分かりにくいけれど面白いモノたち
変なカメラで遊ぼう──富士フイルム「instax mini Evo Cinema」の開発者に聞く「ジダイヤル」とエフェクトの使い方(2/5 ページ)
従来のEvoだと、プリントした写真しかスマホに送れなかったのだけど、今回、スマホに送ってからプリントできる仕様になっているのは、動画の確認やこれまでにないエフェクトのスタイルに、大きなディスプレイでの確認は必須だと考えたからだろう。実際、プリントする写真を本体ディスプレイで決めてプリントというのは、私は出来なかった。どの写真がプリントするだけの面白さを持っているのか、本体ディスプレイだけでは判断出来なかったのだ。というか、本当のところを言えば、スマホで見ても最初のうちは、このカメラで撮る写真の正解が分からなかった。
付属のファインダー・アタッチメントを付ければ、本体ディスプレイでも、ある程度しっかりと写り具合やエフェクトの具合が確認できるのだけど、いちいち「覗き込む」というのが面倒で、最初のうちは、撮影時にしかファインダーを使わなかった。しかし、使っているうちに、この「覗き込む」という行為が面白くなってきた。Evoシリーズでは一貫して、「撮影への没入感」へのこだわりが感じられるのだけど、この「覗き込む」行為も没入感に通じるように思った。
多分、このカメラでも重要視しているのは「没入感」なのだろう。「instax WIDE Evo」が撮影時の画質の作り込み、つまり被写体への没入感をテーマにしているとすれば、今回のinstax mini Evo Cinemaは、現在と過去をどう混ぜるか、つまり記憶への没入感を、一枚の写真という形にするための装置のように思える。それもまた「特別な一枚」だし、そこに「時間というフィクション」を加えられることが、動画、つまり時間がある写真を撮るカメラとして面白いという発想。だから、ジダイヤルのそれぞれの設定に、あまり統一性はなく、それぞれの時代の中の面白い部分を抽出する方向で作られているように思える。
「エフェクトの度合いを変えられるようにしていますが、これも掛かり具合の『強さ』というわけではないんです。強弱だけではなくて時代感を、より強調するとか、少しワイルドにする時代もあったり、一つの時代の中で表現方法が変わる設定もあるんです。なので、時代をどう捉えるかの度合いと思っていただくのが分かりやすいと思います」と嶋さん。
レンズの周り、ピントリングのような場所にあるダイヤルが度合いの調整で、回すとディスプレイの左端に棒グラフのようなものが表示される。この表示の真ん中、つまり「5」が、メーカーが考える、その時代の「標準」で、そこからプラスかマイナスかを調整できる。10だと、もはや何が写っているのかが分からないような出来になりがちの極端なフィルターが内蔵されているわけで、その点だけでも、このカメラの「変」さ、「面白さ」が分かる。でも、この極端な設定で撮られた動画は、かなり楽しいのだ。撮った人だから分かる面白さというか、友人以外には見せられないけど面白いとか。
「基本的に6を超えると特に強くなるものが多いです。ノイズがそこでオンオフになったりとか、6から何かが始まるものが結構あります。発売後に商品名検索していたら、『とりあえず10で撮ってみたけど難しい』と書いてる人がいました。でも、正解はないので、楽しんでもらえてる感じは嬉しかったです」。
個人的には、1960、1970、1980で撮るのが楽しかったのだけど、それは、自分が生まれた頃、子ども時代、青春時代みたいな、時代の記憶が思い出と直接繋がるからかもしれない。撮れた画像から記憶が呼び覚まされるというか。嶋さんも自身が生まれた年代である1990を一番多用すると仰っていた。あと、これは、私も嶋さんも同じように思っていたことで、新しいモノを古い時代の設定で撮るのが案外面白いということ。
いくつか、私が撮った作例を挙げてみる。
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分かりにくいけれど面白いモノたち
ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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