GeForce GTX 480で時代が変わるか!:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
新世代アーキテクチャ“Fermi”を採用したGeForceが登場。ベールに隠されてきた“GF100”の実力をDirectX 11対応ゲームベンチマークテストで明らかにする。
Fermiの実力をDirectX 11対応ゲームで試す
今回の性能評価では、GeForce GTX 480を使って単体構成と2枚構成によるSLI環境でベンチマークテストを実行した。比較対象として用意したのは、Radeon HD 5870を2枚、GeForce GTX 285を2枚、そしてRadeon HD 5970だ。
検証に用いたシステムは、CPUにCore i7-980X(3.33GHz/6コア12スレッド)、マザーボードにIntel DX58SO(Intel X58 Express)、そして、2Gバイト×3枚のDDR3-1066メモリ、64ビット版Windows 7 Ultimateで構成する。なお、エンスージアスト向けのGPUということもあり、デルの30インチディスプレイ「3008WFP」で、1280×1024ドット、1600×1200ドット、1920×1200ドット、2560×1600ドット(一部2048×1536ドット)の解像度条件で測定した。
評価用システム構成 | |
---|---|
CPU | Core i7-980X Extreme(動作クロック3.33GHz) |
Motherboard | Intel DX58SO |
Chipset | Intel X58 Express |
Memory | DDR3-1066 |
HDD | WD5000AAKS(500Gバイト/7200rpm/16Mバイト) |
OS | 64ビット版Windows 7 Ultimate |
DirectX 11対応GPUがRadeonとGeForceから出そろったので、ベンチマークテストも見直した。「3DMark06」、および「3DMark Vantage」(ただし、GeForce系GPUはPhysXオフで計測)は引き続き使うが、ゲームタイトルを使ったベンチマークテストでは、DirectX 11対応の「Unigine Heaven Benchmark 1.0」「Unigine Heaven Benchmark 2.0」、「S.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat Benchmark」を利用し、DirectX 10対応のタイトルとして「The Last Remnant Benchmark」、「World in Conflict」、「Tom Clancy's H.A.W.X.」、「Far Cry 2」を用いている。また、PhysXの性能をテストするために「Dark Void PhysX Benchmark」を加えた。
まず単体構成における比較から確認していこう。全般的な結果を先にまとめると、ほとんどの項目でGeForce GTX 480はRadeon HD 5870に対しリードしている。例外はS.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat Benchmarkの1280×1024ドット、および1600×1200ドット条件だ。ただ、これ以上の解像度では再びリードしている。
また、Unigine Heaven Benchmark 2.0、およびFar Cry 2では最小FPSも計測してみたが、Heaven BenchmarkにおけるGeForce GTX 480の最小FPSがRadeon HD 5870の2倍近いことにも注目したい。最小FPSが高いということはもちろん性能面でいいことであるが、平均FPSとミニマムFPSとの差が比較的小さく、安定したフレームレートが得られていることも示している。
続いて、SLI構成の性能を見ていこう。一部のテスト結果でマルチGPUに起因するクセが見られるものの、基本的にこちらも良好なスコアを示している。3DMark06も3DMark Vantageも、Radeon HD 5970はもちろん、Radeon HD 5870のCrossFireX構成に対してもリードしている。特に3DMark Vantageにおける測定結果におけるリードは大きい。
DirectX 11に対応したゲームタイトルで行ったベンチマークテストの結果では、まずS.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat Benchmarkにおいて、GeForce GTX 480はトップスコアを出している。ただ、Unigine Heaven Benchmarkでは、ややおかしな挙動が確認された。ver.1.0では1920×1200ドット、および2048×1536ドットでガクッとスコアが落ち、ver.2.0では逆に低解像度条件で測定したスコアが高解像度条件より低い。とはいえ、ほかの条件では、ほかのGPUを大きくリードしている。
DirectX 10に対応したゲームタイトルでは、どれも一定のところで頭を抑えられているかのようなスコアだ。The Last Remnant BenchmarkとTom Clancy's H.A.W.X.はほかのGPUより高いフレームレートを出しているが、Far Cry 2、World in Conflictに関してはRadeon陣を下回っている。とはいえ、2560×1600ドットではトップスコアであり、負荷が重い状況でも高いパフォーマンスを維持できることが確認できる。また、GeForce GTX 285比では、2倍とはいわないまでも大幅に差をつけている。
PhysXの性能を比較するDark Voidでは、新旧GeForceで比較しているが、単体構成でGeForce GTX 480のスコアはGeForce GTX 285の2倍に達した。SLI構成時も2倍とまではいかないものの、やはり大差が付いている。このテストだけで、PhysXパフォーマンスが明らかに向上と決めつけられないが、NVIDIAが主張する「GeForce GTX 200比最大2.5倍」というPhysXパフォーマンス近いデータが確認できたといえるだろう。
Watt's up Proを使った消費電力の測定結果では、GeForce GTX 480が単体構成、2枚構成それぞれのアイドル時とピーク時でも、ほかのGPUと比べて突出した消費電力であった。シングルGPU構成でCrossFireX構成のRadeon HD 5870に近い。SLI構成のピーク時では677ワットを記録している。システム全体としてもCore i7-980Xを用いているので消費電力が高い傾向にあるが、SLI構成を検討しているユーザーは電源容量に注意が必要だ。少なくとも1000ワット超級の電源ユニットが望ましいだろう。
実際、発熱量もすごかった。多くのエンスージアスト向けハイエンドGPUは、ベンチマークテスト実行後はしばらく放置しないとやけどをするくらい熱いが、GeForce GTX 480はこれまでのGPUにはないほどの熱だった。シングル構成時、Unigine Heaven Benchmark実行直後の温度をGPU-Zで確認してみるとGPUが80度超、PCBが70度超という結果だ。これまで以上にPCケース内部のエアフローに注意する必要があるだろう。
課題は多いがパフォーマンスは「新世代」
GeForce GTX 480の計測を終え、パフォーマンスに関しては現状のシングルGPUでトップとなるだろうことが確認できた。とはいえ、いくつか課題がある。まずは登場したタイミングだ。Radeon HD 5000シリーズに約半年の先行を与えたため、エンスージアストユーザーの相当数がRadeonに流れてしまった可能性がある。NVIDIAとしては無視できない機会損失といえる。次は流通量だ。Radeon HD 5800シリーズが登場当初、極端な品薄であったのと同様に、GeForce GTX 400シリーズも同じTSMCの40ナノメートルプロセスルールを採用したためか、同じ可能性があると予測されている。そして価格だ。GeForce GTX 480の店頭予想価格は6万円前後といわれている。その一方で、2009年に登場したRadeon HD 5870は最も安い製品で4万円程度にまで下がっている。
消費電力も問題だ。パフォーマンスでトップに立ったとはいえ、ワットあたりのパフォーマンスは微妙だ。消費電力を気にするユーザーからすれば、ヘアドライヤーと呼ばれたGeForce FX5800シリーズを思い出さずにはいられない。
このような懸案もあるものの、GeForce GTX 480のパフォーマンスは、予算と大容量電源ユニットを準備し待ちかねていたユーザーにとって、至高のフレームレートが得られるGPUであることは、まず間違いないだろう。
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