注文殺到の「成金おじさんフィギュア」 製造はフルカラー3Dプリンター 作者に聞く“3Dの可能性”(2/3 ページ)
玉骨標本を素朴に見ると、硬化前の透明なレジン樹脂などに骨格を浮かべ、その後に硬化処理をしているようにも見える。しかし、実はそのような方法では骨格によっては本物に忠実な制作がかなり難しい。その代表例がマッコウクジラだ。
マッコウクジラには実は「後ろ足」がある。尾ひれのことではなく、哺乳類として地上を歩いていた頃の「骨盤と後ろ足の名残」(骨盤痕跡)が、骨として体内に残っているのだ。
そしてこの骨盤痕跡は、脊椎から完全に孤立している。仮に樹脂に浮かべる方式を取るとなると、骨盤痕跡を正しい場所に置こうと思ったら相応の工夫が必要になるだろう。
吉本さんは、日本財団など国が主導し海洋環境の理解やアクションを進める「海と日本PROJECT」にも関わっており、本物の骨格標本を3Dスキャンして作った模型を博物館の展示物として納品もしている。そのため、玉骨標本でもサイズの関係などからデフォルメする部分以外は本物への忠実さにこだわっている。インクを層ごとに重ねていく方式のフルカラー3Dプリンターなら、孤立した骨でも正しく配置できるというわけだ。
3D造形は初期費用が高いが儲かる仕事
吉本さんは京都造形芸術大学(油画コース)出身で、もともと立体造形が専門ではなかった。しかし立体造形に興味はあり、そんな中、大学2回生の2016年ごろにワンフェスを訪れたところ、3D造形が増え始めていることを知った。これがきっかけで3D造形を始めたため「実は3D歴で言うとまだ全然」と吉本さんは謙遜する。
そのワンフェスから帰った翌日に、独Maxonのデジタル彫刻ソフト「Zbrush」を購入し、3D造形の世界に参入。
「通学に3時間ほどかけていたので電車の中でZbrushを使っていた。Zbrushで何か形を作るのは非常に簡単なので、基本的な操作を覚えれば1カ月で3Dプリンターで出力するデータは作れると思う。実際に中学生や、大学生向けの授業で教えていてもそのように感じる」
3Dモデリングを始めるにはPCの環境もそれなりにそろえる必要がある。「15万円以内に収めることもできるが、本気で仕事にしていくなら20万円くらいは初期費用として見ておいた方がいい」と吉本さんは言う。
しかし、初期費用がある程度かかる点について、吉本さんはむしろ肯定的に捉えている。
「イラストだったらソフトも安くてiPadでもできるから参入障壁が低い。一方で3D造形は初期費用もあり、思い切って入ってくる人が少ない。イラストのお仕事だと単価を上げにくい面もあるが、3Dはそれで言うと、なかなか儲かるお仕事」
自身の会社の具体的な売上などについては明言を避けたが「1000万円近い3Dプリンターなど新しい機械に投資できるサイクルは今のところ回っている、という状況を見てもらえれば」。
「1体の製作で100万円いただけるような案件もある。それほどでなくても、イラストに比べて3Dの単価は高め。フィギュアのデータを作れるなら、他の3Dデータの仕事もできるようになる。なので、3D造形のスキルはフィギュアに限らずさまざまな仕事につながるんじゃないかと思う」
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