キートップ交換の悦楽――富士通コンポーネント「リベルタッチ FKB8540」:ちょっと気になる入力デバイス
ユーザーに身近なキーボードとマウスは、星の数ほど発売されている。その中から、気になる一品を360度チェックする。
これまでのバックナンバー
第1回 線をなくした“最上”マウス――エレコム「M-P3DUR」シリーズ
第2回 Media Center 命”のVista向けキーボード――MS「Wireless Entertainment Desktop 7000」
第3回 Mac印のミニキーボード――PFU「HHKB Lite 2 for Mac」
第4回 “ごろ寝マウス”が地球のキキを救う!?――シグマA・P・O「ごろ寝 リターンズ」
第5回 “小学生だからって甘く見るなよ”な右手/左手切り替えマウス――エレコム「M-EKUR」シリーズ
第6回 見ためが“イカス”快適マウス――MS「Natural Wireless Laser Mouse 6000」
第7回 カ・イ・カ・ン……なホイールがお手ごろ価格で――ロジクール「MX620 Cordless Laser Mouse」
第8回 “ちょい上”キーボードをタッチしてみた――エレコム「TK-P05F」シリーズ
OEMで豊富な実績を誇る富士通コンポーネントがスタンダードな市販モデルを投入
入力デバイスやコネクタ、コンソールスイッチといった電子部品のOEM/ODM製品を数多く手がける富士通コンポーネントだが、ベテランユーザーならば、その前身である富士通高見澤コンポーネントのほうがなじみ深いかもしれない。
今回発売した「リベルタッチ」(Libertouch:Liberta+touchの造語)は、USB接続のスタンダードなキーボードだ。これまで、市販された同社製キーボードは、無線LAN接続の小型キーボード(FKB8580シリーズ)、1インチのトラックボールを搭載したFKB7412シリーズ、そしてコンパクトなUSB親指シフトキーボード(FKB8579-661EV)と、やや“特殊”なタイプが多かっただけに、シンプルな有線キーボードの登場はまさに待望と言えるだろう。
このリベルタッチFKB8540シリーズは、ブラック(FKB8540-052/B)とホワイト(FKB8540-051/W)のカラーバリエーションが用意される。一見したところ、どちらも単なる日本語配列のキーボードと思ってしまうが、本製品の真骨頂はそのキータッチにある。
キースイッチこそメンブレン方式を採用するものの、ラバードームとコイルバネを使ってキートップを保持することにより、軽いタッチと静かな入力音(同社の従来製品に比較して約40%低減)を両立しているのが特徴だ。しかも製品には荷重が異なる3種類のラバードームと「キートップ引き抜き工具」が付属し、ユーザーがキーごとに好みの荷重に変更できるのも見逃せない。キーの入力音は軽めで、前回紹介したメカニカルスイッチ採用のダイヤテック「Majestouch Wireless」と比較して明らかに静かだった。
具体的には、出荷時に全キーに入力荷重約45グラム(約0.44N)のラバードームが取り付けられ、パッケージには約35グラム(約0.34N)と約55グラム(約0.54N)のラバードームがそれぞれ15個ずつ付属し、荷重を変えられる仕組みだ。加えてキートップ引き抜き工具のできがよく、キーの交換が容易に行なえるのもうれしい。
ボディサイズは456(幅)×170(奥行き)×39.5(高さ)ミリで、キーボードの配列に不規則な部分は見られないが、スペースバーは47ミリと短めだ。キーストロークは約3.8ミリあり、キーの列ごとに傾斜角度が異なるステップスカルプチャーを採用する。重量は1585グラムあり、安定感は申し分ない。また、キーを強く押してもユニットがしならず安定して入力できるのもありがたい。
ワンタッチボタンなどの付加機能は持たないが、前面部分に1基のUSBハブ(USB 1.1対応)を備えている。なお、インタフェースはUSBで、PS/2変換アダプタは付属しない。
実売価格は1万8000円前後と値は張るが、キーの荷重を好みに変えられるのは大きなアドバンテージだ。欲を言えば交換用のラバードームは余裕を持ってそれぞれ2倍ずつ(30個ずつ)は欲しかったところだが、キータッチを追求できる質実剛健なキーボードとして一見の価値は大いにある。
同社によれば、「リベルタッチ」はシリーズ化する方向で検討中とのことなので、今後のモデル展開も期待したい。
PC USER編集部Tのインプレッション
自分で荷重をカスタマイズできるのはうれしいが、体感できる荷重の差は思ったほど大きくない。標準の状態でもキータッチに不満はなく、キートップがふらついたり、ボトムがたわんだりすることはないので、無理に荷重を変える必要はないと感じた。ただ、力が入りにくい薬指や小指で押すキーを約35グラムの荷重にするのはアリだと思う。また、専用工具を用いたキーの着脱作業は単純に楽しいので、購入したら1度は試してほしい。
ボディは富士通らしいスタンダードなデザインで、業務用途を想定した頑丈な作りだが、個人的にはもう少しキーボード上部のスペースを詰めて小型化したり、チルト機構を多段階にしたり、キーの刻印に独自色を出すなどの工夫が欲しかった。今後はワイヤレス接続やコンパクトタイプ、親指シフトなどのバリエーション展開に期待したい。
PC USER編集部Hのインプレッション
「タイピングに限りない心地よさを」というキャッチフレーズにある通り、柔らかなキータッチがクセになる。キートップリムーバーのできがなかなか秀逸で、キートップを着脱するだけでも楽しい。Enterキーやスペースバーの底面部にゴムのダンパーが用意されているのも心憎い。個人的な好みを言えば、ほぼすべてのキーを約35グラムのラバードームに切り替えたくなるが、パッケージには15個しか付属していないのが残念だ。別途ラバードームだけを購入できるとうれしいのだが……。
また、打鍵音が同社の従来製品に比べて40%も低減したとのことだが、一般的なメンブレンタイプのキーボードと比べるとそれほど静音化しているようには感じられなかった(耳障りではなく、軽やかな音)。今後のブランド展開は大いに気になるところだ。
主なスペックは下記の通りだ。
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