従来にない粘性の高いインクを飛ばすためには、ヘッドの高いパフォーマンスが必要になる。5年前の製品でもピエゾ方式を採用したリコーは、今回の製品でもピエゾ素子をアクチュエータとして採用した。
しかも製品に採用されたのは、300dpiピッチ、1.27インチ長という従来にはなかった、高密度ノズル、長尺ヘッド。もちろん、コストさえかければ決して不可能な数字ではないだろう。しかし、IPSiO
Gシリーズの価格を考えると、なかなか贅沢な構成だ。
 |
商品開発室の太田氏(新型ヘッド、およびヘッド保護・維持機構開発担当)
|
「まずアクチュエータですが、これだけ粘性の高い顔料インクを熱で飛ばすのは非常に厳しい。技術的に障壁が高いため、最初から考慮しませんでした。最初からピエゾ方式にすることを前提にしていたわけではありませんが、高粘度のインクを打ち切ることができるヘッドとして、ピエゾ方式が優れていたのです。長尺/高密度のヘッドに関しても、当初から開発目標として150dpiピッチを2列並べて300dpiにすることと、印刷速度の目標値がありました。その目標値を達成するためのノズル数を計算すると、1.27インチという数字も出てきたのです。この数値は“後から可能そうだからやってみた”という結果論ではなく、最初から想定コストと必要性能を分析した上でのもので、全く目標通りのヘッドを開発できたと言えます」
ピエゾ素子を用いたインクジェットプリンターとしては、他プリンターメーカーのマイクロピエゾ方式があまりにも有名だ。リコーのピエゾ方式は何が異なるのか? なぜ高粘度インクを理想的に飛ばすパワーを生み出せるのか?
「我々の技術は、積層ピエゾ素子を横に寝かせ、インク室のキャビティに長辺方向に接着して使うのが特徴です(他プリンターメーカーは積層ピエゾを縦に配置する)。この方式は変位量をあまり大きく取れませんが、キャビティに対してかける圧力は高めることができます。またキャビティ剛性を高めることで、パワーの逃げを防ぎました。つまりインク室全体に対してピエゾの力がかかるようにし、さらにその力がインク室の変形によって失われないようにしたわけです」
ただし前述したように変位量は少ないため、いわゆるポンプのようにインク室の体積変化によってインクを飛ばすことはできません。その代わりに、インク室を金槌で叩くように衝撃を与え、その衝撃波で飛ばすイメージになります。一聴すると、体積変化の大きさで飛ばす方が制御しやすいように思うかもしれませんが、我々の方式の方が共振点が高く制御性は高いと言えます。その結果、40kHzという高い周波数での吐出サイクルを実現しています」
 |
左がIPSiO G707のヘッド、右がIPSiO
G505のヘッド
|
これだけのヘッドを作ろうとすると、歩留まりの悪さや作りにくさなど、コスト面での困難が予想されるが、実際の製品価格は非常にアグレッシブだ。
「ピエゾ方式を採用したヘッドの量産立ち上げは、すでに5年前の製品で経験していましたから、特に問題なく進めることができました。ヘッドそのものは組み立て工程で完成品となりますが、インク室やノズルなどの形成には半導体製造プロセスを応用した手法も用いており生産性やコストの問題を解決してきています」
|