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宝くじに14回当選した男 「全通り購入」という力技に行き着いた結果は? ドイツの研究者が分析(2/2 ページ)
マンデルさんはこの問題を解決するため、何年もかけて数百人の投資家を説得し、共同購入組織を結成。その後1980年代のコンピュータ技術の発展により、マンデルさんはコンピュータとプリンタを使用して数百万通りの組み合わせを自動的に印刷するシステムを開発した。これにより、従来の手作業による方法よりも効率的に戦略を実行できるようになった。マンデルさんは、この手法をオーストラリアで実行し、1986年に110万ドルの賞金を獲得するなど、成功を収めた。
しかし、マンデルさんが複数のジャックポットを獲得したことで、宝くじ運営側は規制を強化し始めた。そこでマンデルさんは、世界の宝くじを分析し、最終的に米バージニア州の宝くじに狙いを定めた。バージニア州の宝くじは比較的新しく、無制限にチケットを購入することができた。さらに、数字の範囲が1~44と狭く、6つの数字を選ぶ場合の組み合わせの総数が約700万通りと少なかった点も魅力だった。
2500人以上の投資家から資金を集め、メルボルンで30台のコンピュータと12台のレーザープリンタを稼働させ、全ての可能な組み合わせが印刷された約1トンもの重さの紙束を、6万ドルの費用をかけて米国に輸送した。
そして1992年2月、バージニア州宝くじのジャックポットが1550万ドルに達し、いよいよ実行に移すときがきた。しかし、一斉に購入に走ったが、大量販売に協力していたチェーン店の1つが作業に圧倒され、最後の14万枚(70万通りの組み合わせ)の処理を放棄した。140万枚のチケットのうち124万枚(700万通りのうち640万通り)の購入にとどまり、全通り購入とはいかなかった。
それでも、マンデルさんが購入したチケットの中に、運よくジャックポットが含まれていた。マンデルさんのチームが2703万6142ドルのジャックポットを獲得したのだ。さらに6つの2等賞、132の3等賞など、合計で90万ドル以上の副賞も獲得した。
この前代未聞の勝利は、当局の厳しい調査を招いた。米国のCIA、FBI、IRSなど14の国際機関が調査に乗り出したが、マンデルさんの不正行為の罪を問うことはできなかった。
大勝利のその後は……
この大勝利の後、マンデルさんの人生は変化した。投資家たちには約1400ドルずつが配当されたが、中には不満を漏らす者もいた。マンデルさん自身は170万ドルのコンサルタント料を受け取り、20年間の年金支払いを一括で1400万ドルで売却したとされている。
その後、マンデルさんは香港を拠点とする「パシフィック・ベイスン・ファンド」に資金を投じたが、1995年に破産を宣言。その後10年間、さまざまな投資スキームを運営した。その中でイスラエルでは「共同組合の目論見書を公表しなかった」として有罪判決を受けたが、マンデルさんの弁護士によると、この判決は後に覆され、マンデルさんは1日も刑務所で過ごさなかったとされている。
現在、マンデルさんはオーストラリア沖の離島バヌアツで静かな隠居生活を送っている。彼は宝くじから「引退した」と語り、穏やかな日々を過ごしているという。
マンデルさんの功績は、米国の法律に痕跡を残している。宝くじを運営する44州全てで、マンデルさんの戦略を再現することを防ぐ法律が制定されたのだ。これにより、マンデルさんは全ての組み合わせを購入することで宝くじを合法的に攻略した最初で最後の人物として、その名を歴史に刻んだのである。
Source: Stommer, Ralph. “On the Lottery Problem: Tracing Stefan Mandel’s Combinatorial Condensation.” arXiv preprint arXiv:2408.06857(2024).
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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