長尺ヘッドの問題は、単に製造コストだけではない。たとえばコンシューマ向けインクジェットプリンターでも、高級機には1インチヘッドが採用されている。単に長いヘッドを作るだけならば、最近の技術であれば問題は無くなっていた、とも言える。
長尺ヘッドにとって問題なのは、用紙送り機構にローラを用いる限り、きちんとした紙押さえが行えないことだった。これをリコーはベルト搬送メカで解決した。
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商品開発室の糠谷氏(開発リーダーでメカ設計担当)
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「メカ設計で最初に悩んだ点は、マージンの縮小です。高速な自動両面印刷を実現しつつ、マージンはレーザープリンター並の5ミリ以下を実現しなければなりません。その上で、自動両面印刷を行うために、用紙を引き戻して裏返す必要があるわけです。その上、インクジェットプリンターでは、用紙のシワによってヘッドと用紙との距離が変わることが避けられません。長尺ヘッドになればなるほど、この問題は大きくなります」
「用紙を吸着させ、安定した搬送とヘッド―用紙間の距離を実現できるベルト搬送方式の採用は自明でした。なにより、我々はレーザープリンターでベルト搬送に関してノウハウを持っていましたし、すぐに採用しようと結論は出ていました」
しかし単にベルト搬送のノウハウというだけならば、他のメーカー等も持っていたハズだ。採用に際しての問題はコストだったのか、それとも技術的な問題も隠れていたのだろうか?
「最初はレーザープリンター向けのベルト搬送技術を持ち込めばいいと、多少甘く考えていたところもありましたが、実際にはインクジェットプリンター向けでは新しいチャレンジも数多くあり、実際には全くの新規技術に近いものになっています。たとえばベルトと用紙が触れる面積が狭いため、より強く用紙を吸着させなければなりませんし、万一、ベルトにインクが乗ってしまった場合のことも考慮する必要があります。同じベルト搬送といっても、技術的には全く異なるものになりました」
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