“Z”に肉薄した新型「VAIO S」のフルフラットボディを丸裸にする:完全分解×開発秘話(1/5 ページ)
洗練されたフルフラットボディに、ハイエンドクラスのパーツをみっちりと詰め込んだ「VAIO S」。大幅に進化した13.3型の主力モバイルノートPCを分解し、内部構造に迫る。
フルフラットな新デザインに隠された秘密とは?
モバイルノートPCの豊富なラインアップを擁するVAIOブランドにおいて、現状でCPUに第2世代Core プロセッサー・ファミリー(開発コード名:Sandy Bridge)を採用した機種は「VAIO S」シリーズのみとなっている。
VAIO Sといえば、13.3型ワイド液晶ディスプレイと光学ドライブを搭載しつつ、可搬性にも配慮したスタンダードなモバイルノートPCという位置付けだったが、2011年春モデルでは大胆なアップグレードが断行された。
第2世代Coreとそれに対応したノートPC向け最新プラットフォーム(開発コード名:Huron River)の採用をはじめ、クアッドSSDやGPU切り替え機能といったハイスペックを詰め込み、バッテリー駆動時間は延長したうえで、ボディを約1.64~1.79キロ、23.9ミリ厚のフルフラットにまとめ上げるなど、よりパワフルなモバイルノートPCに生まれ変わっている。
今回はガラリと変わったVAIO Sの内部構造に迫るため、開発者自身の手で分解してもらいながら、各部のこだわりや開発時のエピソードを聞いた。
話を伺ったのは、開発責任者の宮入専氏(ソニー VAIO&Mobile事業本部 第1事業部)、機構設計担当の北野勝巳氏(同事業部)、拡張バッテリーとドッキングステーションを設計した橘健司氏(同事業部)、ソフトウェアプロジェクトリーダーの石山智之氏(同事業部)、そして商品企画担当の太田真人氏(同事業本部 企画戦略部門 企画1部)の5人だ。分解は北野勝巳氏にお願いした。
VAIOノート注目機種の分解記事(“VAIO 丸裸”シリーズ)
新シリーズだったかもしれないほどの大幅強化
分解作業を始めてもらう前に、まずは開発の経緯を聞いた。新型VAIO Sの開発は、最初の構想を2009年12月に始め、「VAIO Z」や「VAIO T」といった歴代のVAIOモバイルノートの開発担当を集めて、2010年3月から実際の設計に取りかかったという。ちなみに宮入氏は初代「VAIO type Z」の開発責任者でもある。
宮入氏は「幅広い層をカバーできる価格帯において、フルフラットな薄くて軽いボディと高いパフォーマンスを融合し、バッテリー、デザインまで含めた高次元でのバランスを実現することで、より競争力のある13型クラスのモバイルノートPCをしっかり作って育てていこう、という意図で開発をスタートした」と当時を振り返る。
とはいえ、シリーズ名をVAIO Sとして発売することが確定するまでには、社内でも討議が重ねられたという。太田氏は「製品コンセプトは早い段階から決まっていたが、新シリーズを作るか、既存のシリーズで展開するのか、しばらくは社内でもいろいろな意見が出た。しかし最終的には、長期に渡って多くの方に使っていただいている既存のシリーズを軸に、VAIO SをハイパフォーマンスのモバイルPCとしてより進化させ、1つの柱にまで引き上げていこう、ということで意見がまとまった」と説明する。
このエピソードだけを聞いても、VAIO Sが従来の枠組みにとらわれない大幅なアップグレードをしたことがうかがい知れる。
進化し続けるVAIOノートのデザインは健在
新型VAIO Sでまず目立つのは、これまでと大きく異なるフルフラットボディだ。前面から背面まで本体の厚さを23.9ミリと均一に仕上げており、液晶を閉じた状態でデスクに置いても、手に持って小脇に抱えても、バッグにしまっても余計な膨らみなどがなく、スマートで収まりがよい。
重さは約1.64~1.79キロ(構成によって異なる)と、13型クラスで最軽量ではないが、ハイスペックなCPUや外部GPU、光学ドライブ、長時間駆動のバッテリーをすべて備えていることを考慮すると、筋肉を落とさず、よく絞り込んでいるといった印象だ。
単にフルフラットなボディというだけでなく、天面と底面から側面は、マグネシウム合金のシャシーを上下から包むように合わせて、側面から見ると六角の形状になる「ヘキサシェル」構造を採用することで、軽さと頑丈さを両立している。
剛性については特に耐天面加圧~キロといった値が示されているわけではないが、「ソニーが従来取り組んできたモバイルノートPCと同様、平面加圧振動や落下、一点加圧などの厳しいテストセットはすべてクリアしており、実際に持っていただいても剛性感が伝わるはず」(宮入氏)とのこと。具体的な品質試験の内容はVAIOのWebサイトで公開されている。
液晶ディスプレイを開くと、まず目に飛び込んでくるのが、アルミニウムの1枚板で構成された継ぎ目のないパームレストとキーボードベゼルだ。プレスされたアルミ板は厚さ0.8ミリと肉厚で剛性があり、キーボードのしっかりしたタッチを支えてくれる。ちなみにキーボードはバックライト付きだ。
キーボード周囲を少しくぼませることで、キーボードを打ちやすくしているのもありがたい。このキーボード周囲の段差を生み出す直線的なデザインについては、「アルミの削り出しとは違う、プレス加工ならではのエッジ感をうまく表現できるように、加工方法などを変えた試作を繰り返し、丸みやシャープさのバランス、角度による見え方の違いを確認した」(北野氏)というこだわりぶりだ。
また、液晶を開いたときに正面からヒンジが隠れて見えない「コンシールドヒンジ」のデザインも見逃せない。一見、何ということはないシンプルなデザインに思うかもしれないが、長細いヒンジを背面に配置することで、画面とキーボードの間の障害物を排除して距離を縮め、画面とキーボードの間の視線移動がスムーズに行えるようにしている。
キーボードの配置が奥に移動したため、手前のスペースに余裕が生まれ、パームレストとタッチパッドの面積が広く確保でき、操作しやすくなったのもポイントだ。「こうしたデザインの変更に伴う全体的なバランスの最適化によって、新しい快適な体験が得られるので、そこをぜひ実感していただきたい」と宮入氏。
関連キーワード
VAIO | 金属ボディ | デザイン | モバイルPC | ノートPC | ソニー | ドッキングステーション | VAIO X | VAIO Z | Ultimate Mobile PC | Sony Tablet | VAIO G | VAIO T
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.