ネットの経験は「きれいさっぱり忘れる」──LINEヤフー会長を退き“AIと起業”に挑む、川邊氏の起業論(1/3 ページ)
LINEヤフーに26年在籍し、ヤフーのスマホシフトや「PayPay」の立ち上げ、LINEとの経営統合を主導した川邊健太郎会長が、退任発表と同時に「AIと起業する」と宣言した。人間は自分1人、パートナーはAI。ネット産業の勃興から成熟までを走り抜けた経営者は、なぜ30年の蓄積を「忘れる」と言い切るのか。その真意を聞いた。
特集:現役経営者に聞く AI時代のIT起業論
生成AIの台頭によって、IT起業のセオリーは根底から覆りつつある。サービス開発の難易度は下がり、少ないリソースで事業を始めやすくなった。一方で模倣や後追いが容易になり、競合や大手に代替されないユニークな価値の創出は難化しつつある。この状況下での起業に必要な考え方を、現役経営者たちに聞く。
ヤフー26年の総括──できたこと、できなかったこと
──川邊さんが学生時代に創業した「電脳隊」がヤフーの傘下に入ってから、四半世紀を超える時間をヤフーで過ごされました。IT業界で過ごした30年間、振り返っての所感を教えてください
IT業界というとちょっと幅が広すぎるので、ネット業界に30年どっぷりいたという認識です。起業した1995年は日本のインターネットユーザーも数十万人ぐらいだったでしょうし、世界でもこんなに使われる情報インフラになろうとは思っていなかった。ただ面白がって夢中になってやっていたら、30年たって社会にものすごく浸透した技術やインフラになっていました。
インパクトのある技術になるだろうとは当時から思いましたけど、ここまでになるとは思わなかった。それぞれの国でネットが普及して世の中を便利にしていったし、私もヤフーという会社に身を置いて、世の中を便利にすることにはかなり貢献できたなと思っています。
──副社長時代、社長時代を通じて実現できたことは
副社長時代にできたことは、やはりヤフーのサービスのスマートフォンシフトです。今となっては当たり前ですけど、スマートフォンファーストをやり切った。しかも収益的にへこませてやるのはいくらでもできますが、増益しながらやり切れたのが1つの成果でした。
あとはeコマースの再強化。AI時代を迎えると広告も曲がり角を迎えていますが、広告だけでなくeコマースという強い収益源をあの時期に仕込めた。広告、eコマース、プレミアム会員のようなサブスク。この3つの事業をそれぞれ収益体として大きくできたのは、副社長・社長時代を通じての成果だと思っています。
社長時代に事業的にやれたことは、PayPayを立ち上げたことと、LINEとの経営統合を果たしたことですね。
──ガバナンス面でも手を入れたと聞きます
非常に複雑な資本関係だったソフトバンクとの関係を、連結子会社に仕切り直しました。米国のヤフーが持っていた株を処分して、ライセンスも最終的に買い取って事業しやすくした。
あまり報道されていないし、メディア的にもそこを評価の軸にしていないと思いますけど、株主的にはすっきりしたかったという側面がすごくあったし、何よりも社内がやりやすくなったのは間違いない。自分は現場時代からそういうのを見てきましたから、分かっている自分が解消できたのはよかったなと。
たまりにたまった技術的負債を解消する「アンナプルナ プロジェクト」も進めました。自分がしたいことではなく、会社にとってなすべきことをなすのが経営者だ、というモットーに基づいてやれたのはよかったです。
──できなかったことは
やはりSNSにおいて大きな橋頭堡(ほ)を築けなかったこと。そして市場が大きくなっていく中でわれわれも大きくなったけれども、「GAFAM」の方が日本市場においてもより大きくなってしまったということですね。
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