ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出:

海外売上3倍超! とあるラミネーターメーカーが挑んだ日米「商慣習の壁」

 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売にいかしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

 第15回は印刷物をラミネートする機械を製造・販売するラミーコーポレーション(大阪市)を取り上げる。同社は米国の販売代理店に自社の在庫を保管する「代理店在庫方式」という手法を使い、海外売上高を急増させている。

岸田洋平社長

 同社の岸田洋平社長は、日本と米国の商習慣の違いを乗り越えるのに苦労したと話す。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

海外売上高が大幅増、カギは商習慣の壁に

──事業の概要を教えてください

岸田洋平社長(以下、岸田社長):当社は印刷物を自動でラミネートする機械を製造・販売しています。ラミネートとは、紙や写真などの表面を透明なフィルムで貼り合わせて保護・補強する加工することです。耐水性や耐久性を高め、汚れや破れから守ることができます。機械だけでなく、ラミネートに使う紙やフィルムなども取り扱っています。

 本社は大阪市ですが、札幌市から福岡市まで国内に7つの営業所があります。グループ会社を含めて約150人の従業員が働いており、飲食店やスーパー、アミューズメント施設、ホテル、トレーニング施設など全国で約4800の取引先があります。

──競合他社と比べた際の強みは

岸田社長:当社は印刷物や紙を自動で連続ラミネートし、給紙からラミネート加工、余白カットまでを一括で行う「オートラミネーター」の開発に力を入れています。

 かつては手作業で紙をフィルムで包み、ラミネートするものが主流でしたが、当社はコピー機のような機械に紙を差し入れれば、自動でラミネートできる機械を開発しました。将来はコピーもできる一体型のオートラミネーターを製造したいと考えています。

──海外進出したのはいつですか

岸田社長:2015年から欧州や米国、アジア諸国の展示会への出展を通じて市場調査をした上で、18年にラミネートの消費量の多い米国に進出しました。コネチカット州にある米企業に販売代理店をお願いし、全米でラミネーターを販売しています。海外売上高は18年から3倍以上に増えています。

──海外に進出しようと考えたきっかけは

岸田社長:ある時、中国企業の担当者から、「当社が購入しているフィルムの量は世界の1%程度に過ぎない」と聞かされました。これが進出のきっかけとなりました。

 その後、米国の学校や病院の現場に足を運び、どのくらいの量のラミネートを使っているのかを調べました。その結果、米国はラミネート加工が世界で最も普及しており、出荷量は日本の数十倍の規模に達しているということが分かりました。米国では学校の配布物すらラミネート加工されています。私は「大きなビジネスチャンスになる」と確信し、米国市場の開拓に力を入れることにしました。

──海外でのビジネス環境は日本と違いますが、苦労したことはありますか

岸田社長:最も困ったのは日米の商慣習の違いです。当社は代理店から入金が入った後に製品を船で出荷しますが、買い手の米国企業に到着するまでに2カ月程度かかります。

 買い手の米国企業は当社の製品が到着した後に入金してくれますが、その間は代理店が建て替えることになっています。米国企業が大量の注文をしてくれるのはありがたいのですが、代理店から「高額な代金を長期間建て替えるのは難しい」と言われ、取引が成立しないことがありました。当社にとって、これは大きな機会損失になりますので、何とかして改善する必要がありました。

 このため当社は25年から総代理店にラミネーターやフィルムなどの在庫を当社名義で保管してもらうことにしました。いわば「代理店在庫方式」ともいうべきもので、他社で同じことをやっている企業を私は知りません。

 この方式により、代理店が長期間お金を建て替えるリスクと、当社がビジネスチャンスを失うリスクを両方防ぐことができるようになりました。

──代理店の活用がカギになったわけですね。現在の米国の代理店を選んだ決め手は

岸田社長:米国のラミネーター市場を熟知していた点です。代理店の担当者が、展示会で当社の製品に興味を持ってくれたのが最初の出会いでした。

 当社の海外事業部の担当者が、代理店にアポを取って話をしたところ、先方の担当者が米国内のどのオフィスが何台、どんなラミネーターを使っているか、あるいはラミネーターを保有していないかに精通していました。つまり、どのオフィスに当社の製品を売り込めば購入してもらえる可能性が高いかを理解していたということです。その会社には約30店もの拠点があり、全米でビジネス展開できると考えたことも決め手になりました。

 その後、サンプルを販売してもらい、営業やレスポンスが迅速だったこともあり、代理店になってもらえるようお願いしました。

──さらなる拡大のため、IT活用を模索していると聞きました

岸田社長:米国は国土が広いので、一社一社、丁寧に営業に訪問するのは非常に難しいのが実態です。現在も代理店にインターネットを通じて当社の企業情報や製品情報を流してもらったり、オンラインで会議をしたりすることで、営業活動をある程度代替することができています。

 今後は代理店に管理してもらっている当社の在庫についても、ネットを通じて日本からリアルタイムで数を把握でき、的確に製品を送付できるような仕組みを導入したいと考えています。

 せっかく米国内に在庫を持っていても、頻繁に欠品になるようではビジネスチャンスを逸しかねません。ITを活用して適切なサプライチェーンを構築し、海外売上高を伸ばしていきたいと考えています。

 さらに、AIを仕入れや在庫管理で活用していこうと考えています。代理店にも協力してもらい、季節や地域別の需要をAIで分析・予測し、適切な在庫をもって欠品を減らせば、海外売上高を拡大することができると考えています。

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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本村丹努琉
本村丹努琉

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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