欧州連合、IT大手を規制する2つの法案を発表 企業買収の事前通知や不適切投稿の迅速な削除を義務付け
欧州委員会は、IT企業を規制する2つの法案「デジタルサービス法」と「デジタル市場法」を発表した。Google、Facebook、Amazon、AppleなどのIT大手が対象になる。
欧州連合(EU)の欧州委員会は12月15日(現地時間)、IT企業を規制する「Digital Services Act(DSA:デジタルサービス法)」と「Digital Markets Act(DMA:デジタル市場法)」の2法案を発表した。
欧州委員会のコミッショナー、マルグレッタ・ヴェスタヤー氏は発表文でこの法案を「欧州をデジタル時代に適合させる道標」と語った。
EUはこの2つを「Digital Services Actパッケージ」とし、その目標を、ユーザーの基本的権利を保護し、安全なデジタル空間を作成することと、EU市場と世界の両方で、イノベーション成長、競争力を促進する公平な競争の場を確立することとした。EU人口の10%に当たる4500万人以上のユーザーを擁する企業を大手と定義し、規制対象とする。当然、米国のGoogle、Apple、Facebook、AmazonのいわゆるGAFAが対象になる。
DSAは、SNS大手などに違法コンテンツの迅速な削除などを義務付け、年間売上高の最大6%の罰金を課す。Facebookでは昨年3月、銃乱射犯がライブ配信した犯行動画をすぐに削除できなかったことで批判され、その後も不適切な投稿への対処が不十分だと批判されている。
DMAは、企業を買収する際の当局への事前通知や自社製品の優遇の禁止などを規定する。重大な違反には、年間売上高の最大10%の罰金、EU域内での業務停止、企業の分割などの罰則がある。Facebookは現在、米当局と州政府から独禁法違反の疑いで提訴されており、買収したInstagramやWhatsAppの分割を迫られている。Googleは10月にやはり米当局から独禁法違反の疑いで提訴されている。Amazonは現在、独禁法違反の疑いでEUの正式調査を受けている。
SNS大手への規制をめぐっては、英国政府も同日、同様の法案を発表した。こちらは違反企業への罰金に加え、経営陣を刑事罰に問う条項も設定している。
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