しない。そのため、給与のデジタル払いが実現した際はこういった形態になると考えられる。

 ただし今後、従来まで銀行以外の接続が許されていなかった「全銀システム」に、資金移動業者が接続できるようになるという話も出ている。この仕組みが実現すれば、雇い主は自身の銀行口座から、労働者の希望する「〇〇Pay」のアカウントに直接送金できるようになる可能性がある。

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