Innovative Tech
“電気照明”でIoTデバイスを遠隔操作する攻撃 最大20m先から蛍光灯を制御、電磁干渉で機器を妨害
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
浙江大学に所属する研究者らが発表した論文「LightAntenna: Characterizing the Limits of Fluorescent Lamp-Induced Electromagnetic Interference」は、別の部屋から室内の電気照明を使ってIoTデバイスを遠隔操作できる攻撃を提案した研究報告だ。
研究チームは、電力線を通じて高周波信号を送ることで、最大20m離れた場所から蛍光灯を制御し、電磁干渉(EMI)を発生させられることを実証した。この方法により、蛍光灯の近くに置かれたセンサーやマイクロフォンなどの電子機器を操作できる。
この攻撃が可能となる主な理由は、蛍光灯の物理的構造と動作原理にある。蛍光灯は主にバラスト(安定器)と蛍光管で構成しており、バラストが高周波電圧を生成し、蛍光管内の水銀蒸気が電離されることで光を発する。この電離過程で生じるプラズマ状態の気体は導電性を持ち、プラズマアンテナとして機能する特性がある。研究チームの実験により、蛍光管がバラストよりも約25dB高いEMIを発生させることを確認した。
さらに注目すべきは、蛍光灯が700~1500MHzの広い周波数帯でEMIを発生させる能力を持つことだ。これにより、さまざまな種類のセンサーやデバイスに対して攻撃が可能となる。研究チームは、電力線を通じて高周波信号を注入し、蛍光灯を制御する具体的な手法を開発した。
実証実験では、8種類の異なるセンサーモジュール、工業用温度センサー、会議用マイクロフォンなどの電子機器に対する攻撃に成功した。特に温度センサーでは、通常27.2℃と測定される室温を最低5.6℃から最高53.3℃まで操作できた。このような温度測定値の操作は、医療機器や産業プロセス制御において重大な安全上のリスクをもたらす可能性がある。
音声認識システムに対する攻撃も実証。会議用マイクに「OK Google」などの音声コマンドを注入する実験では、IFlytek、OpenAI、Microsoft Azureの商用音声認識APIに対して76~82%の文章認識率、87.1~93.5%の単語認識率を達成した。これにより、攻撃者は「ドアを開けて」などの命令を実行させ、スマートホームシステムのセキュリティを侵害する可能性がある。
Source and Image Credits: Fengchen Yang, Wenze Cui, Xinfeng Li, Chen Yan, Xiaoyu Ji, and Wenyuan Xu. LightAntenna: Characterizing the Limits of Fluorescent Lamp-Induced Electromagnetic Interference. Network and Distributed System Security(NDSS)Symposium 2025
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
7
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR