海洋では分解しないと思われていた市販の釣り糸の中に、海洋生分解性ポリマーのセルロースと同等レベルで生分解する釣り糸が複数存在するーー国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5月15日、東京大学などとの共同研究でこのような発見があったと発表した。
釣り糸のポリマー素材には、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが利用されており、それぞれ非生分解性と考えられてきた。
これらは、水鳥やウミガメなどの野生生物に絡まることで生態系に悪影響が出たり、マイクロプラスチック化することによる海洋汚染が問題になってきた。
だが今回、市販のナイロン製の釣り糸の中に、強度が時間経過とともに著しく低下し、その表面に分解の兆候が認められる釣り糸が複数存在することを発見した。
これは「ナイロンを非生分解性ポリマーとして扱ってきた教科書の記述や、高分子分野・水産業分野の共通認識の常識を完全に覆すもの」だと指摘。研究成果は、2025年5月19日からの高分子学会年次大会で、東京大学らが発表する予定だ。
今回の発見は、海洋汚染拡大の歯止めにつながる他、漁網などの漁業系プラスチックに展開することで、海に残った網などによる環境の悪影響に対する包括的な対策につながる可能性があるとみている。
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