ナナオが放つ“3万9800円”のIPS液晶――「FORIS FS2332」を検証する:独自の超解像技術で差別化(3/3 ページ)
「FORIS FS2332」は、白色LEDバックライト付きのIPSパネルを採用した23型フルHD液晶ディスプレイ。独自の超解像技術を搭載しており、直販で3万9800円の低価格が魅力だ。
キャリブレータ-でその発色を確認する
FS2332は、ナナオのカラーマッチング/ハードウェアキャリブレーションツール「EIZO EasyPIX」にも対応しており、写真鑑賞やWeb閲覧などの用途に合わせて、発色を最適化できる。そこで、EasyPIXを使って、FS2332の色域や再現性を調べてみた。
EasyPIXは、測色器(キャリブレーター)とキャリブレーションソフトをセットにしたパッケージ製品だ。測色結果をもとに、ディスプレイ内部の発色パラメーターをハードウェア的に調整するため、精度の高いキャリブレーションが行える。当初は印刷用紙とのカラーマッチングがメインの製品だったが、最新版のソフトウェアでは色温度や輝度の目標値を数値で指定できるキャリブレーションが可能となり、使い勝手が大幅に向上した。また、EasyPIXに対応したEIZOブランドの液晶ディスプレイ(FlexScanシリーズ)も、かなり増えてきている。
さて、EasyPIXによるキャリブレーションだが、ここでは「キャリブレーション(上級者向け)」を選んだ。このモードでは、輝度、色温度、色再現域、ガンマを指定し、指定した値に画面の発色を近づけるようにキャリブレーションできる。用途別のプリセット設定も用意され、選択肢は「写真を見る/調整する」「Webを見る」「文書を作成する」「ムービーを見る/編集する」の4通りだ。今回はプリセット設定の「写真を見る/調整する」と「Webを見る」を使った。
「写真を見る/調整する」の目標値は、輝度が80.0カンデラ/平方メートル、色温度が5500Kだ。キャリブレーションの結果は、輝度が79.2カンデラ/平方メートル、色温度が5488Kと、ほぼ目標値と同じになった。もう1つの「Webを見る」は、目標値が輝度100.0カンデラ/平方メートル、色温度6500Kで、結果は輝度が100.3カンデラ/平方メートル、色温度が6500Kと、こちらも目標値とほぼ同じに調整できた。キャリブレーション結果は、液晶ディスプレイのICCプロファイルとしてOSに登録され、FS2332の発色が最適化されるというわけだ。
さらに一歩進めて、EasyPIXのキャリブレーション結果で作成されたICCプロファイルをMac OS Xの「ColorSyncユーティリティ」で読み込み、実際の色域を確認してみた。比較するのはsRGBの色域だ。FS2332の色域は、sRGBの色域をほぼ包含しつつ、緑の方向と、赤/紫/青の方向に広がっている。sRGB色域の再現性という点では高くないが、発色そのものは美しく、目視でも明るさとコントラスト、彩度のバランスが良好だ。
そもそもFS2332は特定の色域再現というよりも、エンターテインメント性とコストパフォーマンスを重視した製品だ。広色域と色再現性に注力した同社の「FlexScan SX」シリーズや「ColorEdge」シリーズとは、性格がまったく異なる。これらのシリーズは広色域の液晶パネルを採用し、内部でsRGBやAdobe RGBなどの色域をシミュレートする機能を搭載しているため、色再現性が高い(だからこそ、グラフィックスや写真、デザインといったクリエイティブワークで高い評価を得ている)。色域や再現性について、FS2332を同列に論じるのは筋違いだろう。
エックスライトのカラーマネジメントツール注目製品
今回の測定に用いたエックスライトの「i1Basic Pro」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイの高度なキャリブレーションが行えるパッケージだ。2011年6月にカラープロファイリングソフトが新世代の「i1Profiler」に進化し、i1Profilerシリーズとしてモデルチェンジした。
i1Basic Proはi1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。i1Basic Proをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じて機能を拡張することも可能だ。i1シリーズの製品情報はこちら。
日本国内ではこれらの製品を加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basic Proの販売価格は10万4790円だ。
個人用のハイコストパフォーマンスなエンタメ液晶としておすすめ
冒頭でも述べたが、FS2332は個人で使うエンターテインメント向けのフルHD液晶ディスプレイとして、高いレベルでまとまっている。特にインターネットで動画をよく見る人にとっては、Smart Resolutionが非常に有用だ。単純に解像感を高めるだけの超解像とは違い、動画(表示)の内容に応じて自然に高画質化してくれ、ざらつきといった超解像の弊害はほとんど感じない。
そのほか、広視野角パネルや多系統の映像入力、付属のリモコンのおかげで、日ごろの使い勝手が高いのも大きなポイントだ。これが一番重要という人もいるだろう。
現在、フルHD解像度に対応して2~3系統の映像入力を持った液晶ディスプレイは、安いものだと1万円台で買えてしまうが、予算を多少上乗せしてでもFS2332を選ぶ価値は大いにある。液晶ディスプレイとして基本的な性能がしっかりしているだけでなく、自動処理による適切な超解像技術をはじめ、付加機能が実に“使える”からだ。幅広いユーザーにとって「この価格でよい買物をした」と満足感が得られるだろう。
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