デルが考える「ユーザーのためにオープンなHPC」
このところ、デルの公共事業ビジネスに関連した説明会が続いている。「堅牢ノートPC」「教育」に続いて、今回訴求するのは「HPC」だ。
経験者が提案する研究者に特化したデルのHPC
デルは、5月24日に同社が取り組む公共事業ビジネス部門におけるHPCソリューションについて、日本の関係者に向けた説明会を行った。この説明会では、米国デル本社から来日したグローバル公共事業 統括責任者のポール・ベル氏から、全世界規模で行っている同社の取り組みが紹介されたほか、米国デル本社コーポレートディレクター 兼 デル執行役員 北アジア地域 公共事業本部 統括本部長の郡 信一郎氏が、日本市場おけるHPC事業について紹介した。
現在、デルの公共事業ビジネス部門による売り上げは、デル全体の4分の1を占めるまでに成長した。法人向けビジネスの売り上げは、前年同期比で21%成長したが、ベル氏は「その成長を推進しているのは、PCではなくサーバやストレージ、サービス部門で、それらの成長率は38%になる」と説明する。公共事業部門に限った売り上げも前年同期比で22%成長した。「ガードナーの調査で、ヘルスケアITサービスではナンバー1、教育サービスでも第2の規模になった」(ベル氏)
公共事業ビジネス部門で、デルが特にフォーカスを当てているのが、「教育」「医療」、そして「官公庁」分野だ。ベル氏は、公共事業ビジネス部門の特徴として、「官公庁や高等教育機関の研究者や医者、そして、教育現場の教師のそれぞれが、ITを使って何をしようとしているのかというニーズを調査して理解することから始まり、彼らの目的が実現できるためにサポートをするのが、デルの使命と考えている」と述べた。「それぞれの業種のニーズに特化したソリューションを展開し、教育分野では“Connected Classroom”、医療では電子カルテと画像データのアーカイブなどを日本でも展開できるようになった」と、ベル氏は日本における公共事業ビジネス部門の成長を示した上で、新しいカテゴリーとして、HPCを中核とした「リサーチコンピューティング」をアピールした。
現在、全世界規模の研究者が協業して1つの研究を進めるプロジェクトが増えており、これらのプロジェクトでは、最大の演算性能と最大のボリュームをもったストレージを限られた予算で構築するのが常に問題になると、ベル氏は説明する。デルの公共事業ビジネス部門でリサーチコンピューティングにフォーカスする目的を、「研究者のワークロードに適したソリューションを提供すること」と述べた上で、その具体的な活動として、「博士号を取得した同社社員や自分で同様な研究に携わった同社社員によるHPC選任チームを組織して、彼らの経験に基づく適切なソリューションを提案する」とベル氏は説明する。
説明会では、そのようなHPC選任チームが手がけた実例として、スイスにある欧州原子核研究機構(CERN)に関連した取り組みが紹介された。CERNには全世界で160に及ぶ大学研究機関が参加しているが、そのうち、東京大学とテキサス大学が、デルのシステムを利用して研究に関連した情報の共有を行っている。システムの構築では、デルのCERM選任チームが問題の抽出を行い、160の大学と共有できるように「スタンダードなアーキテクチャの作成」(ベル氏)することにしたという。
ベル氏は、日本におけるHPCビジネスについても「日本には優れた研究機関を持つ大学が存在する。そして、日本の研究機関はデルのシステムで得られるメリットをよく理解している」と期待を示した。
5人の選任チームが進める「日本市場のHPCビジネス」
郡氏は、「かつてスーパーコンピュータが必要だったHPCが、より規模が小さいユーザーにも提供できるようになり、すそ野が広がっている」と、HPCを取り巻く市場の変化を述べた上で、「小型化の需要に対してオープンで柔軟な構成のHPCが、日本でも今後広がりを見せる」と市場の成長に対する期待をみせた。
さらに、郡氏は「パートナー企業と連携することでデルが強いハードウェアともに、ユーザーの研究分野で利用するアプリケーションに適したコンポーネントの提供が可能になる」と説明した。「HPCのユーザーは、テクノロジーだけでなくワールドワイド規模のコミュニティーを形成している。デルはグリッド評議会やWindows HPC Consortium、PC Clusterといったコミュニティーに対する支援も行っている」(郡氏)
日本のHPC市場については、国内のHPC選任チームとして、すでに「他社で実績のある」(郡氏)5名を確保しており、将来的には10名まで人員を増やしてHPCビジネスを進めていきたいとしている。また、購入を希望するユーザーが、自分の用途に従ってHPCの構成を構成オンラインツールも用意するなど、ハードウェアだけなくサポートも充実させていくという。
このような取り組みによって、デルは東京大学素粒子物理国際研究センターで2010年4月に稼働したATLAS実験データ解析拠点に、ブレードサーバ「PowerEdge M610」784台をはじめとする大規模なシステムを納入している。このように、大量導入に適したサーバやラックサーバは、デルの公共事業ビジネス部門の重要なラインアップだが、郡氏は、2010年3月に登場したラックサーバ「PowerEdge C」シリーズについて、「MicrosoftのサーチエンジンやFacebookのサーバに採用されたフルカスタムのデータセンターサーバで得られたノウハウを反映したPowerEdge Cシリーズは、ブレードサーバより高密度で高性能を発揮する。汎用のサーバでは性能が不足していたユーザーに高い性能を高密度で提供できる」(郡氏)とアピールした。
関連記事
「21世紀教室」でデルができること──「Latitude」新製品発表会
デルは「Latitude E5510」「Latitude E5410」「Latitude E4310」と教育市場向けNetbook「Latitude 2110」の発表会を行い、教育現場におけるデルの役割をアピールした。デル、Core i5/i7搭載の企業向けノート「Latitude E6510」など3モデル
デルは、最新のCore i5/i7搭載に対応した企業向けノートPC「Dell Latitude E6510」「同 E6410」など計3製品を発表した。「Latitude XT2 XFR」で名実ともにタフネスだ
デルの堅牢ノートといえば“ATG”。でも、いかついロゴに似合わずオフィス限定の堅牢ノートだった。だが、XT2 XFRは違う。どこでも頼れる“タフガイ”だ。Dell、ワイヤレス充電可能なノートPCを発表
Dellの「Latitude Z」はドックの上に載せて充電ができ、ケーブルは不要だ。文房具のように気楽に使い込みたい──デル「Latitude 2100」
Latitude 2100は、学校で生徒が使うことを想定して開発されたNetbookだ。でも、学校で使いやすいならオフィスでも使えるはず。汎用的な可能性を探ってみた。Latitude 2100が問う「児童生徒に特化したNetbook」の条件
デルは、5月20日に教育市場に特化した「Latitude 2100」を発表した。製品説明会では、Latitude 2100の特徴が紹介されたほか、公共市場への取り組みも訴求した。デル、魂の1キロ切りモバイルノート――「Latitude E4200」を駆る
豊富なラインアップを擁するデルのモバイルノートPCにおいて、日本市場からの要望で軽量化を追求したというのが「Latitude E4200」だ。コイツはただ者ではない。Dell、頑丈ノートPC「Latitude E6400 XFR」発売
「Latitude E6400 XFR」は軍や石油・ガス産業、フィールド技術者向けに、耐久性や頑丈さを追求している。デル、マルチタッチ液晶搭載の企業向けタブレットPC「Latitude XT2」
デルは、マルチタッチ対応のタッチパネル液晶を内蔵した企業向けタブレットPC「Dell Latitude XT2」を発表した。これが法人向けとはもったいない――デルの軽量モバイルPC「Latitude E4300」をドライブする
デルのビジネス向けノートPC「Latitude」シリーズがフルモデルチェンジし、最軽量の2スピンドルPCが登場した。その実力に迫る。“いつでもどこでも使える”ノートPCを目指して――デル「Latitude E」発表
デルがビジネス向けノートPC「Latitude」シリーズを一新した。約1キロの軽量モバイルノートや19時間駆動ノートなど、7モデルを8月下旬より順次発売する。堅実なタブレットPCはペンでもタッチでも操作よし!──デル「Latitude XT」
「なんとなくもっさり」という印象があったタブレットPCも最近ではレノボやHPからスマートなモデルが登場している。デルが初めてリリースしたLatitude XTも「かっこいい」タブレットPCだったのだ。オフィスで“程よい”堅牢ノート──デル「Latitude ATG D620」
時代が求めるのはどこでも頼れる「タフネス」なPCだ。でも、デルが投入するATGシリーズはこれまでの「マッチョ」とはちょっと違うようだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.