小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
“ソニー本気”の個人向けクラウド、「Creators’ Cloud」って何者? 担当者にねほりはほり聞いてみた(3/4 ページ)
Master Cutは編集ツールではない?
個人向けCreators’ Cloudと同時に公開されたのが、オンライン上で動作する「Master Cut」だ。対応カメラで撮影した素材のメタデータを読み取り、より高度な補正が行なえるツールとなっている。補正可能なのは、手ブレ補正、音声レベルの最適化(ノーマライズ)、環境音低減、風音低減の4つである。
――Master Cutを実際に使ってみたんですが、Creators’ Cloudにアップした映像を処理させる場合、内部でMaster Cutの領域に複製されますね。ストレージに上げたものがそのまま作業対象になるんだと思ってましたが、これはどうしてこうした仕様になっているんでしょう?
上田: 共通のストレージ内に保存されますが、作業を行う上でオリジナルは残したいというクリエイターの声がありました。Master Cutで使っているファイルを誤ってストレージから削除するなどの変更を加えるとお客さまに不利益が大きくなるため、編集作業をするワークスペースであるMaster Cutフォルダにコピーする仕様にしています。
――Master Cutは編集ツールというよりも、クリップの補正ツールなんですね。こうした方向性になったのはどうしてでしょう
上田: 今回Master Cutを企画開発していくにあたって、多くのクリエイターの方の話を伺いました。そこから分かってきたのが、映像を使う場所っていうのがソーシャルメディアが非常に増えてきた中で、どうしても映像を消費するサイクルっていうのが早くなってきていると。
そうしたときに、1つの映像を制作するのにかけられる時間というのが限られてきていると伺いました。クリエイターの方は自分ならではのこだわりを作り込みたい、表現したいという気持ちが強いんですけれども、そこに時間をかける前にどうしても手間になってしまうような、下地作りの部分があると。そこに非常に時間を要してしまうということが、一番大きな課題だということが分かりました。
その下地作りというのが、例えば手ブレを補正であるとか、音のノイズを除去するといったところが、まさに一番時間がかかってしまうところだということなので、今回まず最もニーズが高かった映像の下地作りの領域にフォーカスすることにしました。
ただ今回β版としてリリースしましたので、今後の発展の方向性は、ユーザーのフィードバックを見ながら検討していきたいと考えているところです。
――手ブレ補正に関しては、撮影ファイルの中のメタデータを使ってより正確に手ブレ補正ができるっていうところが1つのポイントになっています。これはこんなふうに手ブレしたよっていうメタデータが、動画のMP4ファイルの中に入ってるっていうことでしょうか
上田: そうですね。カメラで撮ってるときには、カメラ側で実際にどれぐらい手ブレしてるかっていう情報を持ってるので、まさにそれを入れてるっていうところと、あとレンズもわれわれが開発してますので、レンズの情報も合わせて持ってるんですね。ですので、ゆがみの情報なんかも、ファイルの中に持ってるんですよ。そういったこともあって、手ブレ補正を実際にかけるときに変にゆがまないようにできるといった、自然な状態を維持して手ブレ補正をかけることができます。まさにカメラ本体のメタとレンズのメタ、どちらも活用してるというところが、品質につながっていると思ってます。
**――カメラ側でも手ブレ補正は効くわけですが、クラウドで補正する意義というのはどの辺にあるんでしょう? **
上田: カメラで手ブレ補正をやるポイントは、リアルタイムで撮りながら手ブレが取れてるっていうところだと思います。一方でクラウドで後からやるメリットは、クリップごとに適切な手ブレの量をコントロールできるっていうところや、複数のファイルに同時で処理をかけるといったところかと思います。
――音声に対する補正も、メタデータを使うんでしょうか?
上田: Master Cutの中でも、カメラのメタを使っているものと、クラウドAIだけで処理しているものがあります。手ブレ補正はカメラのメタを使うので、カメラの中でも対応してるものが限定されています。一方で音関連の補正は、メタを使わずにクラウドAIで処理しているので、どのカメラで撮影したファイルでも対応しています。
――クラウドに動画を上げて手ブレ補正処理させると、5秒ぐらいのカットも処理に40秒ぐらいかかるようです。これはもう少し早くなったりするんでしょうか
上田: カメラで撮影するときに、プロキシファイルも同時に撮れてます。例えばそれを先にアップロードして、その軽いファイルでいろんな処理をしていただいて、最終的にオリジナルファイルに反映するみたいな処理をすることで、今後さらにパフォーマンスを上げていこうと思ってます。
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
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