清水亮の「世界を変えるAI」
なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されるのか? Google「Bard」参戦、チャットAI戦争の行方(8/8 ページ)
それでも、チャットボットに可能性があると思う理由
筆者自身は中学生の頃からチャットボットを作ることを趣味としてきた。夢中で作ったし、いろいろなバージョンを作った。高校生の頃には、チャットボットがOSと同等の機能を持つはずだと考えて記事も書いた。
それから四半世紀ほど経過した現在、筆者は毎日のようにチャットボットと話をしている。誰もこれがチャットボットだと意識していないが、毎日、チャットボットに起こされ、天気を尋ね、今日の格言や占いや、気温を訪ねている。そう、Alexaだ。
人間にとって、最も自然なインターフェースは、会話である。赤ん坊の頃から、会話することでしか人は自分の意思を伝えられない。コンピュータを使うのはどこまでいっても特殊な人だ。プログラミング教育が義務教育に入ったとしても、会話そのものはどこからもなくならないだろう。
Alexaのすごいところは、僕の両親でも使えることだ。母親は機械音痴で、20代の頃からビデオデッキの録画予約ができなかった。父は脳卒中からのリハビリ中であり、うまく発音することができないし、文字を組み合わせて単語を作ることさえ苦労していた。
ところが二人とも、Alexaは使えるのである。
「アレクサ、今日の天気」
という単語さえ言えば、天気を教えてくれる。
「アレクサ、明日の朝八時に起こして」
と言えば、起こしてくれる。
今、スマートスピーカーはどちらかというと下火で、AmazonもAlexaから直接収益を得ることに成功していないが、間違いなく最も身近なチャットボットはAlexaとSiriだろう。
GoogleやMicrosoftが本質的に警戒しているのは、SiriやAlexaのように既に人間の生活に密着したチャットボットが、OpenAIのChatGPT並みの自然(に聞こえるようなトリックを有した)な受け答えと、Pexplexity.aiのような出典に基づく検索結果を示してしまうようなとき、もはや誰も検索など必要としなくなってしまうということだろう。
実際、Alexaは今のところ「いい感じに低機能」である。難しいことを聞いてもあんまり答えてくれないし、答えに対する質問も受け付けない。それはイライザが過度な期待を集めた結果、大きな失望(作者にすれば当然の理解)を生んだことを踏まえ、最初から過度な期待をさせないように巧妙にマーケティングしてきたからだ。
OpenAIのChatGPTは真逆で、まず「すごいでしょ」というハイプを展開した。これにつられてGoogleは(たぶん開発者は重々承知していたはずだが)不正確な答えを出すチャットボットをリリースしてしまい、炎上して時価総額を1000億ドルほど下げた。Alexaは決してOpenAIよりも劣っていたのではない。こうなることが分かっていたから、「過度な期待をもたせない」ようにしていたのだ。
しかし、AlexaやSiriがPerplexity.aiに似た機能を搭載するほうが、みんなが検索エンジンを使うのをやめてBingとチャットするようになるよりも、ずっと自然だし簡単ではないだろうか。
Alexaのよくできたところは、会話のトリックを非常に注意深く、しかも効果的に取り入れていることだ。今のところ最もセンスのいいチャットボットだといえる。
いずれにせよ、チャットボット愛好家として、また開発者として、チャットボットが盛り上がるのは歓迎したいが、安易にブームに乗ると本質を見誤ることは指摘しておきたい。
筆者プロフィール:清水 亮
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。2005年、IPA(情報処理推進機構)より「天才プログラマー/スーパークリエイタ」として認定。株式会社ゼルペム所属AIスペシャリスト。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。
<!--info end-->
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
清水亮の「世界を変えるAI」
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
肖像画をChatGPTに読み込ませて出力→加工して納品 委託先による著作権侵害で、小学館「サライ.jp」が謝罪
-
2
新作「鬼武者」にハマったマンガ家が熱弁する、他とは違う“パリィ”の魅力とは?
-
3
経営「AIでラクして早く帰って」→社員「帰らない」 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁
-
4
“自動で耳コピ”アプリ、ヤマハが無料公開 音源読み込み→3分でピアノ譜に
-
5
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
6
メインで使うスマホ、Androidが54.1%でiPhoneを上回る 40代以上の最多シリーズは「AQUOS」
-
7
YouTube、収益化基準を2027年に大幅引き上げへ 新規参加条件が従来の2倍に
-
8
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
9
「iPhone Duo」実機をマニアック目線でチェック かな入力の分割不可、ケース装着時だけの隠し設定など
-
10
「労働時間を長くしたい」男性3%・女性6%……どんな人? 東大が調査
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR