私的録音録画小委員会
「ダウンロード違法化」で報告書まとまる iPod課金は「合意できず」
「3年にわたって議論してきたが、合意が得られず申し訳ない」――12月16日に開かれた、文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」の最終会合は、中山信弘主査のこんな言葉で幕を閉じた。
最大の懸案だったiPodなどへの補償金課金は「合意できなかった」として議論を持ち越し。違法録音・録画物の複製(ダウンロード)は「違法とすべきという意見が大勢だった」と報告している。
報告書案は、来年1月26日に開かれる著作権分科会に提出。了承を得た上で公表する。その後文化庁は、ダウンロード違法化を盛り込んだ著作権法改正案をまとめ、来年の通常国会提出を目指す。
2006年4月のスタート以来3年間続いた小委員会は、今期で終了する。iPod課金を含む補償金制度についての議論は、利害関係者を集めた場を設けて改めて議論し、早急に結論を得たいとしている。
iPod課金は「一定の方向性を得られず」
小委員会は、私的録音録画補償金制度について、見直しを含めて抜本的に検討する場として発足。iPodやHDDレコーダーに補償金を課金すべきかなどを中心に議論してきた。
文化庁は「将来の補償金制度縮小を前提としつつ、暫定的措置として、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画は補償金で対応すべき」という案を提示。iPodやHDDレコーダーにも補償金を課金すべきと提案していた。
この案に権利者側は賛同したが、メーカー側は「DRM付きコンテンツに補償金は不要」などと強く反発。「ダビング10」の議論も絡み、合意形成できなかった(文化庁「iPod課金=補償金拡大ではない」 JEITAと対立)。
報告書案ではこういった経緯を詳細に記しつつ、「著作権保護技術と補償の必要性の関係をめぐる議論を中心に、関係者間の意見のへだたりが依然として大きい」とし、「補償金制度見直しについて一定の方向性を得ることができなかった」と結論づけている。
ダウンロード違法化へ 「利用者保護は可能」
違法録音・録画物を著作権法30条の適用範囲から外し、違法とするいわゆる「ダウンロード違法化」については「(07年10月にまとめた)中間整理の段階で、違法とすることが適当という意見が大勢で、その後の議論で一定の方向性を得た」と報告。利用者保護を考慮しながら、ダウンロード違法化に必要な措置を講じる必要があるとしている。
中間整理に対するパブリックコメントのうち約7割がダウンロード違法化に関する意見で、その多くが利用者保護について懸念する内容だったとし、報告書案では(1)政府、権利者による法改正内容の周知徹底、(2)権利者による「適法サイト識別マーク」の推進――などといった利用者保護策を実施する必要があるとしている(反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ)。
違法ダウンロードを行った利用者に対して権利者が法的手段に出る場合も、(1)権利者は事前に警告を行う、(2)違法性の立証責任は権利者側にある――といった理由から「利用者が著しく不安定な立場に置かれて保護に欠けることはないと考えられる」としている。
ダウンロード違法化に一貫して反対してきた津田大介委員は小委員会終了後、「パブリックコメントが無視される形になって残念です」と肩を落としていた(「ダウンロード違法化」ほぼ決定 その背景と問題点)(「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は)。
違法ソフトのダウンロード違法化にも影響か
ダウンロード違法化の適用範囲は、録音録画物に限定されているが、報告書は、法政問題小委員会で行われている違法ソフトのダウンロード違法化に関する議論にも影響を与えそうだ。報告書案では「プログラムの違法配信からのダウンロードなどを含む30条の範囲全体の見直しについても、本小委員会の検討結果が参照されるものと考えられる」としている。
今後は利害関係者で議論 「オープンな場で」
文化庁は今後、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案をまとめ、次期通常国会への法案提出を目指す方針。ただ「政局の関係もあり、法案を実際に提出できるかどうかは何ともいえない」(川瀬真・著作物流通推進室長)状況だ。
今回合意できなかった、iPod課金を含む補償金制度のあり方についての議論は「中間整理の段階に戻って進めざるを得ない」としている。
文化庁の川瀬室長は「これまでの議論は無駄ではなかった」と強調。小委員会の議論をベースに、利害関係者を集めた新たな場で議論する方針を示した。
「小委員会で論点は整理された。問題の緊急性は増している」(川瀬室長)――今後は、消費者、メーカー、権利者などが忌憚(きたん)ない意見交換できる場を設けるなどし、早期の合意形成を目指す。
電子情報技術産業協会(JEITA)の長谷川英一委員は「補償金制度は消費者全体に関わる問題。新しい議論の場は、できるだけオープンな場にしてほしい」と要望した。
著作権の憂鬱 中山主査「責任を感じている」
「録音録画小委員会は、補償金制度について、見直しを含めて抜本的に議論する場だったが合意に至らず、主査として大きな責任を感じている」――中山主査は言う。
「わたしが出版した著作権に関する本の第1章は『著作権の憂鬱(ゆううつ)』というタイトルだが、それが現実の問題になった。補償金制度は著作権問題のほんの一部かもしれないが、デジタル問題を象徴している。著作権法をデジタル時代にどう対応させるか、大きな課題を与えられた」(中山主査)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
フランスのスーパー数百店舗で冷蔵設備にサイバー攻撃 温度が最高50度に上昇し食品大量廃棄に
-
2
Anthropic、自己複製AIの「兆し」を指摘 55ドルのTVボックス15台で26Bモデルが稼働
-
3
日本人の大腸がん、約半数に“腸内細菌の毒素”が関与 40歳以下の発症は7割 東大・阪大が200人を全ゲノム解析
-
4
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
5
「お前たちのクラウドはわれわれのもの」 IDCFクラウドの管理画面に出た攻撃者のメッセージ 内容に運営元は
-
6
「コミューン」不正アクセスでLINEヤフー、Sansan、パナソニックでも会員情報漏えいの可能性
-
7
AnthropicのAI、未解決殺人事件で警察に虚偽の情報提供 米政権は「通知と是正は義務」と警告
-
8
Meta、同社最大のAIモデル「Muse Wonder」発表 記憶力と粘り強さを強化、AIエージェント「Muse」にも搭載へ
-
9
初めての一眼にフルサイズを選びたい、でも高くて重いのは嫌……「EOS R8 Mark II」はそういう人のためのミラーレスだった
-
10
SpaceXAI、Xのユーザー名を「SpaceXSI」に変更 “AI呼称やめる”宣言から1週間ほどで
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR