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勝ち筋は「まずオフライン施策、次にオンライン」 とある無線機器評価システム事業者の海外戦略ニッチ企業でもできる! IT活用で海外進出

» 2026年01月28日 11時00分 公開
[本村丹努琉ITmedia]

 世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。

 グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売に生かしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。

photo 妹尾貴文海外事業室長

 第9回は無線通信機器の性能を評価する測定システムを手掛けるマイクロウェーブファクトリー(横浜市)を取り上げる。同社は代理店や展示会を通じたオフラインの施策とオンラインの施策を併用。自社の認知度を向上させ、海外需要を開拓しようとしている。

 同社の妹尾貴文海外事業室長は「『高品質・短納期・低価格』を打ち出して海外需要を開拓する」と話す。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。

「まずオフライン、次にオンライン」で有効な情報発信目指す

──マイクロウェーブファクトリーは無線通信機器の性能を評価する測定システムの構築を手掛けています。事業の概要を教えてください

妹尾氏(以下敬称略):当社は性能評価に使う測定器のほか、電波の透過や反射を抑える「電波吸収体」などの製造、無線通信機器の試験をする電波暗室の建屋建築までを総合的に提供できるのが特徴です。

 携帯電話や電機、自動車関連のメーカー、防衛庁など官公庁、大学や研究機関が主な顧客です。まずはどのような機器の性能を評価したいのかを聞き取り、コンサルティングをした上でサービスを提供します。測定器などを単品で納入することもあります。2003年に創業し、約100人の従業員を抱えています。通信機器の需要増などを受けて、この10年は成長傾向にあります。

photo マイクロウェーブファクトリーは無線通信の測定システム構築を手掛ける

──他社との競合優位性は

妹尾:当社は、通信機器を測定する上で必要なハードウェアやソフトウェア、機械設計などに精通したエンジニアを多く抱えています。このため、測定システムや建屋などのソリューションをまとめて提供でき、それぞれの機器を別々に調達するよりもコストを下げることができます。

 違うメーカーの機器同士を接続してシステム化してもそれぞれの相性が悪く、機能しないことがあります。また、トラブルが起こってもどこに問題があるのかが分からないケースも少なくありません。当社がワンストップでシステム全体を引き受けることでこうした問題が発生する可能性を抑えられます。

──電波吸収体などでは海外にも競合他社がありますが

妹尾:1つは価格競争力です。円相場が下落したこともあり、当社製品が海外のメジャーな製品の2分の1程度の値段で販売することができます。一方で次世代の6G通信で求められる仕様にも対応しており、品質が高いため海外でも引き合いは多くあります。

 もう1つは製品のストックが多いため、短期納入が可能であることです。大手の競合会社は値段が高く、納期も長いといわれています。当社は「高品質・短納期・低価格」を打ち出して海外市場を開拓しようとしています。

──海外進出はいつごろから?

妹尾:転換点となったのは20年です。英語版Webサイトをリニューアルしたほか、海外展示会への出展を検討しました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて計画が遅れましたが、22年秋にイタリア・ミラノの展示会に小さなスペースのブースを出展しました。しかし、この時はコロナ禍の影響で来場者も少なく、引き合いはほとんどありませんでした。

 23年以降も米国のサンディエゴやワシントン、ドイツのベルリン、フランスのパリなどの展示会に出展しました。この時は製品の展示方法や装飾などを改善することにより引き合いが増えてきました。

 25年には米サンフランシスコとオランダ・ユトレヒトの展示会に参加しました。出展予算を増額し、スペースも広げて約100人の関係者と名刺を交換しました。この結果、サンフランシスコでは米国、カナダ、南米の通信キャリアやスマートフォンメーカー、研究機関、ユトレヒトでは北欧、ドイツ、スペイン、フランスなどの来場者にコンタクトできました。電波吸収体だけでなく、単価の高い測定システムの問い合わせが増えてきました。

──海外進出して、不足していると思うことは

妹尾:企業としてブランド、知名度がないことです。知名度や認知度が不足していれば信頼もされません。このため、当社は24年に韓国のソウルに代理店を設けました。当社の韓国人社員の活躍もあり、現地の商社と代理店契約を結び、製品を販売することができるようになりました。現地の代理店がWebサイトやカタログに当社の製品を掲載してくれており、韓国で販売しやすくなりました。25年にはシンガポール、ブラジルなどでも代理店契約を結びました。

──多くの国に代理店を設けるとのことですが、各国ではそれぞれ違うニーズがあると思います

妹尾:海外の展示会に出展して気づいたのは、米国は軍事関連、欧州では自動車関連に関心が強いということです。まずは市場規模の大きい米欧、次は韓国をはじめとしたアジアで事業を拡大したいと考えています。

──市場やニーズを把握して勝ち筋を見極めるということですね。調査会社ではなく、自ら展示会に出展して調べたり、代理店を設けたりすることで得られるものが多いと思います。一方で費用もかかりますが、費用対効果はいかがですか

妹尾:例えば海外の展示会の出展費用は500万〜600万円かかります。しかし、出展することによって市場調査や代理店の候補を探索できます。自社の準備不足が見つかることもあり、海外での事業展開を円滑にするための知見を得ることができました。韓国で優良な代理店を見つけられたのも、こうした経験が役立ったからだと思います。

──まずはインターネットで情報を発信するのが一般的ですが、マイクロウェーブファクトリーの場合はオフラインから入っていくのが興味深いですね

妹尾:当社の場合は、まず直に情報を取りに行ってユーザーのニーズを現場で把握した上で、次にWebの力を使って情報を発信していくというやり方です。まずは現地のニーズを身体で知らなければ、有効な情報発信は難しいと思います。

 韓国では、代理店の経営者から「eカタログ(電子カタログ)を作りなさい」と助言してもらい、実践しています。オンラインにもオフラインにも良い点がありますから、当社は両方を活用して相乗効果を生み出していきたいと考えています。

 米国や欧州など広い地域での営業活動はインターネットを用いたデジタルマーケティングが不可欠です。英語圏での販売については英語対応の公式サイトはあるものの、まだまだ改善の余地があると考えています。3月からは海外メーカーと当社の製品を比較した英語のメディアを公開し、情報を提供する計画です。また、それぞれの国で広告も展開していく方針です。

著者プロフィール:本村丹努琉 Zenken取締役

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社(現:Zenken株式会社)に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」(現:グローバルニッチトップ事業本部)の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸とした WEBブランディングを提唱し、14年間で約8000社のインサイドセールスを構築した。

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