「機械の脳」が現実に? 現実味を帯びてきた脳の人工再現――東大研究者たちが講演(2/2 ページ)
「2つのミニ脳」をつないだら……
渡辺氏がコンピューティング技術をもって脳を再現を試みているのに対し、池内氏は、生物学の立場から脳の再現に挑んでいる。
池内氏は、人工脳組織を作成し、その機能を把握するアプローチを取っている。脳は多数のニューロンから構成された複雑な構造となっているが、その中でも池内氏が特に重要と考えているのが「軸索」だ。
軸索とは、脳の神経ネットワークをつなぐ、バイパスのような存在。パイプが絡まったような細長い形状をしており、近くや遠い位置にある細胞同士をつなぎ、情報を伝達する。ヒトの脳は、各領域にそれぞれの役割を持っており、それらが軸索でつながることで、高度な機能を持つと考えられている。
このような脳組織のつながりを再現するため、池内氏はiPS細胞から軸索の束を培養し、その両端を大脳神経組織で作った小さな球に接続した、人工脳組織を作成した。
培養された大脳の神経細胞では通常、単調な神経発火(電気信号を発する動き)が発生しているが、このミニチュアでは軸索でつないだ2つの脳組織から、不規則で複雑な神経発火パターンが観測できたという。
さらに、軸索でつないだ脳組織からは、記憶の片りんとも思われる現象が観測された。脳組織に、外部から刺激を与える(発火させる)と、脳組織はその刺激と同調し、発火する。2つをつないだ脳組織に刺激を与えると、刺激を止めた後もしばらくは同調した反応が続いたという。「一番単純な記憶の片りんと思われる現象を観測している可能性がある」と池内氏は推測する。
この外部刺激を繰り返し与えていると、初めは応答に時間がかかるが、試行回数を増やすごとに応答を返す時間が速まることも明らかになった。このため、刺激パターンを脳組織全体で認識している可能性が考えられるという。
池内氏はこれらの生物学的アプローチから脳の理解を進め、まずは中枢神経系疾患の克服に向けた創薬支援へと応用を目指している。
その先にある目標は「脳型バイオコンピュータ」だ。池内氏は脳研究において生物学的アプローチと、BMIをはじめとする工学的アプローチは近未来は融合し、将来的には、脳の計算能力を利用したコンピュータが開発されるのではないかと予測している。
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