社会とネットとサービスと──SNSその3
“社会”を作る「GREE株式会社」
「GREEを作ることと社長業は、すごく似てる」――ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「GREE」を一人で作り上げた田中良和(28)さんは今、「GREE株式会社」という新しい“社会”を、1から組み上げている。
GREEは国内SNSの草分け。楽天の社員だった田中さんが、「なかなか会えない友人とつながる仕組みを作りたい」と考え、海外のSNSと、Blogやレビュー機能などを組み合わせて作り上げた。2004年2月、田中さんが数人の友人を招待してスタート。ユーザーは予想をはるかに超えるスピードで増え、10月には10万人を超えた。
「会社員のかたわら、私財を投じて維持していくのは、時間的にもコスト的にも限界」――GREEを会社化するため、田中さんは10月、楽天を退社。12月にGREE株式会社を設立した。1月には六本木に小さなオフィスを借り、社長の毎日が始まった。
当初のスタッフは、親友で、ITニュースサイト「CNET JAPAN」の元編集長・山岸広太郎副社長と田中さんの2人だけ。ほどなく社員1人と学生インターンを4人を雇った。5月には社員が3人増える予定だが「まだまだ足りない」。技術者もデザイナーも営業担当も足りない。GREEや自身のBlogを通じ、スタッフを募集する。
「15万ユーザーが利用するサービスを自分の好きなように変えられる」――これが募集の売り文句。学生・社会人経験者を区別せず、任せられる仕事はすべて任せる。
学生を積極的に受け入れるのは、大学時代の経験が今の自分を作ったと思うから。ネットバブル全盛期だった田中さんの大学時代。ネットエイジや日本総合研究所に出入りして業界の空気を知り、起業を志す多くの仲間に出会った。山岸さんもその一人。大学で“普通に”過ごしていれば、なかっただろう出会いだった。
「大学の友人は、そこでたまたま一緒になっただけ。“与えられる”人間関係だったと思う。でもネット界の友人は、自分から能動的に知り合っていった感じ」。学校コミュニティの外に出なければ、つかめなかった縁がたくさんある。「普通の生活をしていると、何かを失っていることすら気づかないと思う」
GREE独自のビジネスモデルを
「今はGREEが個人運営から会社になる過渡期。良いと思えるものを作って、継続的に利益を出せる体制を築く――会社として当たり前のことを、確実にやっていきたい」。人員補強に加え、売り上げ拡大にも力を注ぐ。
現在の収入源は、従来からあったAmazonのアフィリエイト、Googleのコンテンツマッチ広告「AdSense」に加え、「純広告」と呼ばれるテキスト広告やバナー広告。「今の体制を回していくだけの収入はある」。営業を担当する山岸さんの人脈が生き、MSNやApple Store、リクルートといった大手との広告契約が相次ぐ。
しかし「SNSでがっつり儲けるとか、SNS独自のビジネスモデルとなると、まだまだ」。広告だけでなく、独自のビジネスも模索していく。
「個人の力を生かしたビジネスをしてみたい」――田中さんは展望を語る。「楽天市場も価格.comも、個人の小さな力を集めたビジネス」。具体策はまだないというが、日記やレビューによる情報発信をさらに充実させ、個人を核にした新しいビジネスを始めたいと話す。
「作る人」から「作る人を作る人」に
「“サービスを作る人”から、“サービスを作る人を作る人”になった」――趣味でGREEを作る楽天社員と、GREE株式会社の社長の違いを、田中さんはこう語る。「何かしたいと思っている人に場所を与え、儲かる仕組みにし、利益を還元するのが僕の仕事」。社長になってまだ4カ月の28歳。経営者としての視点は、楽天の三木谷浩史社長の背中に教わった。
「楽天時代、やりたいことを自由やらせてもらって、何度も失敗しながらたくさん学んできた」。社員が50人程度だった楽天に飛び込み、プログラミングほぼ未経験からコミュニティサイト「楽天広場」を作ったのもその1つ。当時の楽天と同じような環境を、GREEの社員に与えたいという。
「GREEを作ることと社長業は、すごく似てる」――GREEも、GREE株式会社も、中で人が幸せに生きるための一つの“場”と、田中さんはとらえている。「人が幸せになるには、誰と、何をするかが重要」。GREEという場で、また、GREE株式会社という場で、素敵な仲間と楽しく活動し、みんなが幸せになれば――そんな思いで、“場”作りに徹する。
「SNSは、組み合わせでしかない」
GREEやmixiの成功を受け、“自称SNS”が続々と増えている。「『以前はコミュニティサイトって呼ばれなかったっけ?』と思うようなサービスまでSNSと呼ばれることがある」。SNSの定義は広がり、あいまいさも増してきた。
ただGREEは、SNSの定義にこだわるつもりはない。「SNSは、これまでにあった仕組みを組み合わせただけ。中でユーザーがやってるのは、メール見て日記書いてレビュー書いて……。以前と変わらない」。それぞれの機能は決して真新しいものではなく、だからこそ、組み合わせ方でいくらでも変化する。
GREEも既存のSNSの枠にとらわれず、必要な機能を柔軟に増やしていく方針。ただ1つ変えないのは、身近な人と一緒に使うサービスであり続けること。“誰と何をするか”をサポートし、人を幸せにできる仕組みを、田中さんは作り続ける。
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