「クラウド版Windows 10」はWindows RTの再来か、Chromebook対抗の秘密兵器か:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
2017年はWindows 10が大きな転機を迎えるかもしれない。キーワードとなる「Project NEON」と「Windows 10 Cloud」の最新動向を追う。
Windows 10 CloudはChromebook対抗OSになる?
日本は当てはまらないが、米国の年末商戦、いわゆるホリデーシーズン商戦では、GoogleのChrome OSを搭載したノート型デバイス「Chromebook」が急速に市場を拡大している。ChromebookはWindows OSのようなアプリケーションを動作させることはできないが、Webブラウザを通じて一般的な各種Webサービスを利用できる安価なデバイスとして人気だ。学生などを中心にプレゼントや貯金で買える手頃な選択肢として好まれている。
調査会社のGartnerやIDCが出した2016年第3四半期におけるPC市場動向の調査では、米国でのChromebookの出荷台数が初めてAppleのMacを抜いたことが話題となった。第3四半期が含まれる7~9月は米国で「Back to School」と呼ばれる商戦期で、新学期の始まる学生向けのセールが催されることが多い。Appleが以前はこのシーズンに向けてiPodの新製品を出したり、MacBookのキャンペーン販売を実施したりしていたのはこのためだ。
Appleの動向を振り返ると、2016年10月の新型「MacBook Pro」発表を控えてユーザーの買い控えが発生したり、「MacBook Air」の低価格モデルをラインアップから外したりと、2016年のBack to School商戦では自ら学生離れの要因を作っている印象があった。しかし、この間に起きたChromebookの躍進は象徴的な出来事として記憶に新しい。
こうした中、Chromebookを非常に意識した施策を連発しているのがMicrosoftだ。例えば同社は2017年1月24日、英ロンドンで開催されたBETTというイベントで「Microsoft Intune for Education」というサービスを発表している。これはデバイス管理ツールであるIntuneを使って学校内のPCを管理するもので、学校や教師向けのソリューションだ。
また同日には一番安価なもので189ドルから利用可能な教育向けPC製品のプロモーションも開始しており、主に教育市場で普及がみられるChromebookをターゲットに据えていることは想像に難くない。もともとこうした教育市場はAppleが得意とする分野と言われていたが、現在ではGoogleとMicrosoft、そして各社のパートナーらがこぞって製品やサービスを投入する市場となりつつある。
AppleとMicrosoftの関係にさらに言及すれば、MicrosoftはAppleが抱えていたオープンソース開発者の獲得にも注力しているようだ。オープンソースの世界で「優れたGUIでオープンソース開発も行えるマシン」として人気を博してきたMacだが、この市場に向けてMicrosoftはWindows 10向けに「Windows Subsystem for Linux(WSL)」を投入するなど、Windows上でLinuxそのものを動作させる仕組みをアピールすることで開発者を呼び寄せている。
2016年9月に開催された開発者会議のIgniteでは「Linux on Microsoft Azure」が度々アピールされるなど、現在最もオープンソースの世界にコミットしているのはMicrosoftと思えるほどだ。iOS向けのアプリ開発を除けば、遠からずMicrosoftはかつてAppleが強みとしていた開発者や学生層の多くを抱え込む可能性があると筆者は考える。
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