「若手はAI使うな」は“老害”なのか? 新人教育で「AI禁止」した企業の1年後(2/2 ページ)

対応リソースに課題、現在は「段階的に開放」に

 一定の成果を挙げたAI禁止施策だが、和田執行役員は実際には改善点があったと話す。

 1つ目は対応できる人員の問題だ。同様の手法は、日常的なコミュニケーションの中で発生する質問のクオリティーから習熟度を判断する前提。徹底するには1人の新人に1人の教育担当が張り付く必要がある。仮に新人が増える場合、教育担当のリソースが不足する恐れがあった。

 2つ目はAIに慣れた新人が以前より増えたことだ。「学生時代からAIを使ってきた世代には、AIを取り上げるより、自分の言葉で説明できない成果物は提出しないというルールの方が納得してもらいやすいとも感じている」

 そこで同社は26年度から、新人のエンジニアには一律でAIを禁止するのではなく、AIに任せる範囲を段階的に広げる仕組みを採用している。「第1段階ではAIはコードを書かず、説明やヒントを出すだけ。第2段階で既存コードの修正をAIに任せられるようになり、最後の第3段階で、どこまでAIに任せるかを本人が決められるようになる」

 例えば第1段階では、成果物を提出する前に「何を変えたか」「なぜそうしたか」「どこが壊れうるか」を本人が説明。その内容を先輩エンジニアのレビュー基準を学んだAIがチェックする。合格が出れば提出でき、そうでなければ差し戻す仕組みだ。一定回数合格できれば、第2段階に移行可能に。最終段階に上がる──つまりAIを全面解放するかの判断のみ、先輩エンジニアが直接関与する形にしている。

 これにより、先輩エンジニアが常時張り付かずとも習熟度を判断できるように。その上で、先輩エンジニアはAIの判断が妥当かどうかチェックしたり、合格が出ないときに相談に乗ったりすることに集中しているという。

 こうした方針も奏功し、26年に入ってきた新人の中には、早くもAIが同僚のコードに付けた指摘に対し「これは過去の対応に沿っているので問題ない」「これは直す」と自分で判断して返す人が出てきているという。和田執行役員も「禁止しなくても『見る側』に立つ入口は作れる」と、手応えを感じていると話す。

「大事なのは禁止するかどうかではなく……」

 ただ、今後も同じ手法にこだわるつもりはなく「AIの進歩と新人の力量に合わせ、方針を毎年見直していく」という。実際、まだ教育担当への確認フローが必要以上に多く「まだ調整中。新人と一緒に直していく」としている。

 「去年の禁止は、AIに任せきりで本人が理解しないまま進んでいた状況への、一つの手段だった。大事なのは禁止するかどうかではなく、いつ制限し、いつ任せるかを設計すること」

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