「4K時代」に障壁あり? 放送局や制作プロダクションが“モダン化”する道とはInter BEE 2015 Report

4K/8K時代の本格到来を前に、報道や番組制作の現場ではワークフローの変革が求められている。撮影からファイル共有、アーカイブにいたるまで、大容量映像データのスムーズな活用を可能にするソリューションを紹介しよう。

» 2015年12月10日 10時00分 公開
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 2020年に迫る大型イベントなどに向け、いよいよ「4K放送」への期待が高まりつつある。ここ数年で4Kテレビの価格帯が落ち着き一般家庭でも入手しやすくなったほか、2016年にはBSでの試験放送スタートも予定されている。

 こうした流れを受け、放送局や制作プロダクションでは4K映像をコンスタントに制作するためのワークフローの構築が急務となっている。しかし、現在の制作環境から4Kへの変化、そして将来的には「8K放送の実現」も予想される中、どのような視点で機器やシステムを選択すべきか悩む人も多いのではないだろうか。

 そのヒントを示している主要ベンダーの1つが、法人向けITで多くの実績を持つ日立製作所(以下、日立)だ。以下では、同社が音と映像と通信のプロフェッショナル展であるInter BEE 2015(千葉・幕張メッセ、11月18〜20日)に出展したブースのレポートを通じ、4K/8K時代の制作環境に求められる条件を探ってみよう。

photo Inter BEE 2015の日立製作所ブース

SAN・NAS兼用で、4K映像の共有・編集をスムーズに

 今回で昨年に続き2回目の出展となった日立ブースでは、米Scale Logic社のファイルシステムHyperFSと日立のストレージHitachi Virtual Storage Platformミッドレンジファミリー(VSPミッドレンジファミリー)、日立アドバンストサーバHA8000を組み合わせた次世代ファイル共有システムが注目を集めていた。

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 4K映像制作に移行する上で、大きな課題の1つとして指摘されているのが「データ共有」だ。従来の制作フローと比べて扱うデータが大容量化する中、それらを複数の担当者間でやり取りするためのファイル共有システムが重要になると言われている。

 そんなファイル共有システムの導入に当たってしばしば議論になるのが「SANとNASのどちらを採用すべきか」という点だろう。高速なファイルアクセスが求められるシーンにはSANファイル共有が適するものの、一般的なSAN環境では、サーバとクライアントのOSプラットフォームやバージョンの制約などの理由で、特定のOS条件下でしか動作しない編集用ソフトなどを使用するケースも多い制作現場では導入・運用のハードルが高かった。

 そこで現在、汎用性に優れるNASの採用を検討するケースも増えつつある。だが、4K/8K映像といった大容量データの編集を視野に入れると、既存のネットワーク帯域がボトルネックとなる可能性があるNASがベストな選択肢であるとは言い難い。

 これらの課題を解決するのが、「SANとNASのいいとこ取り」をうたうHyperFSだ。

 HyperFSの大きな特長は、1つのストレージに格納したファイルにSANとNASのどちらでもアクセスできる点だ。例えば、XDCAM 50Mbpsのファイルなど比較的低ビットレートの編集やプレビュー用途ではLAN経由でデータを読み書きし、映画製作や制作プロダクションなどで用いる大容量データは高速のFC-SANで読み書きする――といった運用ができる。

 HyperFSでは、ファイルシステムがオンラインの状態でも停止することなく性能や容量を変更できるのも特長だ。複数の担当者が日夜を問わずファイルシステムにアクセスして作業を継続しなければならない放送局やプロダクションにとって、こうした設定変更の柔軟さに助けられるシーンは多いだろう。また、導入後にも1つのファイルシステムにつき64ゼタバイトまで拡張できるため、4K/8K、HDRの制作シーンの増加や変容に合わせて徐々に容量と性能を拡張することができる。

 日立はHyperFSに、VSPミッドレンジファミリーの2機種VSP G100、VSP G200、日立アドバンストサーバHA8000を組み合わせたソリューションを提供している。VSPミッドレンジファミリーは、ディスク構成に信頼性の高いRAID6を採用しつつ、高精細な映像編集にも耐え得るパフォーマンスを特長とする。これとHyperFSの組み合わせにより、高性能かつ高信頼なファイル共有システムを構築できるというわけだ。

photo HyperFSとVSP G100/G200、HA8000を組み合わせてファイルシステムを構築している

 製品自体の耐障害性に加え、国産ベンダーならではのサポートの安心感もある。日立は全国約300カ所のサポート拠点を用意し、万一の障害発生時にも迅速な対応が可能という。社会インフラや大手金融機関での採用事例が多いのも、こうした信頼性を裏付けるポイントと言えるだろう。

 同社ブースでは、Mac Pro Late2013を2台とWindows PCを1台用意し、異なるOSプラットフォームをまたいでのファイルシステム活用のデモンストレーションを行っていた。1台目のMacでは合計8本の1080i 29.97fpsのHD映像素材をVSP G200に保存しつつ、同時に4K/60pの映像再生を実施。もう1台のMacは「Final Cut Pro X」を使って、ProRes4444 4K/60pの編集作業を実演。さらにWindows PCでも4K/24pの映像を再生――といった高負荷な状況においても、一切コマ落ちしない、かつ高密度なスクラブ再生能力を発揮するパフォーマンスの高さを示していた。

photo Mac Proで映像素材を保存
photo 同時にWindows PCで映像を再生
photo 高負荷環境にもかかわらず、一切コマ落ちしないのが確認できる

データ共有や管理、アーカイブまで 4K/8K制作を総合的にサポート

 日立ブースでこのほか目を引いたのは、仏Dalet社のメディア資産管理(MAM)システム「Dalet Galaxy」と日立製ハードウェアを組み合わせたソリューションだ。

 Dalet Galaxyは、放送局などが持つ映像素材やメタデータ(タイトルや作成日時、契約情報など)を一元管理するソフトウェアだ。Adobe PremiereやFinal Cut Proをはじめとする主要な編集ソフト向けに連携用APIを用意しており、映像編集から資産管理までをシームレスに行えるのを特長としている。

photo Dalet Galaxyの管理画面

 ファイルベースのMAMシステムは放送局などが独自に構築するケースも多いが、日立では標準的なパッケージ製品としてDalet Galaxyを提供。世界で300社以上への導入実績を持つDalet製品と日立ハードウェアを組み合わせて提供することで、放送局が信頼性の高いMAMシステムをスムーズに導入できるよう支援するという。

 また、4K/8Kの大容量データに対応する次世代アーカイブシステムとして、LTO装置とLTFS(Linear Tape File System)管理サーバとしてHA8000を組み合わせたアプライアンスも展示していた。

 LTFSは、LTOテープの内部データをファイルとみなしてアクセスする技術。これにより、OSのエクスプローラ上でLTOテープをドライブとして認識し、HDDやUSBメモリなどと同様にドラッグ&ドロップでデータ読み書きできる。バックアップソフトを用いることなくデータを磁気テープに保管できるため、手軽さと安心感を兼ね備えたアーカイブシステムと言えるだろう。

photo LTFSテープアーカイブ装置
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 このほか日立ブースでは、インターネット回線を経由して高速ファイル転送を可能にする高速大容量データ転送基盤「JP1/Data Highway」も展示していた。2Gバイト超えのファイル(最大1Tバイト)も暗号化機能などによってセキュアに転送できるのが特長で、放送局と制作プロダクションとの映像データのやり取りなどでの活用を見込むという。

 一方、メディア業界ではいまだに、HDDなどの外部記憶媒体にデータを保存して関係者間で受け渡すケースも多い。従来のテープベースの制作フローであれば、万一メディアを紛失してしまったとしても、専用機器を持たない一般人が内部データにアクセスするリスクは低かったが、HDDは一般的なPCなどでも簡単にアクセスできるため、ひとたび紛失すると放送前の映像データなどが漏えいしてしまう恐れもある。

 こうしたリスクを低減するソリューションとして日立が展示していたのが、HDD内のデータを自動で暗号化する「データプロテクトミドルウエア」だ。AES-CBCによる暗号化/複合処理を自動で行うことで、ユーザーが意識することなくHDD内のデータを保護できるという。(関連記事:いまどきのTV番組制作は危険だらけ? 「デジタル化」に潜む“ワナ”とは

photophoto 高速大容量ファイル転送基盤「JP1/Data Highway」、データプロテクトミドルウエア(左から)

8Kカメラシステムも気軽に持ち運べる時代に

 今回の日立ブースの出展では、放送システムなどを手掛ける日立国際電気と隣接出展を行い、ブースの入り口付近には日立国際電気の最新4K/8K対応カメラシステムが展示され、多くの来場者の注目を集めていた。

 ブースに入って目につくのが、日立国際電気とNHKが共同開発した8Kカメラシステム「SK-UHD8060B」。単版式のスーパー35ミリCMOSセンサーを搭載して高画質化を図りつつ、従来の8Kカメラシステムと比べて大幅な小型化を実現したのが特長だ。

photo SK-UHD8060B。従来型の8Kカメラシステムと比べて小型化し、屋外などでも活用しやすくなった

 カメラシステムは、収録用途に合わせてSSDを採用したレコーダーを装着できる。また、12インチ4Kビューファインダーを接続することにより、フォーカス合わせを容易に行えるようになる。スタジオだけでなく屋外などでの撮影にも対応できるため、従来なら難しかったシーンでの8K撮影も可能にするという。

 もう1つの目玉製品として展示されていたのが、4Kカメラシステムの「SK-UHD4000」だ。2/3型MOSセンサーと独自開発の4板式光学系をそれぞれ採用し、高解像度かつ低ノイズ、広ダイナミックレンジを実現したという。

photo SK-UHD4000による撮影デモ

 同製品の最大の特長は、HD放送カメラでも使われている2/3型B4マウントレンズをそのまま転用できる点だ。中継用の高倍率レンズにも対応し、HD番組の制作フローを変えることなく4K撮影を行える。「今すぐ乗り出すわけでもない4K制作にゼロから投資するのは難しい」と感じる放送局やプロダクションにとって、現状のリソースを有効活用しながら段階的に4K環境へ移行していける点は魅力的だろう。


 4K時代の到来が間近に迫る今、新たなワークフローを用意する必要性を感じている放送局やプロダクションは多いだろう。高解像度の映像を扱う上では、撮影から素材共有、編集、アーカイブにいたるまで、あらゆるシーンにおいてデータ容量の増大に耐えられるシステムの構築が求められている。

 いざ本格的な4K映像制作に乗り出してから「データの読み出しや保存に時間がかかる」「作業中にシステムがフリーズする」といったトラブルに見舞われてからでは後の祭り。信頼性やパフォーマンスに優れる日立のソリューションを通じ、安心して4K映像制作に移行するための第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2015年12月24日