2025年の大阪・関西万博で紹介された最先端の製品や技術が、福祉分野で実用化され始めた。大阪ヘルスケアパビリオンで話題を呼んだ「ミライ人間洗濯機」を介護施設用に応用した入浴装置が、大阪市内の高齢者施設で導入されたほか、介護ロボットやAIによる見守りも注目される。介護の人手不足対策やヘルスケア産業の成長につながりそうだ。
介護付きホーム「交欒(まぜらん) 森ノ宮」に導入された、サイエンスの入浴装置「ミラブル アシストバス」。またがずに浴槽ドアから入ることができ、座ってからお湯をはりマイクロバブルの力で洗浄する=大阪市中央区(南雲都撮影)万博に出展されたミライ人間洗濯機は、シャワーヘッド製造・販売のサイエンス(大阪市淀川区)が開発。人間洗濯機の技術を介護用に応用した同社の入浴装置「ミラブル アシストバス」が6月、同市中央区の介護付きホーム「交欒(まぜらん) 森ノ宮」に本格導入された。
装置は浴槽内で発生させた微細な気泡が毛穴の奥の臭いの元となる老廃物を吸着して浮き上がらせ、つかるだけで汚れを落とせる。側面に開閉式ドアを備え、高齢者は浴槽をまたぐ必要がなく座ったまま安全に利用できる。
同施設での入浴介助はスタッフの身体的、精神的負担が大きかったといい、施設で働く40代女性は「1日に何人も対応することがあり大変な作業だったが、こすり洗いの手間が大きく減り、乗り移らせたり姿勢を支えたりする場面も少なく、身体的にも精神的にもかなり楽になった」と喜ぶ。利用者からも「お風呂が楽しみになった」などの声が聞かれているという。同社は在宅介護の需要を見据え、一般家庭への展開も目指す。
福祉の現場では、少子高齢化や慢性的な人材不足を背景に万博での技術を取り入れる動きが進む。産業用ロボットを手がけるFUJI(愛知県知立市)が開発した移乗サポートロボット「Hug」(ハグ)は、大規模病院や全国の特別養護老人ホームのほか、介護保険を利用した在宅レンタルにも普及しつつある。
このロボは、胸と脇、ひざをクッションに預けて寄りかかるだけで立ち上がりや着座を補助し、ベッドから車いす、車いすから便座への移動など介助者の重労働を軽減する。「万博では試乗できる体験型で出展した反響も大きかった」と広報担当者。6月時点でシリーズ3機種の導入は6000台を超えた。
AI技術の実用化も目立つ。コンピュータやカメラ、センサーを内蔵し、グリップを握ると動き出す「AIスーツケース」は視覚障害者向けの活用が期待される。このほか生成AIを活用した対話アプリによる見守りサービスは、高齢者の孤独解消や認知症予防につながる。
日本総合研究所の藤山光雄・関西経済研究センター所長は「介護や福祉分野への最新技術の導入は、ヘルスケア産業の成長に加え、人手不足など社会課題の解決にも大きな効果が期待できる」と指摘。一方で「機械による対応に不安を感じる利用者も想定されるため、人によるケアとのバランスや利用者ニーズに合わせた技術改善が重要になる」と述べた。(田村慶子)
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