ワコムが世界にアピールする壮大な「WILL」構想:夢はでっかく世界標準
2015 CESに参加したワコムの展示ブースでは、新モデル「Cintiq 27QHD」「Cinqtiq Companion 2」に加えて、「WILL」コンセプトをメインテーマとして訴求していた。
「気が付いたら自然とみんなが使っていた」がWILLの目標
ワコムが提唱する「WILL」は、「ハードウェアの制限を気にすることなく、手書きで入力したデータを使えるようにしよう」という構想だ。手書き入力データのデファクトスタンダードの提案ともいえる、ある意味壮大な挑戦でもあるが、2015 International CESでも展示ブースにWILLをアピールするコンセプトコーナーを設けて、世界の関係者にアピールしていた。
コンセプトコーナーでは、複数のシチュエーションを想定したリビングや会議室、カフェをイメージしたセットを設けている。そこでは、ごく普通の紙に手書きしたテキストやイラストがデジタルデータに変換されて、ディスプレイに表示されて遠隔地にいるユーザーと手書き文字でチャットを行ったり、会議で手書きしたメモを大型ディスプレイで共有して、テキストやスケッチを追記していき参加者で共有する便利さを体験できる。
ハードウェアとしては、紙を置いたリビングのテーブルやメモをする机にデジタイザを埋め込んでおいて、専用のペンで認識した軌跡からデジタルデータを取得している。
コンセプトコーナーを案内してくれた米ワコムのスタッフは、「これはコンセプトを紹介するデモで、ハードウェアは実際の状況とはまったく異なる」と説明する。デモで示した「普通の紙に手書きした文字やイラストをデジタルデータで共有する」ことを実現するには、テーブルにデジタイザを埋め込むより、下敷きのような薄いデジタイザを紙の下に置くのがより汎用性が高そうだ。
しかし、ワコムのスタッフは、「WILLにとって重要なのはハードウェアではない」と力説する。WILLにとって重要なのは、いつでもどこでも手書き入力をデジタル化して多くのユーザーが共有できるデバイスではなく、いつでもどこでも手書き入力をデジタル化して多くのユーザーが共有できる仕組みを用意することが、ワコムがWILLで最も必要と語るところだ。
現在、手書きしたテキストやイラストをデジタルデータと利用するには、いかにして紙とペンの書き心地と使い勝手を再現するかというハードウェアデバイスの問題より、OSやアプリケーションごとに発生する「垣根」の制約がデジタルデバイスにおける手書き入力や手書きデータの普及を阻んでいるという。
ワコムはWILLによって、このようなOSとアプリケーションの垣根を超える手書きデータの共通フォーマットを提唱しようとしている。「手書きデータフォーマットの業界標準規格」を提案して、それを使ってもらえるように普及させそうという、壮大な構想ともいえる。
ただし、ワコムはWILLの標準規格化に向けて、規格標準化団体に策定というアプローチは考えていない。ユーザーやアプリケーションベンダーが自主的に選択していった結果、「気が付いたら自然とWILLが手書きデータの標準フォーマットになっていた」(ワコムスタッフ 談)という状況を目指している。
WILL SDKの提供など、WILL推進の努力はしているものの、それだけでは、アプリケーションベンダーによって“自然と標準フォーマット”の地位になるのは難しいだろう。2015 CESにおけるWILLのデモンストレーションも世界中の関係者に向けた訴求として絶好の機会かもしれない。しかし、やはり、プロフェッショナルタブレットとしてクリエーターに多くの支持を得ているワコムの実績が、WILLを標準規格に押し上げてくれると考える根拠の1つになっているのだろう。
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