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「iPad Pro」と「Surface Pro 4」が似ていると思ったら大間違い本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

日本でほぼ同時に発売されることとなった「iPad Pro」と「Surface Pro 4」。どちらも筆圧ペンとキーボード付きカバーを組み合わせて利用できる高機能なタブレットだが、実は全く違うタイプの製品であると覚えておきたい。

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Surface Pro 4とiPad Proは何が違うのか?

 言うまでもないことだが、Surface Pro 4はフル機能のWindows PCだ。省電力プロセッサであるCore Mを搭載したモデルもあるが、上位製品はノートPCに幅広く使われているCore i7を装備しており、Windows向けのあらゆるアプリケーションを利用できる。

 先日、iPad ProとSurface Pro 4(さらに「VAIO Z Canvas」も)について、著名な漫画家に違いを聞かれたのだが、結局のところ、彼女が「CLIP STUDIO PAINT」を用い、その他のPC向けに開発されたデザインツールも併用しながら仕事をしたいのであれば、モバイルOSであるiOSを搭載したiPad Proという線は、現時点で消える(彼女はMacユーザーで、ワコム製液晶ペンタブレットのファン)。

 それはOS X搭載で生産性が高いMacではなく、iOS搭載のタブレットだから「iPad Proがダメ」という話ではなく、PCで既に確立して洗練されたワークフローがあるなら、それを活用すべきということだ。

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 一方でSurface Pro 4はPCであり、目的を達成するためのシンプルさという面では、純粋な(モバイルOS採用の)タブレット+アプリにはかなわない面もある。今後、Windows 10への対応が進み、タブレットとデスクトップ画面でユーザーインタフェースの最適化が各アプリで進んでいけば、Surface Pro 4はPCでありながら、シンプルなタブレットでもある……と言えるようになるかもしれない。しかし、まだ道半ばだろう。


Surface Pro 4はWindows PCなので、既存のPCを利用したワークフローに導入しやすい一方、シンプルさでは純粋なタブレット+アプリにはかなわない面もある

 これはiPad Pro側から見ても同じことだ。現在のiPad Proは、Appleが開発した一部のiOS向けアプリと、Apple Pencilに対応したアプリを除けば、その特徴を生かすことはできていない。表示とユーザーインタフェースが一体化しているiPadの場合、画面サイズが大きくなり、また従来以上のパフォーマンスを備えることで、もっと高い生産性を求められるとき、iPad Proのために設計された専用アプリが必要になってくる。

 Microsoft OfficeやAdobe Systemsのグラフィックスツールを見ていると、あっという間に対応が進んでいく可能性もあるが、対応が一巡することが目的ではない。対応が一巡し、ユーザーからの反応があって、それではiPad ProとApple Pencilでどんな新しいことができるか? と想像力を巡らしたアプリが登場してきてからが、iPad Proの勝負と言えるのではないだろうか。

 また、iPad Proはあくまでも「タブレット側」からアプローチした取り組みであり、そこにPC的な要素は求められない。なぜなら、タブレットとPCでは、各種操作の細かな部分にまで、作法や振る舞いに違いがあるからだ。

 例えば、Smart Keyboardの配列は、アルファベットを除くとMacやWindows PCのルールとはかなり異なり、日本語入力時にはiOSの振る舞いも違う。キーボード上の「地球アイコン」を押すと言語の切り替えで、制御キーらしい制御キーもほとんどない。

 何しろiOSのホーム画面に戻るキーすら存在しないシンプルさなのだ(コマンド+SHIFT+Hというホーム画面のショートカットキーはある。またサードパーティー製キーボードにはこうしたキーを備えるものも出てくるだろう)。PCでの作業に慣れた人が、そのままあらゆる処理をiPad Proでこなそうと思っていると、使い勝手に戸惑うかもしれない。

Smart Keyboardの配列は、iPad Proの操作に最適化したもので、アルファベットを除くとMacやWindows PCのルールとはかなり異なる。キーボードショートカット一覧を画面に表示する機能を持つ

 2分割して他の情報を見ながら作業を行うといった使い方はもちろん、画面サイズと画素数が広がることで、iOSのユーザーインタフェースも変化しつつあるが、まだアプリまでには広がりきっていない。

 ここでもやはり、iPad Proの大きさと解像度、キーボードの存在を生かしたアプリが増えてくれば、見方は変わってくるだろう。

アプリの画面を2分割してマルチタスクで作業できる「Split View」機能。今後はiOS 9の機能とiPad Proのハードウェアを存分に生かしたアプリの充実が望まれるところだ

向かう場所は同じでも、アプローチの方向が異なる2製品

 というわけで、筆者の結論としては「タブレットにPC的な生産性を求めるなら、加えるべきポイントは似てくる」ので、似ているのは当然。しかし、出発点としているところが、それぞれWindows PCとiPad(つまりモバイルOSのタブレット)であることが決定的に異なる。

 両者ともまだ道半ばであるため、完全と言えるような万能性はない。つまり、現時点ではスタート地点(Windows PCとiPad)の違いから、自分に向いた製品を選択するのがよいと思う。直接のハードウェア比較にはあまり意味がないのだ。

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