Microsoft Tech Summit
Microsoftはなぜ「Surface Studio」など異色製品を作れるようになったのか――開発者が明かす舞台裏
「マイクロソフトからこういう製品が出るとは……」。米Microsoftが10月末に発表した初のオールインワンPC「Surface Studio」は、多くの人々を驚かせた。Surface BookやSurface Hubなど、ここ数年で新たな製品ジャンルを開拓しているMicrosoft。その秘密は何なのか――Surfaceシリーズの設計・開発を統括しているアンドリュー・ヒル氏が、都内で開かれたイベント「Microsoft Tech Summit」(11月1~2日)で開発の舞台裏を明かした。
「スケッチをたくさん描いた」
同社が「ノートPCとタブレット端末の特徴を併せ持つ」オリジナルブランド端末として初代Surfaceを発表したのは2012年6月のこと。その後、13年にはSurface Pro、15年にノートPCタイプのSurface Bookと大画面PCのSurface Hub、そして今年はSurface Studio――と、新製品を続々と発表している。
「Surfaceの開発チームでは共有しているテーマがある」とヒル氏は話す。「それは、失敗するならなるべく早い段階で失敗すること。良いアイデアが思い浮かんだら、早いうちにプロトタイプを作って、本当に良いものか確かめることだ」。
ヒル氏らが、初代Surfaceの原型を開発したのは2010年ごろ。「タブレット端末のようなノートPCを作る。しかも『Microsoft』の名前を冠したものを……」という発想からスタートした。両者の特徴を融合させた上で「タブレットにキックスタンドがあって、取り外し可能なキーボードも付ければ、使い勝手がよくなるのでは?」というアイデアにたどり着いたという。
まずはプラスチックや段ボールでモックアップを作り、他のデザインチームやエンジニアリングのチームにアイデアを説明。賛同を得てから本格的な試作をスタートし、樹脂製の試作品を300個以上作成したという。「タブレット端末でも、PCと同じように3D CADソフトを使えるように」と考え、当時選定できたものの中でなるべく強力なCPUを採用。それに伴い、バッテリーパワーや排熱方法を見直すなど試行錯誤した。
初代Surfaceの発売後も、ユーザーの声に耳を傾け、Surface Proなどの開発に生かしたという。しかしヒル氏によれば、「キーボードやキックスタンドがいくら改善したとはいえ、膝の上に置くならノートPCで十分じゃないか」との指摘も多数あったという。
こうした指摘を基に、「タブレット部分を切り離して使えるノートPC」というアイデアが生まれ、ノートPCタイプのSurface Bookの開発がスタートした。
だが、着脱可能な構造にすると、ヒンジ部分が貧弱になりやすいほか、転倒しないようバランスを取るためにはキーボード側を重くしなければならず、持ち運びにくくなるなど、互いにトレードオフにある課題を多く抱えてしまったという。
「着脱可能にするにはどのようなメカニズムがよいか、エンジニアリングチームとスケッチをたくさん描いた」(ヒル氏)。新しいアイデアを試しては失敗し、別のアイデアを考える――この繰り返しで、Surface Bookが採用した蛇腹のようなヒンジ(Dynamic Fulcrum Hinge)、タブレットとキーボードを固定する機構「Muscle Wire」が完成したとヒル氏は話す。
「試作品は数日間で作れる」――Microsoft本社に“秘訣”
プロトタイプの制作を早める秘訣は、Microsoft米国本社のラボにもある。CNC切削機、3Dプリンタなど、さまざまな設備をそろえ、「デザインには1週間かかっても、試作品自体は数日間で作れる」という。
「試作品を経営陣に見てもらい『これではダメ』と言われても、即座にCADの設計を見直して、新しい試作品を作れる。この反復可能なプロセスが、フィードバックを速めている」(ヒル氏)
また、本社内にある無響室「The Anechoic Chamber」も活用。「地球上で最も静かな場所」としてギネス世界記録に認定された施設だ。ここではマイクやスピーカーなど音響面の機能に加え、「キーボードの音」を念入りにチェックしているという。
「Microsoftに入社して、打鍵音と指先の感覚がどれだけ密接な関係にあるかを学んだ。例えば、ヘッドフォンで音楽を聴きながらだと、キーボードを叩く音は聞こえにくく、指先への感覚も変わってくる。打鍵音のチューニングにはかなりの時間を費やした」(ヒル氏)
こうして完成した製品が市場に出ると、ヒル氏は「できるだけ早く、ユーザーの声を聞きに行く」と話す。「中には怒り心頭のユーザーもいるが、彼らが怒るのは何かしらの不満があるから。その不満を早く拾って、改善できれば、満足してもらえると思っている。さまざまな意見を聞けることが喜びだ」。
「発表したばかりのSurface Studioも、ユーザーの感想を聞いて、次のバージョンではどう満足度を高められるかをもう考え始めている」(ヒル氏)
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