タイの地方都市でどっこい生きてる“Socket 370マザー”:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)
やあ!タイの地方都市にようこそ。これは僕が使っている「Wellcom」の携帯電話。安いけどタイ製だから信頼できるんだ。え、なに? そ、そんなことって……!
地下鉄で見る風景は本当のタイじゃない!
タイの首都はバンコク。そこに住む世帯の収入は、タイの平均から見るとかなり高い。“首都や大都市に住む人の所得が国の平均所得から突出して高い”国にありがちな所得格差も激しい。1回の乗車で「50円」以上かかる地下鉄や高架鉄道「スカイトレイン」(BTR)に乗ると、iPadやiPhone、そしてBlackBerryを使うビジネスマンや富裕層が多いが、どこまでいっても20円のバスは、エアコンがないので窓を開けたまま走り、日本では聞いたことのないタイのメーカーが販売する携帯電話の広告がバスシートを埋める。
以前掲載した「僧侶も気になる海賊版」でタイのIT事情について紹介しているが、そこで登場したバンコクで代表的な電脳街「パンティッププラザ」や代表的な携帯電話市場「マーブンクロン」、そして、バンコクの“へそ”ともいえる「サヤーム」の家電販売店のいずれもが、タイの中でも所得の高い世帯向けとなっている。ここで販売されている製品のラインアップが、そのままタイのIT事情を示しているとはいえないのだ。ならば、タイの地方都市におけるIT事情はどうなっているのだろうか。
そういうわけで、タイの地方都市を巡ってみた
タイに在住する日本人の誰もが口にするタイ人の印象に、「どれだけ電話で話せば気が済むのか理解できないほど、タイの人はおしゃべり好き」というのがある。それほどに、タイ人にとって携帯電話は重要な“道具”になっている。それだけでなく、携帯電話は持つ人のステータスを示すアクセサリーとしても認識されている。そのため、所得の高い人ほど、“分かりやすく高価な”携帯電話を持とうとする。
「金があればiPhoneかBlackBerry」というのがタイ人における一般的な価値観だ。それだけに誰もが買える価格ではない。となると、若い女性を中心に、ショートメールを入力するためだけにBlackBerry以外でハードウェアのQWERTYキーボード搭載の携帯電話を探すようになるが、たいていの場合、外見は似ているが、メーカーが“謎”のモデルを購入する。
こうした謎の携帯電話は、バンコクでこそ売り場の端に目立たないように置かれているが、バンコク以外の地方都市に行くと、近代的なショッピングセンターだろうと昔ながらの青空市場だろうと、規模の大小は問わず、どこの携帯電話ショップでも日本円にして3500~4000円という価格で堂々と、というより、販売店の主力モデルとして扱われている。
謎の携帯電話のブランド名は「iMobile」「Wellcom」「G-Net」「NEX」などなど、どっかで聞いたような聞かなかったような名前だ。タイの人々は、これら謎の携帯電話を“信用できるタイの製品”と認識している。タイにおいて中国製品は「品質が悪い」「安かろう悪かろう」と考えられているが、しかし、彼らがタイ製と思っている謎の携帯電話は、その多くが「中国深センの電子パーツ市場でばら売りされている部品をかき集めて組み立てたけど、中国の文字をうまく隠してタイの地場製品っぽく作ってみました」という雰囲気であふれている。
関連キーワード
格差 | アジア | BlackBerry | テレビ | 海賊版 | 富豪 | iPhone | アジアン・アイティー | 貧困
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.