ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出
たった4人で10カ国超を担当、飲食チェーンの海外進出を支える生成AI活用
世界でも高い技術力を持つことで知られる日本企業。ニッチ分野で目立たないものの、高い技術や世界シェアを持つ企業は少なくない。ドイツの経営思想家のハーマン・サイモン氏はこうした企業を「隠れたチャンピオン」と定義し、経済産業省も「グローバルニッチトップ企業」として支援している。
グローバルニッチは高い技術力を持つ一方、バックオフィスに課題を抱えることもしばしばあり、ITの駆使が求められることも少なくない。この連載では、こうした企業のIT戦略や、それを支える企業の声をインタビューで深掘りする。
第17回は飲食業などの海外進出を支援するナシエルホールディングス(東京都新宿区)を取り上げる。同社は、自社の物件紹介サイトを通じて保有する10万社もの企業と、海外でフランチャイズチェーン(FC)展開したい企業などをマッチングし、成長をサポートしている。
中村幸司社長によれば、海外ビジネスにおいては生成AIによるリサーチもカギになっているという。聞き手は、海外進出する中小企業のブランディング支援などを手掛けるZenkenの本村丹努琉(もとむら・たつる)。
オンラインの10万社データ通じ飲食業の海外進出を支援
──ナシエルHDは店舗型ビジネスを展開する企業の経営をサポートしています。事業の概要を教えてください
中村幸司社長(以下、中村社長):当社は、物件・人材紹介やM&A仲介などを通じて飲食店など店舗型ビジネスの成長を支援する会社です。2009年に東京・銀座で創業し、現在の従業員数は約150人です。「テンポスマート」「ホクトシステム」といった不動産物件を紹介するポータルサイトを持っており、合計で約10万の登録社がいます。
そのうち、有料で非公開情報を提供するホクトシステムには、出店先を探している飲食店などから多くの相談があります。店舗だけでなく、人手、フランチャイズチェーン(FC)のマッチング、海外展開などさまざまな相談があり、そのソリューションを提供しています。20年前後からの新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店と同様、ダメージを受けましたが、その後は回復し、25年度はコロナ禍前を超える売上高になりました。26年度も、過去最高の売上高を見込んでいます。
──事業の強みは
中村社長:M&A仲介の企業は多くありますが、当社は物件・人材紹介やFC開発などを含めて企業の成長を総合的にできる点を特長としています。また、店舗ビジネスに特化しているM&A仲介会社も他にほとんどありません。さらに当社はM&Aだけが収入源ではなく、総合的に経営支援をしているため、長期的な視点でクライアント企業に寄り添うことができます。
──欧米諸国やアジアでもビジネスを展開しています。海外事業を始めた時期は
中村社長:本格的に始めたのは23年8月です。フィリピンの企業から「日本の焼き鳥チェーンを現地で展開したい」という要望を受けたのがきっかけでした。このため「将来的に東南アジアでもFC展開したい」という日本の大手飲食チェーンの担当者に声を掛けました。このチェーン店は、当社のホクトシステムを利用していましたので、ニーズを把握していました。
──国内でも経営サポートやM&Aのニーズは少なくありませんが、なぜ海外事業を始めたのでしょうか
中村社長:日本国内の少子・高齢化を受けて、飲食業の海外進出ニーズが増えてきたためです。当社としても、新たな側面でクライアントをサポートすることで、関係をさらに深めることができると考えました。
10年代から海外事業を模索してきましたが、23年8月に2人で構成する海外チームを新設し、本格的に進出しました。現在は、英語、スペイン語、中国語のできる4人でチームを構成し、シンガポール、インドネシア、マレーシア、台湾、フィリピン、オーストラリアのほか、米国、英国、オランダ、ドイツなど欧州諸国でビジネスを展開しています。
──海外事業の現状を教えて下さい
中村社長:日本のクライアント企業と海外企業によるFC運営の契約締結支援を年5件程度実施しています。日本企業の経営者や海外戦略の担当部署に要望を聞き取り、現地でFCを展開したい企業を探し、日本企業にフィードバックしています。このほか、欧米諸国でも飲食業人材の紹介などをサポートしたり、M&A仲介をしたりしています。
──海外事業に当たっては生成AIも活用していると聞きました
中村社長:例えば海外企業の調査・分析に生成AIを活用しています。「日本のこんな業態の外食企業がこんな立地で、こんな客層を対象にしたFCを展開しているが、シンガポールで似たようなビジネスモデルの企業を探してほしい」といった細かい条件を打ち込み、企業探しに役立てるイメージです。
対象国の政治・経済情報も現地のニュースサイトをまとめて生成AIがSlackで送ってくれるように設定しています。さらに、米LinkedInの「セールス・ナビゲーター」などデータ検索・営業プラットフォームも活用し、日本のクライアントの要望に応じた海外企業を探し出せるよう努めています。
──今後、AI活用をさらに高度化する予定はありますか
中村社長:今後は社内AIと国内外の企業のデータベースを作り、日本の飲食業の海外進出ニーズとFC展開したい海外企業を自動でマッチングできるような仕組み作りをしたいと考えています。
──海外事業のハードルの高さをどこで感じますか
中村社長:一番は食文化や商慣習など文化的な違いです。例えば、日本で流行しているチェーン店をそのまま海外で展開しても、成功するとは限りません。日本人が好む味と現地の人たちが好む味には違いがあるからです。
食習慣にしても、日本では居酒屋という食文化があります。しかし、海外ではお酒を飲むのはバーで、食事をするのはレストランと分かれていることが多く、馴染んでもらうのには時間がかかります。
商習慣の違いもハードルになります。日本企業の場合は慎重に相手企業を探すため、成約までのリードタイムが長いのが特徴です。一方で海外企業の場合は意思決定のスピードが速く、すぐにビジネスを始めたがります。
米国では工事の許可が出ず、3年間もただ家賃を払い続けたという事例もあるようです。こうした場合は小規模のM&Aを勧めるなど柔軟にアドバイスをしています。商習慣の違う内外の企業の間で、互いに理解し合えるようにすること、柔軟に戦略を変えていくことが大事だと考えています。
こうした点から、当社は、ただビジネスパートナーを紹介するだけでなく、互いの言葉や文化や商習慣などの現地情報を提供し、できる限り壁を取り払うよう努めています。進出する国の食文化や商慣習を深く理解することも事業の成功のためには大事だと考えています。
──とはいえ、米国など海外のニーズの把握は容易ではありません。現地のニーズを把握するための取り組みは
中村社長:国内外での事業を積み重ねてきたこともあり、現地の経営者やコンサルティング企業などから企業を紹介してもらうケースも多くなっています。当社が直接、多くの現地企業にコンタクトしてきたため、現地の関係者も増えており、ITと足で稼いだコネクションを同時に活用してビジネスを展開しています。
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ニッチ企業でもできる!IT活用で海外進出
グローバルニッチは高い技術力を持つ一方で、知名度が実力に比べて劣り、ITを駆使して海外でのブランディングや販売に生かしていることも多い。この連載では、こうした企業のIT戦略をインタビューで深堀りする。
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