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親が子にAIを使わせる理由は「勉強に役立つ」ではなく「うちの子だけは遅れさせたくない」? 2000人を調査
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米シカゴ大学などに所属する研究者らがPNASで発表した論文「Social dynamics of AI adoption in parents’ educational decisions」は、親が子どもに生成AIを使わせる判断の背景を調査した研究報告だ。
対象は米国・カナダ・英国に住む13~18歳の子を持つ親、計約2000人(各実験によって人数は異なる)。中心となる指標は、子ども用に制限なしで使える生成AIの有料プラン(3カ月で60ドル相当)に親がいくらまで払うかという支払意思額だ。
無作為に決まる金額を申告額が上回れば実際にプランが与えられ、下回れば現金を受け取るという仕組みを使い、本音を答えるのが最も得になるよう設計されている。世間受けのよい答えに寄る偏りを避けるための工夫だ。
その上で「あなたの州の10代のうち20%(あるいは40%、60%、80%)がAIを使っている」という状況を順に示し、それぞれの場合にいくら払うかを答えてもらった。
すると、20%のときと80%のときとでは、親が払うと答えた金額が6割以上も違った。商品の中身は何ひとつ変わっていないのに、周りが使っているというだけで、払ってもいい額が跳ね上がった。さらに、1人の回答者に20%か80%のどちらか一方だけを提示する参加者間の追試も行われたが、平均額は約18ドルと26ドルで、8ドルの差が確認された。
次に、AIの危険性を知らせれば需要が下がるかを試した。一方のグループには「AIを使っている間は作文などの成績が上がる」とだけ伝え、もう一方にはそれに加えて「高校生を対象にした実験では、学期中ずっと制限なしのAIを使えた生徒は、後でAIなしで受けた数量的な思考力のテストで2割近く成績が低かった」と伝えた。
その結果、危険性を聞いた側は、マイナスだと考えるように変わったが、支払う金額はほとんど変わらなかった。つまり、危ないと思っても、買う気はあまり減らないということだ。
ただし、情報操作がまったく効かないわけではなく、危険性の強度を上げると変わった。別の実験で、幅広い研究を総合して、このままではリスクが利点を上回りかねないと警告する政策報告書の要約まで示すと、支払意思額の平均そのものが下がった。とはいえ、それでも周りの利用率が高いほど支払額が増える関係は変わらなかった。
他方で、周りが使っていると聞いて支払額が上がるのは、みんなが使うくらいだから良い物なのだろうと考え直したからかもしれない。この仮説を研究チームが調べた結果、周りの利用率を高く伝えても低く伝えても、AIの品質評価にも、学校での禁止への賛否にも差は出なかった。 つまり、良い物だと分かったから買うのではなく、周りが使うから仕方なく買うということだ。
変わったのは別のところだった。「誰も生徒がAIを使えない世界(全面AI禁止)の方がいいか」と聞くと、危険性を聞いた群では57%が「その方がいい」と答えた(聞かなかった群では44%)。全面AI禁止に賛成なのになぜ使わせるのかと問うと、最も多かった理由は「使わないと取り残されるから」で、約2割を占めた。また77.6%の親が「今は役に立つが、長期的な影響が心配だ」という文に同意している。
つまり多くの親は、全員が使えない世界を望みながら、自分の子には使わせている。全員が我慢すれば得なのに、自分だけ我慢すると損をする、という囚人のジレンマが働いている。
ただし、道具の作り方次第で状況は変わりうる。研究チームは、答えと解き方を出してくれる数学アプリと、子どもに考えさせながら段階的に導く学習支援ツールを比べた。周りの利用率が上がるほど支払額が増える点はどちらも同じで、競争圧力はツールを選ばず働く。だが、学校で禁止すべきかへの賛成は、答え直結型が56%、学習支援型が39%と開いた。子どもの思考を肩代わりしない設計なら、親は受け入れやすいということになる。
Source and Image Credits: L. Bursztyn,A. Imas,R. Jiménez-Durán,A. Leonard, & C. Roth, Social dynamics of AI adoption in parents’ educational decisions, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (31) e2533193123, https://doi.org/10.1073/pnas.2533193123 (2026).
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