古代サンプラーがアプリになるまで
ノイズ、不安定さが美点のアナログサンプラー「メロトロン」を“モノマネ”アプリ開発者が手に入れた(1/3 ページ)
アナログのサンプラー、古代のサンプラーなどと表現される「メロトロン」という不思議な魅力を放つ鍵盤楽器があります。メロトロンを「マネ」したiOSアプリ「マネトロン」の開発者である山崎潤一郎がメロトロン愛を炸裂させます。その行く末は……。
本物のメロトロン(Mellotron)を入手した。念願だった。夢がかなった。「M400S」という最も有名なモデルだ。
ワンクリック(ワンタップ)であらゆる音色を呼び出せる音源ソフトが簡単に手に入る時代に、なぜ税込で44万円もする古びた鍵盤楽器を購入してしまったのかと自問する。音程は不安定だし、メンテナンスに気を遣う。そして、重く大きく、移動させるだけでも大騒ぎだ。
しかし、実機を触ってその答えはすぐに見つかった。弾き方や鍵盤の押し込み具合で、毎回微妙に表情を変える音色、古びたアナログ回路を通じて発せられるノイズにまみれた音は、指の力加減1つで、ときに弱々しく、ときにヒステリックで、予測のつかないドラマを展開してくれる。
メディアでは、よく「暖かいアナログの音。冷たいデジタルの音」という紋切り型の表現を目にする。筆者はそうは思わない。LPレコードのざらついてヒリヒリとした高域が、うなじのあたりを直撃するあの感覚のどこか暖かいのだろうか。オーディオが高級になるほどヒリヒリ指数は高い値を示す。ヒリヒリ感は、アナログ音源に対する褒め言葉として受け取っていただきたい。
メロトロンもまさにそれだ。代表的な音色である3ヴァイオリン(ストリングス)の高音に身を委ねてみるといい。デジタル音源では味わうことのできない言い知れぬ緊張感が襲い掛かる。発売当時のマニュアルには、再生周波数帯域が50Hz~12KHzと記載されている。このスペックだけを見ると、44.1KHzのCD品質のデジタルでも理論上は十分に再現できるはずだ。
だがスペックだけでは語れないのがアナログオーディオの世界。高校生のときにLPレコードで聴いたキング・クリムゾンの「スターレス」が醸し出す陰鬱とした空気感や、同じくキング・クリムゾンの「エグザイル」の荒涼とした世界感は、この唯一無二で代替のきかない出音の上に構築されていることが50年の時を経てようやく理解できた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
古代サンプラーがアプリになるまで
アナログのサンプラー、古代のサンプラーなどと表現される「メロトロン」という不思議な魅力を放つ鍵盤楽器があります。メロトロンを「マネ」したiOSアプリ「マネトロン」の開発者である山崎潤一郎がメロトロン愛を炸裂させます。その行く末は……。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
7
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR