スクエニ好決算も「楽観視できない」理由
過去最高決算を発表したスクウェア・エニックスだが、今後も成長を続けられるかは未知数という。「次世代機や、各種端末のマルチプレーヤー化によってゲーム業界の収益構造は大きく変革する」と和田社長は話す。
ゲーム業界は2005−2006年に産業変革が起きる――5月24日、増収増益の好決算を発表したスクウェア・エニックスの和田洋一社長は「今後は楽観視できない」とかぶとの緒を締める。業界再編が進んだ2007年以降も業界トップクラスとして生き残るべく、次世代機やプラットフォームの多様化に対応した体制を整える。
ナムコとバンダイ、タカラとトミーがそれぞれ合併を発表するなど、アミューズメント分野で業界再編が加速してきた。和田社長は「この時期に大規模な再編があると予想していた」と話す。先手を打つ形で3年前に合併を済ませ、足場を固めてきた。
Xboxなど次世代機向けに新作ソフト提供を発表した同社だが、次世代機が強調するネット機能は実は不安材料だという。
例えば、任天堂の「Revolution」では、過去の任天堂ハード向けゲームがネット経由でダウンロードできる(関連記事参照)。しかしソフトメーカーへの利益配分は現時点では不透明という。
他の次世代機もそれぞれネット対応をうたうが、ポータル的な役割を誰が担うのか明らかにされておらず、「ゲームが1つ売れた時、誰がどうお金をシェアするかが見えない。これは経営にとって大きな変動要因」。
次世代機の発売前後、現行機ソフトの買い控えで店頭価格が値下がりしてしまう懸念もある。「新品価格が下がると小売店の取り分も減るため、流通業者も買い控える。その結果、中古市場が活発になり、新品がさらに売れなくなってしまう」。「FINAL FANTASY XII」など大作発売を控えながら、今期の売上高営業利益率の予測を30%と前期(36%)から引き下げたはこのためだ。
すべての端末が、同じコンテンツの「窓」に
和田社長によると、携帯ゲーム機や携帯電話などの高機能化で「ゲーム、動画、音楽といった多様なコンテンツにどの端末からでもアクセスできる」ようになった。家庭用ゲーム機も携帯端末も、いわば「同じコンテンツを見るための窓」になりつつある。
こうした中、メーカーもゲーム専業から脱却し、映画や小説、DVD制作といった多面的なビジネスモデルを構築する必要があると説く。というのも端末を選ばず多彩なメディアを再生できるようになれば、ユーザーのハードへの優先度は下がり、コンテンツメーカーの重要性が高まるからだ。
「M&Aも視野に」
環境の変化は業界再編も加速させる。和田社長によると「今後2年は大乱戦。新しい業界地図の中で、各社がどの役割を演じるかを決め、メインプレーヤーが固まるだろう」と予言する。
新しい産業構造への対応策として「提携や買収など、他社との協力を強めていきたい」とM&Aを示唆する。「開発は国際分業する必要がある。例えばある部品は中国で、他の部品はアイルランドに任せる――といったような形で、得意分野に集中しないと生き残れないだろう。買収するとしたら、1から10まですべてまかなうゲームメーカーではなく、1つ1つの“部品”を持つ企業」。
2006年度、オンラインゲームがメジャーに
ここ数年で、オンラインゲーム市場も立ち上がり始めた。「ライトユーザー対象のオンラインゲームがヒットするなど、すそ野が広がり始めている。Xbox 360はオンライン機能をフィーチャーしており、オンラインへの抵抗感は薄れていくだろう。2006年度にはメジャーなマーケットになるだろう」。
「FINAL FANTASY XI」(FFXI)のユーザー数は50万人以上。オンラインゲームの営業利益率は、ユーザーが増え、サービス期間が延びるほど高まるため、FFXIの粗利率は向上し続けているという。
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