Facebookを米FTCと46州が独禁法違反で提訴
FacebookのInstagramとWhatsAppの買収は独禁法に違反する疑いがあるとして、米連邦取引委員会と米国の46の州とワシントンD.C.、グアムの司法長官が、Facebookを提訴した。Facebookは法廷で争う姿勢を示した。
米連邦取引委員会(FTC)は12月9日(現地時間)、米Facebookを独禁法違反の疑いで提訴したと発表した。InstagramやWhatsAppなど、将来競合する恐れのある新興企業を買収し、競争を阻害したとし、両社の売却を要求している。米46州、ワシントン D.C.、グアムの司法長官も同日、Facebookを独禁法違反の疑いで提訴した。
FTCの提訴の趣旨
FTCは53ページにわたる訴状(リンク先はPDF)で、2012年のInstagram買収と2014年のWhatsApp買収は、自社によるSNS独占への脅威を排除するための戦略の一環だったと主張する。
FTCは2社の売却を促す恒久的な差止命令を求めるとしている。また、Facebookがサードパーティーのアプリ開発者に対して反競争的条件を課すことを禁じようとしている。
「初期のライバルMySpaceを倒して独占力を獲得して以来、Facebookは反競争的手段を通じて防衛を行うようになった。InstagramとWhatsAppという強力な競争上の脅威を特定し、これらを買収することで脅威を鎮圧した」としている。FTCはマーク・ザッカーバーグCEOが2008年のメールに「競合するより買った方がいい」と書いたことなど、Facebookの買収戦略を反映しているとみられる複数の例を挙げた。
FTCは、Facebookが競合するサードパーティー開発者に対してAPIへのアクセスを制限することも違法だとしている。Facebookは米Twitterの6秒動画アプリVineがAPIによるFacebookユーザーへのアクセスを遮断した。
州司法長官らの注目点
州はFacebookの調査でFTCと協力したが、FTCとは別にFacebookを提訴した。こちらでは、Facebookの独占力の維持のためにユーザーデータの収集が果たす役割に注目している。Facebookはユーザーデータを集めることで、ユーザーが他のサービスに切り替えにくくするような体験を提供できるとしている。州は、消費者、広告主、競合企業に害を及ぼしていると主張する。例えば広告主は、広告の価値の透明性を制限されており、「Facebookの不快なコンテンツ」でブランドを傷つけられるという被害を受けているいう。
ニューヨーク州司法長官のレティシア・ジェームズ氏は「競争を阻害し、中小企業を傷つけ、革新と創造性を減らし、プライバシー保護を怠るFacebookと全力で対峙する」と語った。
Facebookの声明
Facebookはこれらの訴訟についてすぐに声明文を発表した。FTCは2社の買収について当時承認しており、これを覆すことは危険な前例になると主張。「われわれは、競争の激しい市場で事業を展開し続けている。われわれの買収は、市場の競争、広告主、消費者のすべてにとって良いものだった。Facebook、Istagram、WhatsAppが同じ企業に属し、優れた製品とメリットを競う証拠が示せると確信しており、法廷での1日を楽しみにしている」と、争う姿勢を見せた。
関連記事
- 米司法省、Googleを独禁法違反で提訴 Googleは「ユーザーがわれわれを選んでいる」
米司法省がGoogleを独禁法違反で提訴した。検索および検索広告市場を不法に維持していると指摘。Googleは、この訴訟は「ひどい欠陥」があるとし、「ユーザーは強制されてではなく、自らGoogleを選んでいる」と主張する。 - 米下院司法小委員会、「GAFAは分割すべき」 調査報告書公開
Google、Apple、Facebook、Amazonについて約16カ月にわたって調査してきた米議会下院の独禁法小委員会が、長大な報告書を公開した。デジタル市場での健全な競争を回復させるため、4社はそれぞれ分割し、企業買収についても規制を強化すべきと提案している。 - InstagramのDM機能がFacebook Messengerと統合(とりあえずしない選択もあり)
Facebookは、InstagramのDM機能がFacebook Messengerと接続すると発表した。当面はしない選択も可能。InstagramとFacebookのいずれかのアカウントを持っていれば、いずれのユーザーともメッセージのやりとりができるようになる。 - Facebook、InstagramやWhatsApp、Noviを含む全デジタル決済サービスの統括部門新設
Facebookが、Instagramなどの“ファミリー”サービス全体で提供するデジタル決済サービスとデジタルウォレット企業Novi(旧Calibra)を統括する新部門Facebook Paymentsを立ち上げ、元PayPal幹部でUpworkのCEOをそのトップに引き抜いた。 - GAFAの4CEO、Cisco Webexでの公聴会を概ね無難に乗り切る
Google、Apple、Facebook、Amazon.comのCEOが初めてそろった米下院の公聴会はCiscoのWebexによるWeb会議で行われた。3時間にわたる公聴会で4人は世界規模でみれば市場独占には程遠いと主張した。 - 米連邦取引委員会、GAFA+Mに独禁法関連報告を要請
米連邦取引委員会(FTC)がAlphabet(傘下のGoogleを含む)、Amazon.com、Apple、Facebook、Microsoftに対し、2020年以降に行ったすべての買収に関する情報の提出を要求した。報告に基づいて、買収が競争上の懸念を引き起こしていないかなどについて調査する計画。 - Facebookをニューヨーク州などの司法長官が独禁法違反の疑いで調査開始
米ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官が、Facebookを毒気の法違反の疑いで調査すると発表した。コロラド州やワシントンD.C.など8つの州と地区も調査に参加する。 - Facebook、傘下のInstagramのブランド名に「from Facebook」を追加する計画
Facebookが傘下の人気SNS「Instagram」と「WhatsApp」の名称に、「from Facebook」を追加するとThe Infromationが報じ、Facebookはこれを認めた。「製品やサービスがFacebookの一部であることを、もっと明確にしたい」としている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.