ソニーのエンタメ事業戦略は「クリエイターに近付きたい」
「世界中のクリエイターに近いブランドにしたい」──ソニーグループが5月18日に開催した2022年度経営方針説明会の場で、会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏はゲームや映画といったエンターテインメント事業においてクリエイター重視の姿勢をアピールした。
説明の冒頭で吉田氏は「ソニーには6つの事業セグメントがあるが、これとは別に“人”を軸とした3つの事業領域を考えている」とし、ゲーム、音楽、映画というエンターテインメント事業を「人の心を動かす事業」としてくくった。
これらはクリエイターとともにコンテンツIP(知的財産)を生み出すことに加え、DTC(エンドユーザー向け)サービスで利用者に届ける所までがミッション。例えばゲームなら傘下のスタジオで開発したゲームを「PlayStation Plus」などのネットワークサービスで家庭にあるコンソールに配信する。
吉田氏によると、ソニーはこの事業領域に対し、過去4年で1兆円を超える戦略投資をしてきたという。特にクリエイターを擁する企業への投資が大きな比重を占め、2021年度はBungieなど複数のゲームデベロッパーを買収した他、2つのドラマ製作スタジオ、インドの音楽レーベルなどを傘下に収めた。
継続的な投資により、2021年度の連結決算ではゲーム、音楽、映画を合わせた売上高が初めて連結売上高の50%を超え、営業利益も連結全体の約3分の2を占めるまでに成長した。
22年度の重点戦略でも、各事業の先頭に必ずクリエイターに関する項目を掲げる。ゲームなら「コンテンツIPの創造でクリエイターに近付く」、音楽は「アーティストとソングライターにとって最も近い存在になる」、映画では「クリエイターを支え、コンテンツIPを創出、展開する」といった具合だ。「ソニーを世界中のクリエイターに近いブランドにしたい」という。
一方のDTCサービスでは「メタバース」が大きなトピックになった。吉田氏は追加出資を決めたEpic Gamesの「フォートナイト」を例に挙げ「ゲームはプレイするだけでなく、時間と空間を共有するソーシャルな場になった。と同時に、ゲームや音楽、映画などが交差し、広がるライブネットワーク空間になる」と指摘。Bungieの買収完了を前提に、2025年度までに10タイトル以上のライブゲームサービスを展開すると明らかにした。
「ソニーには多様なエンタメコンテンツと長年培ってきたゲーム技術がある。クリエイターとユーザーがつながるライブネットワークスペースを構築したい」(吉田氏)。そしてライブネットワークスペースに入るキーデバイスとして「PS VR2」を紹介した。
質疑応答でクリエイター重視の姿勢について聞かれた吉田氏は「ネットワークの時代にメディアは大きく変化したが、コンテンツはそんなに変わらない。昔はメディアがコンテンツを選ぶ形だったが、今はコンテンツやクリエイターがメディアを選ぶフェーズになった」と話す。同席した十時裕樹副社長兼CFOも「IPとDTCでいえばIP側に投資のウェイトを置く」とした。
テレビからパッケージ、ネット配信とコンテンツの伝達手段は変化してきたが、優れたコンテンツを作り出す能力の重要性は変わらない。伝達手段はソニーのテクノロジーやM&Aで先導し、クリエイターが生み出したものを世界中に届ける。ソニーのエンタメ戦略において、クリエイターは安定した魅力的な投資先になっている。
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